取締役の人数についての決まり<企業経営者へのアプローチに役立つ法律講座 第6回>

鳥飼総合法律事務所 弁護士
佐藤香織

2021/10/20

第6回 会社の役員変更のときに覚えておきたいこと【後編】

 
1 取締役の人数についての決まり
 
今回は、会社の役員が退任するなどして、役員の人数が減るときに確認しておくことがテーマです。
 
株式会社の取締役の任期が満了したり、辞任した場合、そのままにしておくと、役員の人数が減ったままになります。
取締役が減るとき、多くの会社は、前回お伝えしたとおり、同じ人を再任したり、新しい方を選任したり(新任)していると思います。
では、そもそも、株式会社の場合、取締役は何人でなければならないのでしょうか。

株式会社は、取締役は1人以上であれば何人でもよいというのが原則です(会社法326条1項)。
ただ、株式会社は、取締役会を設置するか設置しないかを、自分で決められます(なお、公開会社等の一定の会社は、取締役会を設置しなければなりません(会社法327条1項))。
 そして、取締役会を設置する会社は、取締役は3人以上選任しなければならないとされています(会社法331条5項)。
また、この会社法の定めに反しない範囲で、会社の定款で、具体的な取締役の人数を「●人とする」、「●人以上とする」、「●人以上▲人以下とする」などと定めている場合もあります。
 このような会社法の定めがあり、さらに定款の定めもある場合、それに違反すると、会社法違反、定款違反の状態になります。
 
2 取締役の人数について違法状態になったとき
 
取締役の人数が減っても、会社法と定款の規定に反しない範囲であれば、問題はありません。つまり、取締役として必要な人数の下限を下回らなければ、そのままでも(新しい取締役の選任決議をしなくても)、法的な問題はありません。
しかし、次のような例を考えてみます。
ある会社は、取締役会を設置する会社で、取締役は3人で経営してきました。しかし、取締役のうち1人が、あるとき辞任することになりました。辞任によってこの会社の取締役は2人となりましたが、新しい取締役を選任せず、そのままにしていました。
この例によると、この会社は取締役が2人ですから、会社法で定める必要な取締役の人数の下限である3人を下回っているので、会社法違反の状態になるということです。
 
そして、これに対しては、会社法で罰則が定められています。
どのような罰則かというと、取締役が、この法律又は定款で定めたその員数を欠くこととなった場合において、その選任の手続をすることを怠ったときには、100万円以下の過料に処する(会社法976条22号)というものです。
この罰則の対象となるのは、その会社の代表取締役、取締役、監査役などであり、ある日突然、裁判所から、過料決定が送られてくるケースもあります(ただし、過料の金額は、満額の100万円ではなく、事案に応じてではありますが、数万円だろうと思われます。)。
 
取締役の人数についてあまり気にしたことはないかもしれませんが、任期満了や辞任があったときには、人数のチェックも忘れないでください。
 
3 会社経営に適した役員構成を
 
取締役は会社の業務執行を行い、取締役会は会社の業務執行の意思決定機関です。取締役や取締役会をどのようなメンバーで構成するかは、まさに会社の成長と存続にかかわる重大事です。
大きな変化の時代を踏まえた、それぞれの会社に適した役員構成となっているかを、今一度見直してみるのもいいかもしれません。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。