税理士の業務効率化にクラウドソーシングを|メリットや注意点を解説
最近のDXによって、税理士にも、従来の業務領域を超えた新たなサービスの提供が求められるようになっています。
それらを提供するためには従来業務の効率化が必要であり、クラウドソーシングの活用によって業務効率化を実現できると考えられています。この記事では、クラウドソーシングで実現できる税理士の業務効率化について、メリットや注意点などを交えて解説します。
目次
- 税理士が業務効率化を求められている背景
- 税理士におすすめしたいクラウドソーシング
- 税理士がクラウドソーシングで実現できること
- 税理士がクラウドソーシングで依頼できる業務
- 税理士がクラウドソーシングを利用する際の注意点
- まとめ
税理士が業務効率化を求められている背景
税理士に業務効率化が求められているのには、以下のような背景があります。
ライバルの増加
税理士に業務効率化が求められている理由の一つとして、ライバルの増加が挙げられます。
最近では、完全にオンラインで完結するサービスを提供する税理士事務所も登場し、近場で税理士を探す必要がなくなってきています。
さらに、Web上で積極的に情報発信する税理士も増え、顧客が税理士を選ぶ基準も変化しました。そのため、業務効率化で時間をつくり、他のライバルに負けない新たな施策を行う必要があるのです。
付加価値の必要性
また、付加価値のあるサービスを提供する必要性も、業務効率化が求められている理由です。最近では、税務処理だけではなく、情報提供やコンサルティングなどのサービスを提供する税理士が増えています。
顧問先が求めるサービスの付加価値が、時代とともに変化しています。業務効率化でつくった時間を使い、顧問先に付加価値を感じてもらえるサービスを、検討・提供する必要があるのです。
税理士におすすめしたいクラウドソーシング
税理士が業務効率化を実現させるためには、クラウドソーシングの活用がおすすめです。
クラウドソーシングとは
クラウドソーシングとは、依頼者側(クライアント)がインターネット上のクラウドソーシングのサービス提供会社(サービス提供会社)経由で、不特定多数の人材(ワーカー)に業務を発注する業務形態です。
専門知識やスキルを持ったプロフェッショナルなワーカーに、必要なときに必要な分だけ、業務を発注することができます。
この仕組みは日本でも定着しつつあり、以下のような企業がクラウドソーシングのサービスを提供しています。
- クラウドワークス
- ITプロパートナーズ
- ランサーズ
- ココナラ
アウトソーシングとの違い
クラウドソーシングは業務委託なので、アウトソーシングの一種であるといえます。しかし、アウトソーシングとの大きな違いは、契約形態にあります。
一般的なアウトソーシングでは、クライアントとワーカーが直接契約を結びます。一方、クラウドソーシングでは、サービス提供会社を通じて、クライアントとワーカーが契約や報酬のやり取りを行うため、クライアントとワーカーで業務委託契約書を交わしたり、支払い口座を開設したりする手間が省けます。
さらに、万一のトラブルの際には、サービス提供会社が間に入って仲裁してくれるので安心です。
税理士がクラウドソーシングで実現できること
クラウドソーシングを使用して業務効率化を実現することによって、税理士は以下のようなことを実現できます。
コア業務への集中
クラウドソーシングでは、仕訳や記帳などのデータ入力など、税理士の補助を行ってくれるワーカーを利用することができます。さらに、付加価値として提供する資料の作成や、営業のために運営するSNSの代行も委託できます。
そのため、税理士本人は、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」など、税理士のコア業務に集中することが可能になります。
既存人材の確保
クラウドソーシングでは、あらゆる分野のプロフェッショナルを気軽に見つけることができます。
事務所のスタッフでは難しいような、デザイン性の高い提案資料の作成やSNSの運用も委託が可能です。これによって、事務所のスタッフも慣れない業務に時間を費やすことがなく、従業員の労働・残業時間が減り、ワークライフバランスを取りやすくなるという利点があります。
人件費の削減
必要な時期に必要な量の人材を確保するためにクラウドソーシングを活用することもできます。
税理士事務所の繁忙期は、一般的に12月~3月と5月ですが、繁忙期だけに人員を増やすことができないのという理由で、平常時でも人員を確保しておく事務所も多いものです。
しかし、クラウドソーシングでは、データ入力や計算、チェックを行える人材を、繫忙期だけ確保できます。そのため、閑散期に人員を確保しておく必要がなくなり、業務量の偏りによる無駄な人件費削減が可能になるのです。
ビジネスパートナーの発掘
クラウドソーシングでは、弁護士や社会保険労務士などの士業の人も、ワーカーとして仕事を請け負っています。仕業には連携が必要な場合がありますが、年間の契約を行っていると、何もない月でも顧問料が発生してしまいます。
しかし、クラウドソーシングならば、必要な場合だけ士業の先生に仕事を依頼できます。継続が前提となっていないので、お試し感覚で気軽に利用でき、ビジネスパートナーの発掘にもつながっていきます。
売上をアップできる
クラウドソーシングでは、マーケティングのコンサルタントに仕事を依頼することも可能です。
今の時代、選ばれる税理士になるためには、電子書籍の出版やユーチューバーとしてのデビュー等、税理士の知識やノウハウを生かした新たな取り組みを行うことも選択肢に入ってきます。
知名度が上がれば依頼も増え、顧問先が増えることによって売り上げがアップしたり、本業以外で収入を得られる場を得ることも可能になります。
税理士がクラウドソーシングで依頼できる業務
税理士がクラウドソーシングを使って業務効率化したいと思ったとき、具体的には以下のような業務を依頼できます。
事務作業
データ入力やデータ作成、データチェックなどの事務作業がこれに該当します。
元税理士事務所スタッフや現在就労していない税理士のワーカーも存在しています。そのため、一般的な経理処理から帳票作り、決算業務までを依頼することができます。
カスタマーサポート
オンラインや電話などでの、カスタマーサポートを依頼することもできます。税理士事務所での就労経験や、経理・会計に関する知識があるワーカーを選ぶと、安心して対応を任せることができるでしょう。
営業代行
税理士であっても、ただ待っているだけでは新規顧客が増えない時代です。クラウドソーシングでは、テレアポやメール営業などの営業代行を依頼できます。SNSに精通しているワーカーもいるので、新しいスタイルの営業にもチャレンジすることもできるでしょう。
情報発信
XやInstagram、YouTubeなどを使った情報発信代行を依頼できます。現在でも税理士ユーチューバーなどはいますが、情報発信をしてもらうことで、多くの顧客予備軍にアプローチすることが可能になります。
システム開発と運用
クラウドソーシングでは、オリジナルのシステム開発や運用を依頼できます。「金額を入力する際の間違いを指摘する」「入力した金額を自動で計算する」など、欲しい機能がついたシステムを低価格でオーダーメイドできることも魅力です。
税理士がクラウドソーシングを利用する際の注意点
税理士が業務効率化を進めるためにメリットがたくさんあるクラウドソーシングですが、デメリットもあるので注意が必要です。
情報流出の可能性がある
ワーカーに渡した顧客の会計データ等が、流出する可能性があります。
しかし、多くのサービス提供会社では、NDA(秘密保持契約書)の締結が可能なワーカーを確保しているため、情報流出を絶対に避けたい場合は、NDAを締結しているワーカーを選択しましょう。
最適なサービスが見つからない場合がある
税制や申告書に精通しているワーカーを、探すことが困難な場合があります。
それぞれのサービス提供会社には、登録しているワーカーの職種に特徴があるため、税理士が必要とするスキルを持ったワーカーが、多く登録しているサービス提供会社を探してみましょう。
コミュニケーションがオンライン上のみ
クライアントとワーカーが、オンライン上のみでやりとりをするため、意図が正しく伝わらないリスクがあります。最初の打ち合わせはビデオ通話で、その後のやり取りはメールやチャットで、といったようにツールを使い分けるなどの工夫をするようにしましょう。
ノウハウの蓄積ができない
自社内でその業務を行うことが少なくなるため、自社にノウハウが蓄積できないというデメリットがあります。
税務の世界は複雑で、毎年のように税制改正が行われ、新しい判例が出たりもします。ノウハウを蓄積したい場合、蓄積が必要な業務は社内で行い、その他はクラウドソーシングを利用するなどの使い分けをすることがおすすめです。
まとめ
時代の変化によって、税理士にも「攻めの体勢」が求められる一方、業務量の繁閑差が激しい仕事だからこそ、税理士やスタッフのワークライフバランスも大切です。クラウドソーシングを上手に活用して業務効率化を進めていきましょう。
税理士.ch 編集部
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