令和6年度の雇⽤関係助成⾦はどこが違う?廃止や変更点を紹介

事業主の方のための雇用関係助成金は、従業員が働き続けやすい環境維持やスキルアップなどを対象にしています。しかし助成金の種類が膨大であったり、条件も年々改定されたりと、把握しきれない部分も多いです。そこで今回は、令和6年度の変更点を中心に、雇⽤関係助成⾦を利用する上での注意点をご紹介します。

目次

雇⽤関係助成⾦には種類がある

雇⽤関係助成⾦と一口に言っても、大きく以下の8種類に分かれます。

  • 雇用維持関係
  • 在籍型出向支援関係
  • 再就職支援関係
  • 転職・再就職拡大支援関係
  • 雇入れ関係
  • 雇用環境の整備関係等
  • 仕事と家庭の両立支援関係等
  • 人材開発関係

ただし、助成金は8つというわけではありません。1種類の中にもさらに細かな分類があるため、申請時はまず、どれに該当するのかを考える必要があります。

次で該当する助成金をご紹介しましょう。

種類別の雇⽤関係助成⾦詳細(令和6年度版)

ここからは、種類別に該当する助成金を見ていきます。

ちなみに、厚生労働省の公式サイトには、雇用関係助成金検索ツールがあり、内容などから該当の助成金を検索可能です。もし、申請できる助成金が分からない場合は参考にしてみてください。

雇用維持関係と在籍型出向支援関係は1種類のみ

雇用関係助成金のうち、雇用維持関係と在籍型出向支援関係はそれぞれ1種類のみです。

雇用維持関係は雇用調整助成金が、在籍型出向支援関係には産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)が該当します。今後増える可能性はありますが、令和6年度時点ではほかに比べて判別しやすいです。

再就職支援関係と転職・再就職拡大支援関係は早期再就職支援等助成金

続いて、再就職支援関係と転職・再就職拡大支援関係の助成金は、いずれも早期再就職支援等助成金という名称がついています。早期再就職支援等助成金には複数のコースがあり、このコースによってどちらかに分類されるのです。

まず、再就職支援関係は再就職支援コースと雇入れ支援コースが該当します。
一方、転職・再就職拡大支援関係に含まれるのは、中途採用拡大コースとUIJターンコースです。

雇入れ関係

雇入れ関係以降は、含まれる助成金の数が大きく増加します。

まず雇入れ関係に該当する助成金は、次の3種類です。

  • 特定求職者雇用開発助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 地域雇用開発助成金

さらに、それぞれが複数のコースを含んでいます。
特定求職者雇用開発助成金の場合は、以下の5コースです。

  • 特定就職困難者コース
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
  • 就職氷河期世代安定雇用実現コース
  • 生活保護受給者等雇用開発コース
  • 成長分野等人材確保・育成コース

こちらでは、指定の条件に該当する雇用者がいれば対象になります。
同様に、トライアル雇用助成金は次の4コースです。

  • 一般トライアルコース
  • 障害者トライアルコース
  • 障害者短時間トライアルコース
  • 若年・女性建設労働者トライアルコース

人を条件としているのは上記と似ていますが、全ての名称にトライアルを含んでいます。
そして地域雇用開発助成金が、以下の3コースです。

  • 地域雇用開発コース
  • 沖縄若年者雇用促進コース
  • 産業連携人材確保等支援コース

こちらは人ではなく、特定の地域を条件としています。

雇用環境の整備関係等

雇用環境の整備関係等では、社内制度の見直しを中心とした助成金が多いです。

  • 障害者作業施設設置等助成金
  • 障害者福祉施設設置等助成金
  • 障害者介助等助成金
  • 職場適応援助者助成金
  • 重度障害者等通勤対策助成金
  • 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
  • 障害者雇用相談援助助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 通年雇用助成金
  • 65歳超雇用推進助成金
  • 高年齢労働者処遇改善促進助成金
  • キャリアアップ助成金

さらに、以下の助成金はさらに複数のコースに分かれています。

  • 人材確保等支援助成金(8コース)
  • 65歳超雇用推進助成金(3コース)
  • キャリアアップ助成金(6コース)

ゆえに種類の中でも、含まれる助成金の数は最多です。

仕事と家庭の両立支援関係等は両立支援等助成金

仕事と家庭の両立支援関係等に含まれるのは、全て両立支援等助成金のコースです。
次の7コースが該当します。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 育休中等業務代替支援コース
  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース
  • 事業所内保育施設コース
  • 不妊治療両立支援コース

いずれも育児や介護など、家庭生活の向上が目的です。

人材開発関係

最後の人材開発関係は、以下の3つです。

  • 人材開発支援助成金
  • 障害者能力開発助成金
  • 職場適応訓練費

このうち人材開発支援助成金のみ、次の6コースに分かれています。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース

多くは技術取得など、雇用者のスキルアップを目的とした助成金です。

令和6年度から申請できない雇⽤関係助成⾦

雇⽤関係助成⾦のうち、令和6年度から申請できないものは次の通りです。

  • 人材確保等支援助成金介護福祉機器助成コース
  • キャリアアップ助成金短時間労働者労働時間延長コース
  • 人材開発支援助成金障害者職業能力開発コース

これらの助成金は、令和6年3月31日に廃止が決定しました。
また以下は、令和5年度中に廃止が決定した助成金です。

  • 両立支援等助成金新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース
  • 産業雇用安定助成金雇用維持支援コース
  • 産業雇用安定助成金事業再構築支援コース

このように、年度末・年度初め以外のタイミングで変更されるケースは少なくありません。申請を決めたら、定期的に情報を見直しましょう。

雇⽤関係助成⾦を申請する際の注意点

ここでは、雇⽤関係助成⾦に関する注意事項をご紹介します。令和6年度前後で変わった点もあるので、申請前に今一度確認しておきましょう。

生産性要件は廃止

これまで雇⽤関係助成⾦に含まれていた生産性要件は、令和5年3月31日で廃止されました。

生産性要件は簡単に言うと、事業者の業績が良い場合に、助成金を増やすというものです。もともと、この要件自体も特定の助成金のみを対象としていましたが、廃止によって全ての助成金が対象外となります。

令和6年度の申請でも、生産性要件はありません。ただし、一部の助成金では、新たに賃金要件を設置予定です。賃金の引き上げを行った際に、助成金が割り増しされる場合があります。

登記事項証明書の提出は不要

雇⽤関係助成⾦では、申請時に登記事項証明書を提出する必要はありません。これは令和4年8月1日以降、登記情報連携システムを用いて確認できるためです。よって令和6年度は、登記事項証明書不要で申請できます。

ただし、例外として「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構で支給事務を行う助成金」が挙げられています。該当する場合は、今まで通り登記事項証明書も提出しましょう。

電子申請は助成金ごとに異なる

雇⽤関係助成⾦は、一部のみ電子申請に対応しています。令和6年6月時点では、以下の助成金が電子申請可能です。

  • 雇用調整助成金
  • 産業雇用安定助成金
  • 早期再就職支援等助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 地域雇用開発助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 通年雇用助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 両立支援等助成金
  • 人材開発支援助成金

ただ電子申請の対象は都度拡大しており、今後さらに増える可能性もあります。上記に含まれない助成金を申請する場合も、念のため公式サイトをチェックしてみてください。

申請時のミスを防ぐためにチェックリストを活用

雇⽤関係助成⾦の申請を、社会保険労務士などの専門家に任せている方もいるでしょう。

しかしそれでも、ミスは少なくありません。不受理で再申請となるならまだしも、内容によっては不正受給扱いされてしまいます。仮に提出手続きまで代理人に任せる場合でも、必ず申請前に確認させてもらいましょう。事業者本人も書類の保管が必要ですから、作成した書類もコピーを取っておきます。

加えて、代理人側でも必要なデータはメモや口頭を避け、原本かその写しで事実を確認することが大事です。また申請時は、チェックリストを参考にしてみてください。

チェックリストは申請に必要な内容をまとめて記載しており、厚生労働省の公式サイトなどから取得できます。

まとめ

雇⽤関係助成⾦はその数が多く、都度見直しがされています。令和6年度も、人材確保等支援助成金介護福祉機器助成コースなど、いくつかの助成金が申請できません。

また申請時の条件や、助成金の内容についても変更があります。こうした変更に気づかず申請してしまうと、修正だけでなく不正受給になる可能性も否定できません。

代理人に頼む場合でも事業者本人が確認する、チェックリストを使うなどして、ミスの内容務めましょう。

【まとめ記事】令和6年度の助成金・補助金について紹介します

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