2024年労働関係法改正を踏まえた会計事務所の労務戦略のポイント

労務管理事務所 新労社 社会保険労務士
深石 圭介

(2024/5/7)

2024年4月以降の労働関係法の法改正、対処はお済でしょうか?2024年5月の段階でも対処に遅すぎるということはありません。ただ対処をしないがゆえに起こる弊害が表に出る前に、転ばぬ先の杖を持ちたいものです。会計事務所と(そのお客様)に関係する主な改正は以下の通りです。

  1. 労働条件の明示義務の変更:主に非正規労働者の労働条件の確認事項の追加。
  2. 時間外労働の上限規制の厳格化:特に建設、運送、医療業界。
  3. 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大:2024年10月から。
  4. 障害者雇用率の引き上げ:障害者の雇用義務40人以下の企業へ!
  5. 「特定受託事業者取引法」:今後多くなるフリーランスの扱い。その注意点。
  6. 高年齢者雇用安定法の改正:2025年度以降、65歳雇用の義務化。

お客様に提案することもあれば、事務所自体に関連するものもあります。これまでの法改正とどこが違うのかというと…

  • 従業員の多様化(非正規、高齢者、障害者、男女育児者等)に対応する措置が必要になってきた!

ということです。上記の法改正への対処を怠ると将来的にどうなるか挙げますと…

  1. 雇用したパートさんに労働条件の説明が足りず「話が違うじゃないか!」と詰め寄られる可能性。
  2. 法令違反で時効が延長した残業代をさかのぼってごっそり取られる可能性に加え、気付かずに時が過ぎて「悪質」と判断され無作為で経営者が刑法上の罪に問われることも考えられる。
  3. 社会保険の負担が、何もしていないのにいつの間にか増える。早く対処すれば助成金もあったのに…
  4. 雇用に手間がかかる障害者を「仕方なく」雇用して、かわいそうに「飼い殺し」にしていいのか?
  5. フリーランスは社保負担がなく、負担は少ないが、肝心な時に去るのも早い。雇用の多様化で問われる課題も多い。当局が恐れるのは保障のない「タコ部屋化」による過労死や仲間割れなど悲惨な事件。
  6. 年功序列型賃金で事務所の収益とお給料が割に合わない場合が出る。生産性の低下と放置。

若年、壮年の男性が主のピラミッド構造の年功序列社会は採用、賃金、健康の面からムリが出てきています。少子化で若いヒトの補充が効かず、賃上げ値上げも売上が上がらないと厳しい。税社会保険の負担も厳しい。社会保険負担のない一方で定年延長で高齢者が増え、女性はもちろんのこと、出産育児をしても会社をやめてもらいたくない、人数が増えれば障害者など「事情のある従業員」を受け入れる土壌も必要だ、ということで、労務管理の改革を迫られているのです。

そこで1つずつでもいいので、今年の法改正に向けた(コロナ後の新時代に向けた)福利の向上をしていただきたいのです。やり方によっては助成金が付く場合もあります。そのきっかけとしてまずやることは「仕事のたな卸し」です。多様化する人材にどういう仕事を何時間割り振るのか?考えるツールになるものです。

企業や事務所経営の最初から難しく「職務分析」などすることはないのです。いつも会社でやっていることをお客様レベルでも1つ1つの職務レベルでも、箇条書きにして挙げていけばいいのです。「何をやっているのかわからない」という状態でも、職種によっては当局は職務を明らかにした材料を提供しています。「職業能力評価基準」のサイトがそうです。以下のようなものが出てきます。

出典:厚生労働省「職業能力評価基準」選択能力ユニット(経理・資金財務・経営管理分析職種)財務諸表基礎

厚労省のサイトではさらにその仕事のたな卸しを整理し、教育訓練に役立てるツールを用意してくれています。それが「仕事のたな卸し」(職業能力体系)を含む「事業内職業能力開発計画」です。

直接的には教育関連助成金の計画ですが、この「仕事のたな卸し」で「どういう仕事が効率いいのか?」ということをとらえ、さらにそのバックボーンである「事務所は何のためにあるのか?」「どういうヒトを育てたいのか?」という課題を明らかにできるのです。コロンブスの卵のような、最もやさしくて簡単に作ることもできる「人事制度」なのです。

もうすでに人事制度のある会社でも、併用することが可能です、というのは直接的には研修に関わることだからです。研修をやっていない、もしくはやっていてもそれをきちんと会社の理念に基づいて制度化している(採用の企業アピールになる)組織はまだまだ少ないのです。

その「仕事のたな卸し」をもとにした「人事制度」から、採用の多様化、高齢化、残業削減、障害者雇用、非正規雇用などの諸問題の、会社なりの解決法が出てきます。

来る5月23日の「2024年労働関係法改正・助成金活用セミナー」では、この「事業内職業能力開発計画」を踏まえて未来への改革を後押しするヒントを、お客様たる一般企業、会計事務所、社労士事務所の3形態に分けてお届けします。セミナーを聴いてすぐさま、実行可能です。

深石 圭介

労務管理事務所 新労社 社会保険労務士
平成16年に新労社を開業。 雇用関連助成金の申請及び派遣関係の許可申請等を専門とし、中小企業の労務管理に関して実践的な アドバイスを行っている。社会保険労務士として多くの顧問先を持つほか、 労働法の改正等にも知見が深く、研修会社や業界団体等においてセミナー講師も務めている。

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