離婚時に決めておくべきこと(知って得する法律相談所 第11回)

弁護士法人アドバンス 代表弁護士・税理士
五十部 紀英

2021/7/16

第11回 今のうちに確認しておきたい離婚時に決めておくべきこと

新型コロナウイルスの感染拡大および拡大防止のため、外出自粛要請が出されたころ、「離婚数が急増するのでは?」との噂がありました。

この噂の背景には、東日本大震災後に、離婚が急増したことがあります。つまり、震災という生命に危険を及ぼす事態に遭遇した際に、家族のことを顧みない身勝手 な夫(あるいは妻)に愛想がつきたことが大きな原因の一つとされています。

今回の新型コロナウイルス問題でも、同様のことがおき、「定額給付金を勝手に使われた」とか「外出自粛のせいで、一緒にいる時間が増え、相手の嫌なところが目 に付くようになった」などを理由に離婚が急増するのでは、とも言われてきました。

ところが、厚生労働省の発表によれば、昨年4月以降の離婚件数は大幅に減少しています。しかし、離婚件数が大幅に減ったからといって夫婦仲が良くなった訳ではありません。新型コロナウイルスの影響で家計に大ダメージがある中で、離婚をすると今以上に家庭の経済状況が悪くなってしまうと考えている人や、相談窓口が新型 コロナウイルスの感染拡大防止のために閉まっているなどが影響されているとの予測があります。

つまり、新型コロナウイルスの影響で、本当に離婚件数が増えるかはこれから徐々に判明していくものと思われます。

そこで今回は、離婚をする際に知っておくべき事柄や決めておくべき事柄について、弁護士が解説します。

1.親権
離婚する夫婦の間に、未成年の子どもがいる場合は、必ずどちらか片方の親を親権者として定め、届出なければなりません。

親権者とは、未成年の子どもの監護や養育をする立場にあり、財産を管理したり、子どもの法定代理人として法律行為をする役割を持つ人のことをいいます。

具体的には、
・財産管理権(法律行為の同意権)
・身上監護権(子どもの居所を指定したり、しつけなど)
・職業許可権(子どもが職業を営む場合の許可)
などがあります。

親権者が定められていないにも関わらず、離婚をすることはできません。離婚をすること自体には合意はしているが、親権者をどちらにするかが決まらない場合は、 家庭裁判所に親権を定める調停を申し立てて、裁判所に間に入ってもらって親権者を定めることになります。

また、親権者とは別に監護権者とよばれるものがあります。これは親権の内、身上監護権のみを切り出して、親が子どもを自分の手元に置き、監護や教育、世話をし て育てる立場の人のことです。

親権者は監護権者を含んでいることが多いですから、離婚の際に、親権者は定めなければなりませんが、監護権者まで定める必要はありません。しかし、親権者が子 どもを手元に置いて監護できない状態にある場合には、親権者と監護権者が別々になることも可能です。

たとえば、親権者は父親とし、監護権者は母親として、子どもは母親の手元に置き育てるといった具合です。

なお、親権者の指定・記載がなされていない離婚届が誤って受理された場合、親権者が定まるまでは離婚後も父母の共同親権が継続します。また、「3年ごとに親権者を交代する」といった条件付・期限付きの定めはできないとされています。

一方、監護権者に関しては、特に制限はなく、父母ではない、第三者を監護者として定めることも有効と判断されています。

2.財産分与
親権者のように必須ではありませんが、離婚をする際、夫婦の一方は、片方に対して、婚姻していた時代に築き上げた財産分与を請求することができます。なぜなら ば、婚姻していたときに築き上げた預貯金や不動産は夫婦の共有財産として推定されるからです。

たとえば、妻(あるいは夫)が専業主婦(夫)であったとしても、財産分与の請求は当然することができます。いわゆる内助の功として、妻(夫)が専業主婦(夫) として、家事に専念していたからこそ、夫(妻)が就業に専念することができ、賃金を稼ぐことができたからです。

ただし、財産分与が請求できるのは、離婚が成立してから2年以内とされているので注意が必要です。

また、財産分与以外にも、浮気や不倫などの不貞行為や、虐待や暴力といったDV行為など、夫婦のどちらかが原因で離婚をせざるを得ず、精神的な苦痛を負った場 合は、財産分与に加えて、不法行為に基づく慰謝料も請求することが出来るとされています。

財産分与や慰謝料の金額について、協議がまとまらない場合も、親権者の定めと同様、家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所に解決を図ってもらうことができます 。

3.氏の変動、姻族関係の終了
婚姻によって、氏(苗字)を変えた夫婦の片方は、離婚により、当然に婚姻前の氏に復します。つまり、離婚と同時に旧姓に戻ります。しかし、離婚の日から3か月以内に役所によって届け出をすることにより、婚姻の際に使用していた氏を使用することができます。

3か月を経過してから婚姻時の氏を使用したい、あるいは一度婚姻時の氏を使用することを選択したものの、子どもが成人・独立するなど事情が変わって、旧姓に戻りたい場合は、家庭裁判所に「氏の変更」申立てという手続きを行って、家庭裁判所の許可・判断を仰ぐことになります。

また、離婚をすると、姻族(配偶者側の血族)関係は当然に終了することとなります。

氏の変動と姻族関係で誤解がされがちなのが、離婚ではなく、夫婦のどちらかが死亡した場合についての扱いです。

離婚のときには、原則、氏は旧姓に戻り、届け出をすることにより婚姻中の氏を使用することができます。ところが、夫婦のどちらかが死亡した場合は、結論が逆で 、原則は復氏せず、届け出をすることによりいつでも自由に旧姓に復氏することが可能です。

また姻族関係においても、離婚のときは、離婚時に本人と姻族関係は終了します。一方、夫婦のどちらかが死亡した場合は、当然には姻族関係は終了せず、姻族関係 の終了の意思表示をすることではじめて関係が終了します。

4.まとめ
離婚に関する問題は、プライベートな問題も数多く含まれているため、弁護士などの専門家に依頼せず、1人で解決しようとする傾向が高いように思われます。

しかし、1人だけで問題解決しようとすると、例えば財産分与などで本来得られたであろう金額より低い金額で合意してしまうなど、様々な不利益を被ることがあります。

事件の処理全てを専門家に依頼することまではしなくても、一度は自身の置かれている状況を専門家に見てもらい、金額や方向性・方針に誤りがないか相談してみて もらうことをおすすめします。

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