新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?2026年に統合された新補助金の概要を解説
中小企業庁の2025年度補正予算で、2026年から中小企業等の設備投資を支援してきた2つの補助金が統合され、新たに「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」となることが公表されました。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、従来の2つの補助金「ものづくり補助金」「中小企業新事業進出補助金」を継承し、革新的な製品開発から新市場進出、さらには海外展開までを支援対象としているのが特徴です。
本記事においては、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金について、その概要、枠別の補助金詳細、利用上の注意点等を中心に詳しく解説します。
目次
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の概要

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の概要を、制度の背景、目的、構造、対象要件、活用のポイントでまとめました。
本制度の背景と位置づけ(2026年版の意義)
2026年に入り、国内市場の縮小、地域経済の構造変化、海外市場の成長など、中小企業を取り巻く環境が一段と大きく変化しています。
そのような環境下、本補助金は以下のような政策的意図を持つと考えられます。
- 中小企業の新規事業創出力の強化
- 国内産業の高付加価値化
- 輸出拡大による成長機会の確保
- 地域企業の事業転換・再構築の促進
すなわち本補助金は、単なる生産性向上ではなく、新たな市場を切り開く企業や事業者を支援する補助金として位置づけられているのが特徴です。
補助金の目的
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業が革新的な新製品・新サービスの開発や、既存事業とは異なる新市場への進出、さらに海外市場開拓(輸出)に向けた国内体制強化を行う際に、その取組を支援するための補助制度です。
そのため、単なる設備投資や既存事業の延長ではなく、新たな価値創造や市場開拓に挑戦する企業を後押しすることが制度の根幹にあります。
また公式ページにも『「中小企業新事業進出補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」とは異なる補助金です』と明記されているように、従来のものづくり補助金等とは制度趣旨が異なる独立した枠組みである点も協調されています。
補助金の事業区分(3つの枠)
本補助金は大きく以下の3つの枠から構成されています。
- 革新的新製品・サービス枠
- 新事業進出枠
- グローバル枠
革新的新製品・サービス枠
革新的新製品・サービス枠は、自社の技術力を活かした新製品・新サービスの開発を支援する枠です。
以下が本枠の主な特徴になります。
- 革新的な新製品・新サービスの開発が対象
- 既存製品・サービスの生産プロセス改善は対象外
- 単なる機械導入のみでは対象外(開発が伴う必要があり)
- 同業他社ですでに普及している製品・サービスの開発も適用外
新事業進出枠
新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。
以下が本枠の主な特徴になります。
- 新たに製造・提供する製品・サービスが「自社にとって新規」であること
- その製品・サービスの属する市場が「自社にとって新たな市場」であること
- 過去に製造していた製品の再製造は対象外
- 新規性は「世の中で初」「日本で初」等でなく「自社にとって初」でOK
グローバル枠
グローバル枠は、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を支援する枠です。
以下が本枠の主な特徴になります。
- 自社製品を使い自発的に海外販路を開拓するための国内拠点強化が対象
- 取引先主導の事業は対象外(自発的であることが条件)
- 対象となる海外市場は自社にとって新たな国・地域であること
制度の特徴と活用ポイント
本制度の特徴及び活用ポイントは以下の4つです。
- 革新性への要求水準が高い:本補助金の補助対象外の条件が明確に示されていることから、「新規性」「独自性」「市場への新価値提供」等が審査での採択の重要なポイントになります。
- 単なる設備投資では採択されない:ものづくり補助金と異なり、設備導入そのものが目的でなく、新製品・新サービス開発の手段として位置づけられている点に注意を払う必要があります。
- 市場調査・競合分析が重要:同業他社で普及している製品は補助金交付の対象外となります。そのため申請書では、市場の成熟度や競合状況を示すエビデンスが求められます。
- 新事業進出・海外展開の戦略性:新事業進出枠やグローバル枠では、事業計画の実現可能性や市場戦略が審査の鍵となりますので、事業計画の段階で入念な準備が必要です。
参照先:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは | 独立行政法人中小企業基盤整備機構
各枠別の補助金額一覧表(概要)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の各枠の補助内容及び補助事業の必須要件等をまとめました。
各枠別の補助金額一覧表
| 事業枠 | 補助率 | 基本補助上限額 | 賃上げ特例適用時 | 主な対象経費 | 備考 |
| 革新的新製品・サービス枠 | 1/2~2/3 (中小企業) 2/3(小規模企業・小規模事業者・再生事業者) | 750万円~2,500万円 | 850万円~3,500万円 | 機械装置費、技術指導料、外注費、広告宣伝費等 | 建物費は対象外 |
| 新事業進出枠 | 1/2~2/3 (中小企業) | 2,500万円~7,000万円 | 3,000万円~9,000万円 | 上記に加え建物費が対象 | 新市場・新規性が必須 |
| グローバル枠 | 2/3(中小企業) | 2,500万円~7,000万円 | 3,000万円~9,000万円 | 建物費、海外旅費、通訳翻訳費等が対象 | 海外市場開拓が必須、自発的取組のみ対象 |
補助事業の必須要件(3~5年の事業計画)
本補助金を受けようとする中小企業等は以下の要件を満たす必要があります
- 付加価値額の年平均成長率4%以上
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(未達なら補助金返還義務あり)
- 事業場内最低賃金が地域最低賃金+30円以上(未達なら補助金返還義務あり)
- 一般事業主行動計画の策定・公表(ワークライフバランス)
- 子育て等に関する職場環境改善
- 金融機関による事業計画確認(資金提供を受ける場合)
特例措置要件
賃上げ特例の適用を受ける場合や、地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける場合、追加の要件があります。(要件未達なら補助金返還義務あり)
賃上げ要件なら、1人当たり給与支給総額基準値に加え、年平均成長率+2.5%以上の増加が必要であり、地域別最低賃金引上げ特例要件なら、2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である月が3カ月以上あることが求められます。
参照先:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは|独立行政法人中小企業基盤整備機構
採択されやすい事業計画のポイント
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請に当り、本補助金の趣旨や補助事業の必須要件等を踏まえ、採択されやすい事業計画の作成ポイントは主に以下の6つになります。
- 革新性を証明できているか:本補助金の公式ページに記載されている「補助事業の本質」から導かれる採択ポイントは以下の3つです。これらの項目がきちんと事業計画に反映されていれば自ずと採択率が上がります。
- 新しい価値を明確に言語化できているか。例えば、既存の市場課題、顧客の未充足ニーズ、競合の限界点を示し、それをどう解決するかなど
- 自社独自の技術・ノウハウを使った開発であるか(自社ならではの強みが審査で最も評価されるため)
- 競合との差別化が明確か(同業他社で普及している製品・サービスではないことを証明するため競合調査は必須)
- 新製品・新サービスの開発が主役となっているか:公式ページにおいては、開発を伴わない設備導入は対象外と明記されています。この記述から導かれる採択ポイントは以下の3つです。
- 設備導入は目的でなく、あくまで開発のための手段として記述する
- 設備導入の理由を「開発工程のどこに必要か」まで具体的に記述する
- 開発プロセス(試作→検証→改良→量産準備等)をストーリーとして示す
- 市場性・収益性が論理的に説明されているか:本補助金は、新しい価値を提供すること目的であるため、その価値が市場で受け入れられる根拠を示す必要があります。
- 実現可能性が高い計画になっているか:事業計画に描かれた内容がいかに革新的であっても、最終的に実現できなければ採択されません。そのため計画自体は以下の各内容について、審査官に「実現可能性が高い」と思わせるよう、より具体的かつ明確である必要があります。
- 人材・外部連携等の開発体制が明確
- 月単位で工程を示す等のスケジュールが現実的
- 新製品の開発等に掛かるリスク・対策を具体的に記述
- 必要資金の妥当性
- 補助事業終了後の展開(事業化計画)が具体的
- 補助金の趣旨との整合性が高いか:公式ページ冒頭には、以下のように補助金支給の対象企業群が示されています。「革新的な新製品・新サービス開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化に挑戦する中小企業等」
以上から導かれる事業計画の採択ポイントは以下の通りです。- 新市場への挑戦が明確である
- 高付加価値強化につながる取組である
- 海外展開の可能性がある(グローバル枠の申請では必須)
- 申請内容が補助対象外に該当しないことを具体的に示す:公式ページには補助金の対象外条件が複数記載されています。そのため事業計画の作成では、対象外でない理由を明確に書くと審査で有利になると考えられます。
- 既存事業の改善ではないことを明記
- 単なる設備導入ではないことを明記
- 同業他社で普及しているものではないことを明記
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の利用上の注意点

本補助金を利用するに当り、申請者や税務・会計業務等を通じた関係者が注意すべき主な点を3点解説します。
補助対象事業の範囲を正しく理解すること
公式ページでは補助対象事業の条件として「対象となる事業」「対象外となる事業」と明確に分けて記述されています。
そのため以下の点に注意して「補助対象事業の範囲を正しく理解しておくこと」がとても重要です。
- 新しい価値が盛り込まれていないと採択されない
- 設備導入だけの計画は不採択となる
- 普及品の模倣は対象外
- 同じく既存事業の改善も対象外
他の補助金と混同しないこと
公式ページには次の注意書きが書かれています。
『「中小企業新事業進出補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」とは異なる補助金です』
すなわち本補助金を申請する際、他の補助金と混同しないことがまず前提として必要です。より具体的には、従来のものづくり補助金とは目的が異なること、設備投資中心の補助金でないこと、新事業進出補助金とも別制度だということ、などの理解が必要になります。
申請書作成時の注意点(主に実務面)
前章で解説した「採択されやすい事業計画のポイント」ともやや内容が重複しますが、申請書作成時の注意点を主に実務面から解説すると以下の4点になります。
- 技術的独自性を明確にする…自社の技術力等を活かした開発である必要があるため、技術の強み・独自性を具体的に説明することが必須
- 市場調査をていねいに行う…普及済みの製品は対象外であるため、競合分析・市場の未充足ニーズの提示が重要
- 開発プロセスを具体化する…設備導入の目的を「開発工程のどこに必要か」までより詳しく説明する
- 事業化計画を明確にする…補助事業終了後の収益化・市場展開を具体的に示す
第1回公募スケジュール
本補助金に関しては、2026(令和8)年6月29日に公募要領とともに、第1回の公募スケジュールが公開されています。
以下がその大まかなスケジュールです。
- 公募開始…令和8年6月29日(月)
- 公募受付…令和8年9月30日(水)
- 申請締切り…令和8年10月30日(金)
- 採択発表…令和9年1月(予定)
また以降の実施スケジュール(補助事業実施期間・実績報告提出締切日等)は事務局の公式サイトをご参照下さい
参照:第1回公募スケジュール | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金|独立行政法人中小企業基盤整備機構
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金について、概要、枠別の補助金内容、利用上の注意点等、詳しく解説しました。
この補助金は、革新的な新製品・新サービス開発、新市場進出、海外展開をめざす中小企業を支援する制度であり、従来のものづくり補助金等とは異なる独自の枠組みを持つ補助金です。また補助上限額や補助率は従業員規模と利用枠によって細かく変わり、賃上げに取り組む事業者には特例による上乗せも用意されています。
ただし対象経費の範囲、付加価値額の増加・賃上げといった支給要件は複雑で、達成できないと補助金の返還が生じるリスクもあります。それだけに事業計画の策定や申請準備においては、税理士・公認会計士等の専門家にも相談しつつ、早めの取り組みが必要です。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、独自性を持つ新製品・新サービスの開発等を通じて国内外に新たな市場を切り開く企業を支援する制度であり、利用価値は高いと考えています。
本記事も参考に、統合されリニューアルされた新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の活用をぜひご検討下さい。
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