コースの新設・廃止など 令和6年度の両立支援助成金を解説

両立支援助成金は、仕事をしながら、育児や介護も行いやすくするための制度です。
しかし誰でも受給できるわけではなく、申請の手続きや条件のクリアが求められます。加えて、両立支援助成金の内容も定期的に見直しがされており、最新版の確認は必須です。

そこで今回は、令和6年度版の内容を中心に、両立支援助成金の具体的な特徴をご紹介します。

目次

6コースから選べる両立支援助成金

まずは両立支援助成金に該当する、6つのコースについて見ていきましょう。両立支援助成金を受給するには、以下のコースから選ばなくてはいけません。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 育休中等業務代替支援コース
  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース
  • 不妊治療両立支援コース

例えば1つ目の出生時両立支援コースは、「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれています。
主に、男性の育児休暇取得を促すための助成金です。

また各コースの中は、さらに細かい項目に分かれています。加えていずれのコースも、中小企業の事業者を対象としており、次の条件に当てはまらない場合は申請できません。

  • 小売業(飲食店を含む)で資本金もしくは出資額が5000万円以下、または常時雇用の労働者が50人以下
  • サービス業の場合は5000万円以下もしくは100人以下
  • 卸売業なら1億円以下もしくは100人以下
  • その他の業種は3億円以下もしくは300人以下

ちなみに、資本金がない場合でも、労働者の数が規定を満たしていれば申請可能です。そしてコースにはもう1つ、事業所内保育施設コースが存在しますが、新規の受付は平成28年度から停止しています。

再開の目途は立ってないようです。もし状況が知りたい場合は、厚生労働省や都道府県の道路局などへ問い合わせをしてみましょう。

両立支援助成金の申請に関する注意事項

各コースの条件をクリアしていても、申請時の書類に不備があったり、助成金共通のルールを違反していたりすると、受給できません。特に両立支援助成金を申請する際は、以降でご紹介する点に注意しましょう。

育児や労働に関する法律の違反がないか

両立支援助成金は、労働者の育児や介護などをサポートするという目的もあって、次の法律に違反する場合は受給できません。

  • 育児・介護休業法
  • 次世代育成支援対策推進法
  • 男女雇用機会均等法
  • パートタイム・有期雇用労働法
  • 労働施策総合推進法
  • 女性活躍推進法

基本的にはいずれも申請日前日までに違反がないかを確認しますが、育児・介護休業法のみ例外です。育児・介護休業法の場合、申請中でも支給決定までに違反が見つければ、受給取り消しとなるので注意しましょう。

提出書類は原則関係者全員

両立支援助成金の審査は、基本、提出された書類のみで行われます。

書類の不備があれば都度確認はされるでしょうが、応対すれば審査に通るわけでもないので注意が必要です。特に育休中等業務代替支援コースでは、育休取得をする労働者だけでなく、業務を代わる労働者の書類も用意しなければいけません。

労働条件通知書や賃金台帳などで、代替者が存在するだけでなく、実際に担当していることを証明します。関係者が増える分、書類も多くなるので、提出前の確認は念入りに行いましょう。

電子申請は条件付き

両立支援助成金では全コースで電子申請を行えますが、対象となる労働者がいつから要件を満たすかで申請の可否が変わります。以下の4コースは、令和5年度以降に要件を満たしていれば申請可能です。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 不妊治療両立支援コース

残りの育休中等業務代替支援コース、柔軟な働き方選択制度等支援コースは、令和6年4月以降であれば申請できます。対象者の育休取得タイミングなどは、各コースの条件範囲内であればいつでも構いません。

令和6年度から追加・変更された箇所

令和6年度においては、まず以下の3コースに変更が行われました。

  • 出生時両立支援コース
  • 育休中等業務代替支援コース
  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース

以降でコースごとに見ていきましょう。

出生時両立支援コースの変更点

出生時両立支援コースは、「男性労働者の育児休業取得」及び「男性の育児休業取得率の上昇等」それぞれに変更があります。まず男性労働者の育児休業取得では、令和6年度から以下の点が変わりました。

  • 支給対象労働者数の上限が3人に
  • 2人目及び3人目に対してはそれぞれ10万円
  • 対象者の1人目が条件を4つ以上クリアした場合に金額を30万円へ増額

今までは事業所1か所につき1人の労働者のみ対象でしたが、令和6年度以降は3人まで申請できます。ただし1人目から3人目まで、条件は少しずつ異なっているので、クリアしているか確認する際は注意しましょう。

続いて男性の育児休業取得率の上昇等では、「プラチナくるみん認定事業主」に対して、支給額が新たに加算されます。プラチナくるみん認定事業主は、子育てサポートに関する一定の基準を満たした企業に送られるものです。

認定は「プラチナくるみんマーク」として広告などに掲載でき、子育て支援に積極的な企業というアピールができます。ただし認定は、受給者1人目の育児休業終了前に行われていなければいけません。

両立支援助成金の支給額加算を狙うなら、早めに申請しましょう。

育休中等業務代替支援コースの変更点

育休中等業務代替支援コースは、令和6年1月時点で既に変更されている項目を継続します。まず手当支給等(育児休業)であれば、育休中の労働者の代わりに仕事を受け持った方へ、手当てを支給した場合が対象です。

同様に、手当支給等(短時間勤務)なら、育児のために時短勤務となった労働者の代わりに、受け持った方への手当支給が条件となります。また既存の労働者だけでなく、育児休業者の代替目的で新たに雇用した場合に申請できるのが新規雇用(育児休業)です。

これらのうち、手当支給等(育児休業)と新規雇用(育児休業)は、プラチナくるみん認定事業主であれば一部支給額の増加が見込めます。

柔軟な働き方選択制度等支援コースは新規設置

柔軟な働き方選択制度等支援コースは、令和6年度から新たに追加されました。フレックスタイム制やテレワークなど、育児中の労働者に合わせた働き方を促すコースです。

事業者側との面談が要件に含まれるものの、勤務時間など細かい設定は労働者側が行えます。大まかな内容は、次の5つです。

  • 始業終業時刻の変更等(フレックスタイム制・時差出勤制度)
  • 育児のためのテレワーク等
  • 短時間勤務制度
  • 保育サービスの手配・費用補助制度
  • 子の養育のための有給休暇

柔軟な働き方選択制度等支援コースで両立支援助成金を受給するには、上記5つの中から2つないし3つ取り入れる必要があります。もちろん、取り入れた制度を労働者が実際に利用することも条件です。

2つの場合は20万円、3つなら25万円が支給されます。また1年度の中で、1人の事業主あたり5人まで申請可能です。

そのほかの変更点

各コースとは別に、以下の2点も令和6年度から変わっています。

  • 育児休業等支援コース(職場復帰後支援)の廃止
  • 新型コロナウイルス感染症対応特例の終了

まず、育児休業等支援コース内にあった職場復帰後支援が、令和6年度は廃止です。ただ育児休業等支援コースには、職場復帰時を要件とする項目もあります。

原職への復帰や一定期間の継続雇用など、育休をしていた労働者へのサポートをすることが条件です。もし職場復帰後支援を利用していた、今後申請予定だった場合は、職場復帰時の内容を確認してみてください。条件に合致すれば、職場復帰時の項目で申請も可能です。

また、新型コロナウイルス感染症対応特例も、令和6年度は行われません。具体的には、次の2項目が終了です。

  • 介護離職防止支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)
  • 育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)

ただし、令和5年度中(令和6年3月31日まで)に労働者が上記の要件で休暇を取得した場合は対象となります。

まとめ

令和6年度の両立支援助成金は全6コースからなり、新たに柔軟な働き方選択制度等支援コースが加わりました。代わりに、育児休業等支援コースの職場復帰後支援は廃止、コロナウィルスに関する特例も終了です。

一方既存のコースでは、出生時両立支援コースと育休中等業務代替支援コースが変更されました。対象人数や支給額の増加、プラチナくるみん認定による増額など、概ね待遇は改善されています。

ただし、書類の不備や関連する法律違反による申請不可など、注意すべき点は変わりません。申請時は両立支援助成金全体の要件に加え、コースごとの条件も都度確認しましょう。

税理士.ch 編集部

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