多種多様な企業戦略を理解するために<中小中堅企業のためのSDGs実践編Vol.1>

金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長
情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授
平本 督太郎

2021/7/18

このコラムでは、SDGsビジネスの第一人者である平本督太郎先生が、国際社会の共通目標である「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」について中小・中堅企業の【実践編】として戦略策定の考え方や事例をわかりやすくご説明します。 
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.92(2021.6)に掲載されたものです。

SDGsに関する多種多様な企業戦略を理解するために必要な枠組み


今回から、SDGs実践編として、企業がどのように経営戦略にSDGsを組み込んでいくべきかを解説します。

中小・中堅企業によるSDGsの取り組み方は、多種多様です。SDGsの先進企業においても、コロナ前までは自社が目指す理想の未来を描きつつ、自社の認知力を高め中長期的な変化を先読みし、能動的に対応していくといった観点からの取り組みが多かったのですが、現在では短期的に起こる変化にいかに柔軟に対応していけるよう自社の組織学習を促すか、といった観点からの取り組みも増えています。

実際に、私がご一緒している複数の企業を見ても、一見すると企業毎に全く異なる特徴の取り組みをしています。SDGsというワードが世の中にあふれてきた今だからこそ、SDGs経営という大まかな概念で理解するのではなく、解像度を上げ、自社に適しているのはどのような種類のSDGs経営なのかを理解することをオススメします。

今回は、初回としてSDGsに関する企業戦略を理解するための枠組みをご紹介し、その上で次回から異なる特徴の戦略について事例を交えながら一つずつお伝えしていきます。

SDGsに関する企業戦略はその特徴によって、大きく4つの種類に分けられます。「社会変化で機会を掴める」、「危機感で企業を進化させられる」、「社会変化によって追い込まれない」、「脅威に柔軟に対応できる」の4つで、どれも目指す姿が異なります。企業によっては、4つ全てに着手している事もあれば、どれか1つに重点を当てている企業も存在します。例えば、新型コロナウイルス感染拡大への対応を始めとするパンデミック対応はSDGsのゴール3に該当する取り組みですが、「脅威に柔軟に対応できる」姿が実現していれば、パンデミックで経営危機に陥ることはありません。ただ、経営危機を避けるだけではなく、この機会に新しい事業に挑戦しようとしている企業もたくさんあります。それはまさに「社会変化で機会を掴める」に当てはまります。

4つの種類は、外部環境の変化による機会の創出、もしくは脅威への対応という軸、これから起こす変化の原動力・きっかけが、社外の社会ニーズの変化がきっかけなのか、社内の危機感の高まりがきっかけなのかといった軸によって分類されます。
自社のSDGsの取り組みがどこに当てはまるのか? 参考としている企業の取り組みがどこに当てはまるのか? 是非、考えてみてください。



次回は、「社会変化で機会を掴める」について着目し、詳細を説明したいと思います。

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