【令和6年度】事業再構築補助金の解説及び申請時の注意点
この記事では、中小企業向けの事業再構築補助金において、令和6年度の内容を中心に解説します。申請時の注意点などもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
事業再構築補助金とは
まずは、事業再構築補助金とは何か、簡単にご紹介します。
事業再構築補助金は、コロナ過により、従来の業務で売り上げ等が望みにくくなったことに伴う支援です。業績を取り戻すために新たな分野を開拓したり、今の業種そのものを変更したりと、挑戦を選んだ中小企業を対象に行われています。
ちなみに事業再構築補助金は、電子申請でしか受け付けておらず、電子申請もgBizIDプライムのアカウント開設が必要です。持っていない場合は先に手続きを済ませましょう。
事業再構築補助金の申請に必要な条件
事業再構築補助金を申請する際は、以下の要件を満たす必要があります。
- 申請対象である
- 金融機関か認定経営革新等支援機関での確認済
- 付加価値額の向上
これらに加えて、対象となる類型ごとの条件を満たせば申請可能です。
次から、それぞれ詳しく見ていきましょう。
申請対象かを確認する
まずは、事業再構築補助金の申請が可能かを確認します。
コロナ過で事業転換したと言っても、全ての中小企業が対象になるとは限りません。事業再構築補助金は主に、以下の6つに分けられ、そのいずれかに該当する場合のみ申請できます。
- 新市場進出
- 事業転換
- 業種転換
- 事業再編
- 国内回帰
- 地域サプライチェーン維持・強靱化
このうち国内回帰とサプライチェーンは、いずれも国内に製品の生産拠点を置く内容です。
ただ、単に工場などを増やせばよいのではなく、該当製品の製造技術に先進性が求められます。
加えてサプライチェーンは、製品自体がその地域で必要とされていることも条件です。効率の悪い製造方法や、不要な製品を作っても補助金は出ません。
ちなみに、実際の申請においては、上記とはまた異なる名称の類型が用意されています。こちらの類型は、あくまで申請対象になるかの基準なので、注意しましょう。
金融機関か認定経営革新等支援機関での確認
事業再構築補助金を申請する際は、金融機関あるいは、認定経営革新等支援機関に事業計画書を確認してもらわなければいけません。
機関を決める際は、認定経営革新等支援機関検索システムを活用しましょう。
日本全国の対象機関から探せるので、事務所が訪問しやすいなどの理由で選びやすいです。システムを利用せず、知人が該当機関に勤めているなどの理由で決めてもよいですが、くれぐれもトラブルには注意してください。
なぜなら事業計画書を承認する代わりに高額報酬を請求するなど、悪質な業者も存在するためです。事業再構築補助金事務局では、トラブルに関する問い合わせも受け付けています。もし何かあった場合は相談しましょう。
付加価値額の向上
事業再構築補助金は、補助期間が終わっても3~5年は報告が必要です。その際、付加価値額の年平均成長率が3~5%増えていることも求められます。
もしくは、従業員1人当たりにおける付加価値額の年平均成長率が、3~5%増えていることが条件です。ちなみに3~5%の中でどの程度になるかは、申請対象の項目で触れた6つの類型によって変わります。
無論、申請時点では実際にどうなるか分かりません。ただ、事業計画書などからその見込みがあるとすら思えない内容では、審査に通るのは難しいでしょう。
令和6年度(第12回公募)から変更・更新された内容
事業再構築補助金は、都度その内容が変更されることもあります。
前年度以前に申請しようとして見送り、今回また申請しようと思っているなら注意が必要です。必ず申請前に、最新の公募要領などを確認しましょう。
ここでは、令和6年度(第12回公募)から新たに変更された内容についてご紹介します。
既存類型の見直し
まずは、類型の名称が令和6年度版から見直されます。第12回公募分の類型は次の通りです。
- 成長分野進出枠(通常類型)
- 成長分野進出枠(GX進出類型)
- コロナ回復加速化枠(通常類型)
- コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
- サプライチェーン強靭枠
ちなみに、11回公募までは6枠(うちグリーン成長枠のみ2パターン)でした。しかし第12回公募分では大きく分けて3枠になり、サプライチェーン強靭枠以外は名称が変更されています。
これは制度の複雑化を解消するのが目的です。
また主な対象者を、今もコロナの影響を受けている、あるいはポストコロナを踏まえた再構築を計画している企業としています。
審査の厳格化
審査も以前に比べて、令和6年度は厳しくなっています。
採択審査・交付審査・実績審査いずれもAIを導入するなど、システムを刷新しました。例えば採択審査ではAIが内容の重複率をチェックしており、類似率の高い案件は排除されやすいです。
そのため、過去に用いた書類をそのまま提出するのはもちろん、データを少し変えただけでは採用されません。以前と似た事業を行いたい場合もあるかもしれませんが、書類は1から作成しましょう。
また、類似の内容を検知することで、特定の分野にのみ申請が集中するのを避ける目的もあります。
EBPM強化による事業内容の把握
補助が決まった後についても変更点があります。
EBPMの強化として事業報告やデータ提出を明確にし、令和6年度以降は根拠に基づいた分析が可能です。例えば事業化段階の報告は、4半期ごとと定期になり、かつ全ての対象企業に義務付けられます。
今までは短期的に成果報告をする曖昧なものでしたが、再改定がない限り、未提出は許されません。加えて提出書類も共通のフォーマットが用意されたため、データの比較・分析が容易です。
また、分析内容は公表されます。内容は明確な根拠も確認でき、補助金がどのように使われたかや、業績の変化なども以前より分かりやすいです。
類型ごとの申請条件
ここからは、個々の類型別の条件について見ていきましょう。
共通点もいくつかあり、例えばサプライチェーン強靭枠以外の類型では、企業の規模拡大や大幅な賃上げに対して別途支援を受けられます。また先に挙げた付加価値額の向上は、サプライチェーン強靭枠のみ5%、ほかの類型は3%が条件です。
成長分野進出枠(通常類型)
まず、成長分野進出枠(通常類型)は、申請時に市場拡大要件もしくは市場縮小要件いずれかを満たさなくてはいけません。市場拡大要件は、補助金対象として行う予定の事業が、今後10年で10%以上大きくなる分野に属していることが条件です。
加えて事業が終わった後、3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増やすことも求められます。市場が広がるだけでなく、実際に業績を出すことも必要です。
一方、市場縮小要件は、今行っている事業が今後10年で10%以上小さくなる分野に属していると申請できます。ただし、補助金申請においては、別分野の事業を選ぶことも条件です。
市場縮小要件の場合は、分野の縮小だけでなく、属している地域の総生産が10%以上縮小する場合も利用できます。条件は縮小原因が基幹企業の撤退であり、自社売り上げの10%以上が、その企業との取引で培われていることです。
成長分野進出枠(GX進出類型)
GX進出類型では、主にグリーン分野を対象に支援します。具体的には太陽光や次世代エネルギーなど、グリーン成長戦略「実行計画」14分野に該当する内容です。
また、ただ同じ分野に属するというだけでなく、課題解決も見込める事業が求められます。加えて通常類型にもある、終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上も条件です。
コロナ回復加速化枠(通常類型)
コロナの影響を未だに受け続けている企業を対象とするのが、コロナ回復加速化枠です。このうち通常類型では、コロナに関する融資で既往債務の借り換え制度を利用している場合に申請できます。
あるいは、上記に関係なく再生事業者である場合も利用可能です。
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
最低賃金類型は、名前の通り最低賃金を引き上げるのが困難な場合に申請できます。
条件は3か月以上、最低賃金との差がプラス50円以内の従業員が全体の10%以上いることです。ちなみに3か月以上とは、第12回公募分の場合、令和4年10月から令和5年9月の期間内で満たす必要があります。第13回公募・令和7年度以降はまた期間が変わる点に注意しましょう。
また任意ですが、通常型同様、コロナに関する融資で既往債務の借り換え制度を利用していることも条件です。
サプライチェーン強靭枠
最後のサプライチェーン強靭枠は、製品の製造から販売までの流れを国内に集中させることが目的です。ゆえに申請対象かの類型で、国内回帰もしくは地域サプライチェーン維持・強靱化いずれかが求められます。
加えて、以下も条件です。
- 取引先から国内での生産を求められている
- 過去から今後を含めた10年間で、市場規模が10%以上拡大する分野
- DX推進指標の自己診断をIPAに提出済み
- IPAによる「SECURITY ACTION」の2つ星を宣言
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い(※)
- 事業開始から業計画期間終了までの間に給与支給総額を年平均成長率2%以上増加(※)
- 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトで宣言を公表
*(※)はいずれか1つを満たす。
このように、ほかの類型に比べると細かい条件が設定されています。ただ国内、地域密着にこだわればよいとは限らない点に注意しましょう。
まとめ
事業再構築補助金は令和6年度において、その内容を大きく変更しています。まず類型数を以前より減らし、ほとんどが名称も変更しているため、申請には注意が必要です。
加えて審査のシステム変更や報告の義務化など、不正対策への取り組みも目立ちます。また令和6年度中でも、再度変更される可能性は否定できません。
申請の際は、直前に必ず公式サイトなどを確認しましょう。
税理士.ch 編集部
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