子ども向けNISAに贈与税はかかる?実施の方向性と概要、親子間贈与の注意点など解説
2025年12月19日、与党自民党と日本維新の会は共同で令和8年度(2026年度)税制改正大綱を決定し、その改正項目の中に新NISA制度の拡充策として「子ども向けNISA(仮称)の創設」が新たに書き加えられました。
子ども向けNISA創設の背景には、深刻化する少子化や増大する教育費等の問題があり、政府与党としても、教育費の負担を軽減すべく、また「貯蓄から投資へ」という社会的な流れも受けて、家庭での早期資産形成を支援する仕組みとして、今回「子ども向けNISA」を創設する予定です。
本記事では、タイムリーな話題として「子ども向けNISA」を取り上げ、実施の方向性やその概要、さらに本制度を使って親子間贈与をした場合に注意しなければならない点など、詳しく解説します。
目次
NISAの基本と子ども向けNISAの概要・方向性
NISAは全国民を対象に2014年に開始された制度です。さらに2024年には、新NISAとして制度の拡充・刷新が図られました。
本章では、NISAの基本と今後創設が見込まれている子ども向けNISAの概要や方向性について解説します。
NISAとは?
NISAとは、「少額投資非課税制度」の略称で、2014年にスタートして現在まで多くの方に活用されています。
NISAでは、個人が株式や投資信託に投資した際に得られる運用益、具体的には利益や配当金が、通常取引なら約20%の税金がかかるところ、非課税扱いになり極めてお得です。
NISA口座は、自分が取引している銀行や証券会社等で開設でき、積立方法は銀行口座やクレジットカードと連携して口座引落しでNISA口座に入金できるため、毎月100円~1,000円から積立可能です。
日本全体では、NISAにおける毎月積立額は、およそ1~2万円がボリュームゾーンといわれています。また2024年には、「新NISA」として制度が拡充・刷新され、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できるようになりました。
以下が「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の主な違いです。
| 枠の特徴 | 利用をおすすめしたい人 | |
| つみたて投資枠(満18歳以上から口座開設できる) | ・少額から開始できる・初心者でも始めやすい | ・NISAを少額から始めたい人 ・貯金以外の方法でも資産形成したい人 |
| 成長投資枠(満18歳以上から口座開設できる) | ・投資の自由度が高い・特定企業の株も買える | ・各種投資に慣れている人 ・優待や配当金を狙いたい人 |
また非課税枠や投資する金融商品で見た違いは以下のようになります。
| 上限/年 | 投資商品 | |
| つみたて投資枠 | ・120万円/年 ・非課税保有限度額は1,800万円 | 金融庁が認定した「長期・積立・分散投資」に適した一定の投資信託のみ |
| 成長投資枠 | ・240万円/年 ・非課税保有限度額は成長投資枠単独なら1,200万円まで(つみたて投資枠込みで1,800万円まで) | 株式投資信託、上場株式、ETF、REIT等から選ぶ |
制度刷新後は、非課税保有期間も無期限となり、年間投資枠の上限も拡充されています。これらの変更により、これまで以上により広範囲の層の多彩な投資ニーズに対応できるようになっています。
子ども向けNISAの概要や実施の方向性
上記で確認して頂いたように、2024年から導入された新NISAでは満18歳以上の方なら誰でも口座開設して利用できるようになっています。
一方で満18歳未満の方については、新NISAは利用できず口座開設ができません。
かつて未成年者に対しては、2016年にジュニアNISAという制度が導入され、積立額で年間80万円までの投資が非課税にされる制度がありましたが、18歳まで引出しができない、非課税期間が最長5年等の制限があって人気が低迷し利用が広がらなかったため、制度としての新規受付が2023年末を持って終了しました。(契約済みジュニアNISAの運用は現在も継続中)
そのため現状は、いくら家族全体で投資を始めたいと考えていても、満18歳未満の人(いわゆる未成年の子ども)は非課税制度の枠外となっています。
以上のような背景を受けて、金融庁はこども家庭庁とともに、2025年8月「NISA対象商品の拡充を含む制度の充実」を打ち出しました。
参照先:NISA対象商品の拡充を含む制度の充実 | 令和8(2026)年度税制改正要望について | 金融庁
具体的には、満18歳未満の未成年者を対象に、子ども向けNISAの検討及び設置が図られる予定です。
子ども向けNISAの骨子
子ども向けNISAは、以前にあったジュニアNISA同様、18歳未満でも非課税で資産運用できる制度であるため、現行の新NISAで活用されている「つみたて投資枠」を未成年にも開放する方向で議論が進められています。
以下が現段階で検討されている子ども向けNISAの骨子内容です。
- 開始時期…2026年(令和8年度)の税制改正で実現し、2027年からの開始の可能性
- 対象年齢…0~17歳
- 年間投資上限額…60万円(ジュニアNISA の80万円より減額、親権者による資産格差の固定回避を考慮)
- 保有可能限度額…600万円(ジュニアNISAの上限400万円より増額)
- 非課税期間…無期限(ジュニアNISAの5年を撤廃)
- 投資対象商品…つみたて投資枠に、「地域別株価指数連動型ファンド」や「債権型ファンド」を追加
- 引出制限…子の年齢が満12歳以降、かつ子の同意を得たときのみ親権者等が引出可能(ジュニアNISAの満18歳まで引出不可の制限を緩和)
- 口座管理者…親・祖父母等の親権者
上記の各内容については、現時点で自民党が決定した税制改正大綱であり、最終決定事項は今後発表される正式な内容を追加で確認する必要があります。
参照先:NISAの拡充 | 令和8年度税制改正大綱 | 自民党(p12~13)
子ども向けNISAを活用するメリット・デメリット

上記の流れのように、すでに導入及び実施の方向が見えてきた子ども向けNISAですが、本章では子ども向けNISAを活用する際のメリット・デメリットを解説します。
メリット1:引出制限が緩和され、柔軟な資金活用ができる
ジュニアNISAの最大の欠点だった「18歳まで引出できない」という制限が緩和され、「引出には子どもの同意が必要」という条件付きながら「12歳以降は引出可能」となったため、子どもが成長して教育資金が必要になったタイミングで資金が自由に使えるようになりました。
以前の制度では、中途引出時には過去の利益にさかのぼって課税されていたので、これは利用者にとって大きな改善であるといえます。
メリット2:リスク商品の運用で、預貯金で運用するより最終的に資産が増える可能性がある
将来的に子どもや孫の教育資金等で活用予定の資金を現金・預貯金で保有しておくより、今回制度化される子ども向けNISAで運用すれば、株式や投資信託等の譲渡益・配当金が得られ、さらに資産が増加する可能性があります。
今回の制度では、従来の限定された金融商品に加え、運用商品もさらに追加される見込みなので、結果として保有資産の額面以上の資産になる可能性がある点は、子ども向けNISAを利用するメリットといえます。
メリット3:運用益・配当金は非課税扱い、無期限の運用で複利効果を最大化できる
子ども向けNISAによる運用で発生した運用益・配当金等は全て非課税扱いになります。通常の課税口座での運用なら、利益が発生しても必ず20.315%が税金として課されるので、これは運用者にとって大きなメリットです。
さらに子ども向けNISAは非課税の運用期間が無期限であるため、仮に0歳から始めて18年間非課税で運用すれば、長期にわたる利子の複利効果も相まって、最終的には元本を大きく上回る資産が形成できる可能性があります。
子ども向けNISAは、税金がかからず運用益を全て手元に残せるので、子どもが成長して将来多額にかかる教育資金等への備えにも役立ちます。
メリット4:親権者の新NISAと併用して家族全体の非課税扱い投資枠を拡大できる
親の新NISAの非課税投資枠(最大年間360万円)と子ども向けNISAの非課税投資枠(最大年間60万円)を併用すれば、家族全体で年間420万円の非課税投資枠が利用可能になります。
たとえば、子どもがいる世帯では、児童手当が毎月1~3万円支給されているので、それを子ども向けNISAの毎月積立投資に回せば非課税で運用できるので、将来の教育資金等への備えになります。
さらに同居家族に祖父祖母までいれば、より家族全体の投資枠の拡大は可能です。家族全体の非課税扱い投資枠の拡大は、将来必要な教育資金や老後資金等を一緒に準備できるという点で大きなメリットです。
メリット5:祖父母からの贈与を非課税で運用できる
子ども向けNISAの非課税投資枠(最大年間60万円)の活用方法のひとつとして、祖父母等からの贈与の一部をそれで利用するという方法があります。
具体的には、祖父母から年間110万円の暦年贈与を受け、そのうち60万円については子ども向けNISAで運用すれば、贈与税も運用益も非課税扱いになります。
3世代にわたる長期的な資産形成戦略が築け、世帯にとってこれは大きなメリットです。
ただし子ども向けNISAの非課税はあくまで運用益に対しての話であり、親権者等が子ども名義の口座に自分のお金を入れる行為は贈与として扱われます。
子ども向けNISAの利用者は、この双方の違いをしっかり理解しておく必要があります。
メリット6:子ども向けNISAを活用して生前贈与しておくことで将来の相続財産が減らせる
子ども向けNISAの非課税枠を活用して、親権者等が運用している資産を子どもや孫に贈与しておけば、将来の相続財産が減らせるというメリットがあります。
相続税は累進課税制度を採っているため、相続財産が多ければ多いほど税率が上がる特徴があります。仮に家族内に未成年の子どもや孫が複数いれば、60万円×未成年者人数分の贈与が非課税扱いで可能なので、年間で数百万円の遺産を減らす効果が得られます。
デメリット1:元本割れのリスクがある
子ども向けNISAにはメリットも多々あるものの、デメリットもあります。
デメリットのひとつが運用資産に元本割れのリスクがある点です。購入する金融商品が株式や投資信託なので、市況の変化や株価、債券相場等の変動で、場合によっては元本割れのリスクがあります。
運用資産が元本より増える可能性がある一方で、目減りする可能性もあることを踏まえて開始する必要があります。
ただしできるだけ長期運用することで、短期的な変動リスクは軽減できるので、可能な限り、長期的な資産運用をめざしましょう。
デメリット2:開始年齢によっては積立期間の長さがリスクになる
今回制度化予定の子ども向けNISAでは、ジュニアNISAの最大のデメリットだった「満18歳までは引出不可」という制限が緩和され「12歳以降引出可能」となりました。
しかし依然として引出には年齢制限が課されているので、子ども向けNISAの開始年齢によってはその積立期間の長さがリスクになる場合もあります。
たとえば0~2歳くらいでスタートして順調に資金運用してきても、子どもが12歳に達する前に緊急で引出が必要になれば、非課税扱いが取り消され課税扱いで解約しなければなりません。
かつ必要性から短期に引き出してしまうと元本割れも起こしやすいので、子ども向けNISAを始めるときには、慎重な商品選定と目的に応じた運用設計が必要です。
親子間贈与に係り子ども向けNISAを利用するときの注意点

上記メリットの章でも解説したように、子どもや孫の将来的な必要資金に備えて非課税枠で資金を運用できる子ども向けNISAはとても便利ですが、この制度は生前贈与としても活用できます。
しかし親子間贈与については、非課税枠の活用とは本来別問題であり、子ども向けNISAを利用して生前の親子間贈与を行うときには、その注意点を詳しく知っておく必要があります。
以下、3つの観点からその注意点を解説します。
贈与の金額に関わらず必ず贈与契約書を作成しておく
子ども向けNISAを使って子どもや孫に贈与するときには、仮に贈与税がかからない金額だとしても、贈与契約書を作成しておきましょう。
贈与契約書を作成していないと、贈与者がなくなったときに税務署により贈与の事実を否認される恐れがあるからです。贈与が否認されると贈与財産自体も相続税の対象となってしまうことから、高額の税金が課されてしまうリスクがあります。
加えて贈与契約書を作成しておくことで、相続人、受贈者間のトラブルも防げるのでメリットは多いです。
また贈与契約書と合わせて、都度の振込記録(親から子への明確な資金移動等)や通帳の写しなども贈与の証拠として残しておくことをおすすめします。
年間110万円を越える贈与になると受贈者に贈与税がかかるので注意
その年の贈与額が子ども向けNISAの非課税枠60万円以内なら贈与税は課されません。しかし子ども向けNISA分と他の贈与の合計額が年間で110万円を超えると贈与税がかかります。
子ども向けNISAの利用者は、「子ども向けNISAの運用資産は贈与財産に含まれる」という理解が大切です。
たとえば子どもが、その年に父親から子ども向けNISAの非課税枠60万円で贈与され、さらに同じ年に母親から100万円の一般贈与を受けても、合計で160万円の贈与となって基礎控除額110万円を上回ることになり、その場合は基礎控除額を超えた金額に贈与税がかかることになるので注意して下さい。
贈与のタイミングによっては生前贈与加算の対象となるので注意
両親や祖父母の資金を使って子ども向けNISAを運用中、その親権者が急に死亡した場合、タイミングによっては生前贈与した財産が、相続税の課税対象になる恐れもあるので注意して下さい。
過去の生前贈与分を相続税の計算対象に加えることを「生前贈与加算」と呼びますが、以下の条件を満たしてしまうと、生前贈与加算の対象になります。
- 相続人または受遺者が生前贈与を受けた
- 生前贈与が行われた時期が相続発生前の3~7年以内
祖父母と孫のケースなら、通常は相続人とはなりませんが、遺言で財産を遺贈されていたときなどには、当然、生前贈与加算の対象になります。
現状、生前贈与加算の対象となる贈与の時期は以下の通りです。
| 生前贈与が行われた時期 | 生前贈与加算の対象期間 |
| 2023年12月31日まで | 相続発生から3年以内 |
| 2024年1月1日~2026年12月31日 | 相続発生から3年以内 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日~相続開始日 |
| 2031年1月1日~ | 相続開始日7年間 |
参照先:暦年課税による生前贈与の加算対象期間等の見直し | 国税庁
今後も毎年の税制改正で、この生前贈与加算の対象期間の延長が進み、贈与税と相続税の一体化が進む可能性があります。
子ども向けNISAの利用者は、この点にも注意を払い、常に最適な方法を選択していく必要があります。
まとめ
子ども向けNISAの創設に係り、その実施の方向性や制度の概要、メリット及びデメリット、制度が親子間贈与に利用された際の注意点など、詳しく解説しました。
子ども向けNISAは、親権者の資金を長期的に非課税で運用できる、0歳から始められて長期的に資産形成ができ増大する教育資金等にも充当できる、親子間の贈与にも活用できる、子どもの金融リテラシーの向上にも活用できるなど、メリットが多々あります。
ただし子ども向けNISAについては、現状、最終決定されていないので、今後の制度の詳細を詰める段階で設計変更される可能性も残されています。
これから子ども向けNISAを利用しようと検討中の方々、業務を通じて税の取り扱いに関りを持たれている方々も、今後の追加情報にも関心を払い、ぜひ定期的にチェックしておいて下さい。
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