【令和7年度】外国子会社合算税制等はどう変わる?タックスヘイブン問題と併せて解説

2024年12月27日に「令和7年度税制改正大綱」が閣議決定され、その中に外国子会社合算税制(外国子会社合算税制)を含む国際課税の枠組みが見直されることが盛り込まれました。本記事では、令和7年度税制改正で外国子会社合算税制はどう変わるのか、また、並べて議論に挙がることが多いグローバル・ミニマム課税についてもわかりやすく解説していきます。
最新の情報については、公式情報や最新のガイドラインを確認するようにしてください。(参考リンク:令和7年度税制改正の大綱)
目次
外国子会社合算税制とは?

外国子会社合算税制(Controlled Foreign Company:CFC税制)とは、日本企業が海外に設立した子会社の所得を、日本本社の所得として合算し、日本で課税する制度です。これは、税負担の低い国(いわゆるタックスヘイブン)に利益を移転させ、法人税の支払いを回避する行為を防ぐ目的で導入されました。
通常、企業の海外子会社は現地で法人税を支払いますが、日本の外国子会社合算税制では、一定の要件を満たす場合、本社がその子会社の所得を合算し、日本の法人税の対象となります。以下に詳しく解説していきます。
タックスヘイブン問題について
そもそもタックスヘイブンはなぜ問題となっているのでしょうか。
タックスヘイブンとは、税金がかからなかったり、著しく軽減されていたりする国や地域のことを指し、世界の各地に存在しています。企業側は、タックスヘイブンに会社を設立して資産を移転すると、本来なら税金の高い国で納めなければならない各種税金が免除され、税負担を軽減することができます。また、タックスヘイブン側は、税率を安くすることで海外から企業を誘致して経済を発展させることができます。タックスヘイブンは農業や製造業を発展させるのが難しい国や地域であることが多く、誘致されるのはIT関連業や金融業の企業が中心です。
しかし、近年タックスヘイブンの利用が急増し、それにより自国での税収が減収してしまうだけではなく、マネーロンダリングに悪用されたり、所得隠しに使われたりなど犯罪の温床にもなっており、大きな問題となっているのです。
外国子会社合算税制について
上記のようなタックスヘイブンによる租税回避を阻止するため、対策税制として施行されたのが外国子会社合算税制です。この税制が適用されると、タックスヘイブンにある子会社の所得は日本にある親会社や株主の所得に合算され、日本で法人税や所得税の納税義務が発生します。
タックスヘイブン対策税制の対象となるのは、日本の居住者および内国法人が直接または間接にその株式の50%超を保有している外国法人、または日本の居住者または内国法人との間に実質支配関係がある外国法人である「外国関係会社」です。
この外国関係会社のうち租税負担割合が20%以上27%以内の会社で、さらにその中で「特定外国関係会社」と判定された会社に対して外国子会社合算税制が適用されます。
租税負担割合が20%未満の会社に関してはさらに厳しい判定基準が用いられ、その基準を1つでも満たせなければ外国子会社合算税制が適用さるという仕組みです。
令和7年度税制改正で外国子会社合算税制はどう変わる?
令和7年度税制改正では、外国関係会社の各事業年度に係る課税対象金額等を益金の額に算入する時期や、申告書に添付または保存する外国関係会社に関係する書類の範囲について見直しが行われました。これにより、外国子会社合算税制への対応について時間的な余裕が生まれ、事務手続きの負荷が軽減されます。
具体的な改正内容
改正前 | 令和7年度税制改正後 | |
①合算時期 | 「外国関係会社」の事業年度終了日翌日から2ヶ月を経過する日を含む親会社の事業年度に合算する | 「外国関係会社」の事業年度終了日翌日から4ヶ月を経過する日を含む親会社の事業年度に合算する |
②添付・保存書類 | 「租税負担割合20%未満等の一定の外国関係会社」に対する必要添付・保存書類 ①貸借対照表・損益計算書 ②株主資本等変動計算書及び損益金処分計算書③貸借対照表・損益計算書の勘定科目内訳明細書 ④本店所在地国の法人所得税の申告書 ⑤その他の書類(株主名簿等) 以上の5つ | 「租税負担割合20%未満等の一定の外国関係会社」に対する必要添付・保存書類 ①貸借対照表・損益計算書 ②本店所在地国の法人所得税の申告書 ③その他の書類(株主名簿等) 以上の3つ |
合算時期が2ヶ月から4ヶ月になることで時間的な余裕が生まれます。
また租税負担割が20%未満の外国関係会社が提出する書類が簡素化されました。
グローバル・ミニマム課税とは?
外国子会社合算税制と似た性質を持つ税制としてグローバル・ミニマム課税がよく挙げられます。
グローバル・ミニマム課税とは、2021年10月に経済協力開発機構を中心とした約140ヵ国・地域が合意し定められた課税ルールのことです。財務省はこのルールを「年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業を対象に、一定の適用除外を除く所得について各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組み」であると定義付けています。
このルールが定められた背景として、外国子会社合算税制と同じくタックスヘイブンに係る問題があります。タックスヘイブン問題により不安定となってしまった各国の法人税の税収を安定化するため、世界的な合意がなされたというわけです。
令和7年度税制改正でグローバル・ミニマム課税はどう変わる?

日本はこの国際的合意に則るため「所得合算ルール」を定めていたましたが、令和7年度税制改正ではさらに新たに2つのルールが定められました。以下に「所得合算ルール」を含めた3つのルールについて解説します。
所得合算ルール(IIR)
所得合算ルールは、子会社等の税負担がグローバル・ミニマム課税の最低税率である15%を下回る場合、親会社等の同一グループの所在地で15%に満たすように税負担を課すというものです。
軽課税所得ルール(UTPR)
軽課税所得ルールは、親会社等の税負担が最低税率の15%に至らない場合、子会社等の所在地で15%に至るまで課税を行うというものです。親会社や関連企業が軽課税国にあり、15%未満の軽課税だった場合などに適用されます。この場合、親会社等に対して最低税率である15%に至るまで課税を行います。
国内ミニマム課税(QDMTT)
国内ミニマム課税とは、日本国内の企業等の税負担が15%に至らない場合、最低税率である15%に至るまで課税を行う制度のことです。軽課税国に子会社がある場合、その国では課税を行わず、日本税務当局が同一グループ関連企業に対して、最低税率である15%に至るまで課税を行います。
国内ミニマム課税が適用された場合は、「所得合算ルール」や「軽課税所得ルール」は適用されません。
これらの2つのルールが追加されたことにより、企業の税務負担が増加することが見込まれます。先述の外国子会社合算税制の手続きが簡便化したのは、このグローバル・ミニマム課税への対応を考慮してのことだといわれています。
外国子会社合算税制とグローバル・ミニマム課税の違いと関係性
外国子会社合算税制とグローバル・ミニマム課税は相互に影響を及ぼしており、いずれも法人税収の安定化を図るための税制として定められました。
外国子会社合算税制は「特定の低税率国の子会社に対する課税強化」、グローバル・ミニマム課税は「国際的な最低税率の適用」という違いがありますが、いずれも税逃れを防ぐ目的で導入されています。
外国子会社合算税制 | グローバル・ミニマム課税 | |
目的 | タックスヘイブン対策 | 税率の国際統一と課税逃れ防止 |
適用対象 | 特定の要件を満たす海外子会社 | 売上7.5億ユーロ以上の企業 |
税率基準 | 27%未満 | 15%未満 |
影響がある企業 | 一部の海外子会社 | 大企業全体 |
いがありますが、いずれも税逃れを防ぐ目的で導入されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事では、令和7年度税制改正における外国子会社合算税制の変更点や、グローバル・ミニマム課税について詳しく解説してきました。
要約すると、
- タックスヘイブン問題などで、法人税収の不安定化が日本でも世界でも問題となり、その対策として外国子会社合算税制やグローバル・ミニマム課税といった税制やルールが導入された
- 令和7年度税制改正では、外国子会社合算税制とグローバル・ミニマム課税のいずれにも改正があった
- その結果、グローバル・ミニマム課税はルールが厳密になり税務負担が増加する一方、外国子会社合算税制はルールが簡素化され税務負担が軽減されることとなった
令和7年度税制改正における外国子会社合算税制やグローバル・ミニマム課税を取り巻く税制はこのような流れとなっています。
日本企業は欧米よりもタックスヘイブンの利用による租税回避を行う企業が少ないといわれています。しかし、租税回避をしようとしていないのにも関わらず、海外にある子会社がこれらの税制に適用されることに気づかず、後から追加徴税が発生してしまうケースもあります。
そのため、企業は新制度への対応策を検討し、適用要件の確認や税務管理体制の強化を進める必要があるのです。改正の影響を正しく理解し、適切な対策を講じる必要があるでしょう。
本記事が少しでも参考になれば幸いです。

税理士.ch 編集部
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