ガソリン税とは?暫定税率の廃止が与える影響についても解説

2024年12月11日、自民・公明・国民民主の3党が、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止に合意しました。暫定税率とは、本来のガソリン税に加え1リットルあたり25.1円追加で徴収されている税で、これを廃止することにより、上昇を続けるガソリン価格を抑え、国民生活を守るという狙いがあります。

そもそも、ガソリン税とはどのような税金なのでしょうか?本記事では、ガソリン税そのものについて、また暫定税率の導入や廃止された経緯についてわかりやすく解説していきます。

目次

ガソリン税とは

ガソリン税とは、ガソリンに対して課される税金のことで、ガソリンを購入する際に1リットルあたり53.8円が単価に上乗せされ、消費者が支払う間接税です。この税金は、道路整備や交通インフラの維持、さらには環境保護のための施策に充てられる重要な財源となっています。

ガソリン税は、「揮発油税」と「地方揮発油税」の2つから成り立っています。揮発油税は、全国単位で課されるものであり、地方揮発油税は地方自治体が課すものです。

ガソリン税の導入経緯

戦後、日本は急速に経済成長を遂げる中で、道路や交通インフラの整備が急務となり、これらを支えるための財源が必要でした。そんな中、ガソリン税は道路整備やインフラの維持のための財源として1954年に車の車体課税と共に導入されました。日本政府は、ガソリン税によって得られた税収を道路整備や保守管理に充てることで、経済発展に欠かせないインフラの充実を目指しました。この制度は、長期的に道路整備における安定した財源を確保するために重要な役割を果たしてきました。

暫定税率の歴史

暫定税率とは、通常の税率よりも高い「一時的な」税率のことを指します。ガソリン税における暫定税率は、1973年からの「第7次道路整備計画」を進める際に、予算確保の副次的な財源として導入されたものです。道路整備計画はその後も5年毎に改定され、この暫定税率はそのたびに設定が続けられており、今に至るまで存続しています。

そんな中、2008年に政府は道路特定財源の「一般財源化」を決定し、翌2009年に道路特定財源制度が廃止されました。これはガソリン税の使い道が当初の目的であった道路整備以外にも使えるようになり、それに付随する暫定税率も使い道が道路整備だけではなくなったことを意味します。この決定を受け、暫定税率の存在意義を疑問視する声が多く挙がるようになりました。

ガソリンの全国平均小売価格は年々上昇しており、さらに道路整備以外の使途を持つ税金がガソリン税として徴収され続けているということから、暫定税率は今まで様々な議論を巻き起こしてきました。そのため、今回約50年ぶりに自民・公明・国民民主の3党が、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止に合意したということが大きくニュースで取り上げられ、注目されているのです。

トリガー条項について

暫定税率への批判の声を受け、政府は2010年から「トリガー条項」を設定しました。これは、ガソリンの全国平均小売価格が1リットルあたり160円を3ヶ月連続で超えた場合に暫定税率分を一時的に停止し、また130円を下回ると暫定税率が復活するというものです。暫定税率の有無を決めることでガソリン価格を調整し、ガソリン価格の高騰を防ぐ狙いがありました。

ところが、2011年に発生した東日本大震災の発生に伴い、ガソリン税を復興財源としても活用することを目的にトリガー条項が凍結されてしまいました。トリガー条項の凍結は現在も続いており、そのためガソリン価格に関わらず、一定の暫定税率が上乗せで徴収され続けているのです。

燃料油価格激変緩和補助金について

トリガー条項が凍結された上、世界情勢の変化によりガソリン価格はますます上昇していきました。政府はトリガー条項を復活させてしまうと税収が失われて国や地方自治体の予算が枯渇することを懸念し、トリガー条項復活ではなく新たに燃料油価格激変緩和補助金を給付することを決定しました。この補助金は、原油価格の高騰がコロナ禍からの経済回復の足枷となるのを防ぐため、石油元売・輸入事業者に補助をすることで、ガソリンなどの小売価格の急騰を抑えることをねらった燃料油価格激変緩和事業の一環です。

日本のガソリン価格高騰の背景

そもそも、どうしてガソリン価格は上昇し続けているのでしょうか。以下に簡単に解説していきます。

国際的背景

国際的な背景として、ロシアによる軍事侵攻の長期化が挙げられます。ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカやヨーロッパ各国などがロシアへの経済的な締めつけを強めていることで、市場でロシアからの原油の供給が滞る懸念が強まったため、ガソリン価格が不安定になったのです。

また、石油原産国が石油の自主減産をしたことも背景として挙げられます。これは再生可能エネルギーへの転換を進める動きが活発化したことや、欧米や中国の景気減速などを受けて原油価格が下落したことを受け、原油価格を回復させるための措置として行われました。

そもそも原油の供給量はOPEC(石油輸出国機構)により決定されており、その供給量によって原油価格は大きく変化します。OPECは世界の石油供給の約40%を占める国際的なカルテルであり、生産量を調整することによって、価格をコントロールしようとします。例えば、OPECが生産を減少させると、供給が絞られ価格は上昇します。逆に、増産すれば価格は下落することがあります。

その他様々な要因により、原油価格は常に変動し続けているのです。

国内の背景

また、国内の背景として燃料油価格激変緩和補助金の段階的な縮減が挙げられます。

政府は2024年12月ごろから補助率を段階的に縮小していくことを決定しました。この補助率縮小により、具体的には、12月中旬からガソリンの全国平均小売価格が5円程度上昇し、2025年1月中旬からはさらに5円程度上昇し、合計で10円程度上昇する見込みとなっています。

このような複合的な要因が重なり、日本のガソリン価格は高騰し、また非常に不安定になっています。ガソリンは日本の経済状況を直接左右する重要な資源であるにも関わらず、日本は輸入しているガソリンのほとんどを中東の石油原産国に依存している状況です。そのため国際情勢の変化による原油価格高騰から受ける影響は甚大であり、一時的な補助金などで防ぎきることは難しいのです。

暫定税率廃止はいつから?

暫定税率がいつから廃止されるのかはまだ不透明であり、正式には決まっていません。まだ議論の段階ではありますが、来年度からの廃止は難しいため、令和8年度の税制改正に盛り込まれる見込みとなっています。早期の廃止を訴える声が強まれば、早まる可能性もあるでしょう。また、トリガー条項の復活についても議論されていくようです。

ガソリン代の行方と今後の課題

暫定税率が廃止されることにより、私たちは今後どのような恩恵を受けることができるのでしょうか。また、新たに発生する課題は何なのでしょうか。以下に解説していきます。

消費者の負担軽減

ガソリン価格が直接引き下げられることで、家計の負担が軽減されることが期待できます。

物流コストの削減

配送料や運送業界の燃料コストが削減され、間接的に商品価格の安定化が期待されます。

財源の確保

一方、暫定税率廃止による減収分をどのように補填するかが大きな課題となっています。政府は新たな税制改革や他の財源確保策を模索し続ける必要があるでしょう。

原油価格依存

依然として、日本の原油輸入依存度が高い状況では、暫定税率廃止後も国際的な原油価格の変動が価格に影響を与えることとなります。石油に代わる持続可能なエネルギー政策を構築し、石油依存から脱却できるかどうかが大きな課題となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事ではガソリン税や、それを取り巻く様々な税制・政策について解説してきました。

要約すると、

  • かつては道路整備拡充の目的で導入されたガソリン税の暫定税率であったが、一般財源化したことによりその使途を疑問視する声が挙がり、批判の対象となった
  • 政府は世論に応えるためトリガー条項を設定したが、東日本大震災により条項は凍結され、無期限に暫定税率が徴収されることとなり、再び暫定税率は非難を浴びることとなった
  • コロナ禍や世界情勢の影響を受けガソリン価格は上昇し続けたため、政府は更なる措置として燃料油価格激変緩和補助金を供給することで急場を凌ごうとした
  • ガソリン価格の上昇は長期化し、補助金でガソリン価格をコントロールするのが難しくなったため、現在政府は燃料油価格激変緩和補助金を段階的に縮小した後、暫定税率を廃止してガソリン価格を安定させようとしている
  • 補助金の縮小によりガソリン価格は上昇するが、今後、暫定税率の廃止によりガソリン価格は下がる見込みとなっている
  • 暫定税率の廃止による減収をどのように補うか、ガソリン価格の安定化を図るためにどのような政策を普及すべきか、また、今後石油資源に頼らない持続可能なエネルギー政策を普及させることができるか、といった課題が挙がっている

日本におけるガソリン税を取り巻く問題は、このような流れとなっています。
ガソリン価格の変動は、多種多様な事業者すべての経営存続に直結する重大なトピックです。正しく理解し、最新の情報を把握することで、事業者へのより良い支援へと繋がるでしょう。本記事が少しでも参考になれば幸いです。

税理士.ch 編集部

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