「1,000人・100億円」の組織を逆算で設計
AIと分業で巨大BPOインフラ企業を目指すLeapal会計事務所の挑戦

「1,000人・100億円」の組織を逆算で設計 AIと分業で巨大BPOインフラ企業を目指すLeapal会計事務所の挑戦 | 税理士.ch

Leapal会計事務所 代表 公認会計士・税理士 鳥羽 卓朗

2022年の創業からわずか数年で、職員数は35名に達し、顧客数は約700社へと急増。驚異的なスピードで成長を続けるLeapal会計事務所だが、代表の鳥羽卓朗先生は「これはまだ通過点」と淡々と語る。会計業界が長年抱えてきた「属人化」という課題を解体し、AIと分業によって「インフラとしての会計」を再構築しようとする同事務所の現在地と、日本経済そのものをアップデートしようとする壮大なビジョンを伺った。

「小規模零細」をスキップする
100億円から逆算した組織設計

2022年10月の創業とお聞きしましたが、立ち上げ初期の動きについて教えてください。

会計事務所の立ち上げは2022年の10月頃でしたが、実際に売上が立ち始めたのは翌年の1月か2月頃でした。普通なら焦るタイミングなのかもしれませんが、これには私なりに明確な意図がありました。それは、集客よりも先に「採用と体制構築」を先行させることです。実際、業務が本格稼働する3か月ほど前には、あらかじめ受け皿となる人材を採用し、ガッチリとした業務基盤を作ることができました。

Leapal会計事務所 代表 公認会計士・税理士 鳥羽 卓郎


開業当初は「とにかく1件でもお客様を」となるのが普通だと思いますが、
売り上げが立つ前に、人の採用や組織づくりを進められたのですね。
「まずは一人で、徐々に拡大」という一般的なステップを踏まなかったのはなぜですか。

最初から「1,000人・100億円」という規模をゴールに設定し、そこから逆算して組織を設計したからです。これは私の考えですが、日本の会計業界の最大の課題は、一言でいえば「属人化」です。しかし、5人や10人規模の事務所で「分業しよう」「標準化しよう」といくら意気込んでも、現実には絶対に上手くいきません。少人数組織では「誰がどの役割を担うか」を定義し、ルールを整備する“組織作りのコスト”をかける余裕はありません。また、生産性を高めるようなシステム投資に回す資金もありません。結果として、「一人の担当者が職人的に全てを抱え込む」という旧態依然としたモデルから抜け出せない。一度でも「小規模零細事務所」になってしまうと、そこから抜け出すのは非常に難しいのです。だったら「小規模零細事務所をスキップしてしまおう」と、私はそのように考えました。


フルリモートの強みで、
全国のプロフェッショナルを厳選

具体的には、どのような組織を構築されたのですか?

まず、場所に縛られない「フルリモート」という形態を選択しました。弊所には神戸に本店こそありますが、私自身もオフィスがあまり好きではないので、ほとんど行くことはありません。お客様との面談もリモートですから、オフィスは銀行さんとの打ち合わせに使う程度です。職員は神戸や福岡、東京、さらにはタイなど、国内外問わず、本当に様々な場所で働いています。

全スタッフが「各地からリモート」という組織ですが、実際に顔を合わせる機会はあるのですか?

いえ、実際に会うことはないですね。幹部とのミーティングも全てオンラインです。ただし、平日の朝10時半から11時までの30分間は、全スタッフ(25名〜35名程度)でオンライン朝礼を行っています。ここでは、連絡事項の共有だけでなく、持ち回りで「自分の仕事のこだわり」や「好きなもの」を5分〜10分程度発表し合う時間も設けています。フルリモート環境で顔を合わせる機会が少ないため、お互いの人となりを知り、心理的安全性を高める機会として実施しています。このような「場所に依存しない運営」を成立させたことで、全国から優秀な経験者を採用できる“強み”を手に入れることができました。

確かに、フルリモートは働く側には魅力的ですし、全国どこでも、それどころか世界中から人を採用することができます。
これは、非常に大きなアドバンテージですね。そうした強みを活かして、具体定に、どのような人材を採用されているのでしょうか。

会計事務所で実務経験がある方のみを採用しています。単に「知識がある」だけでなく、「どの役割に適性があるか」という事までしっかりとチェックし、厳選しています。経験者のみに限定して募集をかけているため、一度に何百人も応募があるわけではありませんが、フルリモートは採用において、本当にアドバンテージになっています。

どのような適正のある方を重視されているのですか?

会計事務所の仕事といっても、入力と顧客対応では明確に適正は異なりますよね。ですから、入力や作業を正確にこなす職人肌の人、顧客対応や説明が得意な人、この両方で本当に力のある人を採用しています。弊所は会計税務側(入力作業)と顧客対応側(CS:カスタマーサービス)を完全に切り分けた製販分離の業務設計なので、前線には「対人能力に長けた人材」を配置します。銀行や保険、あるいは大手法人で勤務経験のある方も少なくないですね。一方で、後方担当に「入力しかできない人」は絶対に採用しません。最低限、申告書の作成まで一通りこなせるプロフェッショナルであることを前提とし、その上で「チームとしての再現性」を重んじる方を選んでいます。フルリモートかつ標準化されたフローの中では、個人技に依存する“クセの強い人”はミスマッチになってしまうからです。協調性とルール遵守への適応力が、結果として組織のスピードを最大化させます。

フルリモートの事務所はほとんどありませんが、事務所の組織図はどのようになっているのでしょうか。どのよう部門やチームがあるのですか?

「一人で全部」を完全に捨て、「新規営業」「顧客対応(CS)」「製造」「オンボーディング(受け入れ)」など、機能ごとにチームを設けています。その中でも、特に私が肝だと思っているのが「オンボーディング(受け入れ)」のチームです。このチームは、契約直後に発生する会計ソフトの初期設定や経理フローの構築、資料回収ルールの整理など、実務の中で最も難易度が高く、かつ重要な部分を担当しています。ここを専門チームが担い、入り口で「標準化されたデータ」が「期限内」に流れてくる状態を設計することで、その後の「製造」がスムーズに回ります。この初期設計に能力の高い人材を配置できるのも、採用が強いからこそ、です。


AIは「案」を出し、人は「点検」に徹する
手入力を排除した次世代の業務フロー

徹底した分業化、標準化を進められているとのことですが、
具体的にはどのような実務フローを採用されているのでしょうか。

入力作業は徹底的に削ぎ落としています。これは一例ですが、領収書などをAI-OCRでデータ化し、スプレッドシート上でGeminiを呼び出して「仕訳案」を生成させます。ただし、ここがポイントですが、仕訳をAIに最終確定させるのではなく、ここで示されるのは、あくまで「案」です。スプレッドシート上にAIが出力した仕訳案は、必ず人がチェックするようにしています。現段階では、100%正確な仕訳を出力することが難しいからです。人の確認が済んだものにシート上でチェックをつけると、会計ソフトに仕訳が入力される仕組みです。

ブラックボックス化を防ぎつつ、人間がチェックしやすくしているのですね。

その通りです。担当者はAIが出した案を「確認・修正」する役割に集中できます。その結果、ゼロから紙を見て書き起こすような入力作業はほぼ排除され、業務の重心は「点検」や「品質管理」へと移りました。

このような仕組みは、鳥羽先生が発案されるのですか?

Leapal会計事務所 代表 公認会計士・税理士 鳥羽 卓郎

はい。どのようなフローで、どのような仕組みにするかは私が考えています。構築は、AIに強いエンジニアに委託していますが、保守点検は、実は私の父にお願いしています。父は大手ベンダーでインフラエンジニアとして働いていた専門家で、現在は弊所の職員として働いてくれています。このような基盤があるからこそ、製造業務の一部を外部のフリーランスへ投げても品質が担保でき、案件数が増えても職員数が比例して膨らまないスケーラブルな構造が維持できているのです。

日本の生産性を停滞させる“バグ”を、
強固なBPOインフラで解消する

税務を徹底的に効率化されていますが、これだけで100億円という大きな目標を達成するのは難しいのではありませんか?
より高付加価値な事業も提供されている、あるいは今後提供する予定があるのでしょうか。

もちろん、税務単体で届く数字ではありません。私たちが狙うのは、年商数千万から数億円規模の中小企業の「バックオフィス」を丸ごと担うポジションです。具体的には、税務・決算を入り口に、給与計算、労務手続き、さらには振込業務まで含む経理代行をワンストップで提供していきます。本来、これらは企業活動を支える盤石な「インフラ」であるべきです。しかし、なぜ日本の中小企業にはそれが行き届かず、生産性が上がらないのか。そこには支援する側、つまり私たちの業界構造にも大きな問題があると考えています。

支援する側の問題、ですか。

日本には属人化された小規模な会計事務所が乱立し、パートの方一人が辞めるだけで業務が止まってしまうような、極めて脆弱な支援体制が放置されています。一方で、アメリカには、ADPのような時価総額20兆円を超える給与計算の巨大企業が存在し、圧倒的なシステム投資で経済全体の効率化を牽引しています。日本の中小企業がデジタル化に踏み切れず弱いままなのは、それを導く会計事務所や社労士事務所もまた、投資余力のない小規模な組織のままだからではないでしょうか。「BPOの未成熟さ」や「支援側の脆弱さ・非効率」が、日本企業全体の生産性を停滞させている大きな“バグ”のような状態なのです。


その「バグ」を解消するために、具体的にどのようなサービスを準備されているのでしょうか。

私たちはここを一括して引き受け、テクノロジーと仕組みによって安価かつ強固なインフラを提供します。すでに給与計算と労務の領域についてはパッケージ化を進めており、現時点で20社程度に提供を開始しています。このモデルを全顧客に横展開し、さらには、より高付加価値な「管理会計」のサービスへと繋げていく計画です。


管理会計を「インフラ」として民主化する

「管理会計」までをパッケージに含めていく、と。

はい。これまでの管理会計は非常に高額で、一部の企業しか受けられない特別なサービスでした。しかし、私はこれを「民主化」したいと考えています。特定のコンサルタントが属人的に資料を作るのではなく、システムや仕組みで完結させ、モニタリングに集中する仕組みを構築すれば、コストは劇的に下がります。具体的には、最初に経営者や部門責任者の方々からヒアリングし、その会社に必要なKPI(重要業績評価指標)を設計します。そして、会計ソフトや業務管理システム等をAPI連携することにより、KPIが自動集計される環境を整える。あとはそれをご報告するというものです。一度仕組みができてしまえば、定期的なモニタリングと点検を行う運用に特化できます。このように徹底的に仕組み化すれば、現在は10万円を超えるような価格で提供されている管理会計のサービスも、月額3万円程度という、中小企業にとってもサステナブルな価格帯で提供することができます。


年間純増800社の衝撃
Leapalが目指す「日本経済のアップデート」

現在の成長スピードについても伺いたいのですが、顧客数は今どのくらいまで伸びているのでしょうか。

昨年秋、別のインタビューを受けた際は450社程度とお答えしていましたが、その時からさらに増えていますね。2025年末の時点で、顧客数はだいたい700社ほどです。このペースでいけば、今年の末(2026年末)には1,200社から1,400社ほどに到達する見込みです。年間で純増800社というペースですが、今の私たちの仕組みなら十分に達成可能です。

凄まじい勢いですね。その成長の先にある、鳥羽先生が描く最終的なビジョンを教えてください。

私の目標は、単に事務所を大きくすることではありません。Leapalという企業が社会に生み出す「インパクト」そのものにあります。さきにお話しした通り、日本企業の生産性は低く、その大きな要因の一つはバックオフィスの脆弱さにあります。これを私たちがテクノロジーと仕組みで徹底的に効率化し、誰もが安定して享受できる「インフラ」へとアップデートしたいと考えています。私たちがBPOとしてバックオフィスを丸ごと引き受け、経営の指針となる管理会計をすべての中小企業に普及させる。Leapalが巨大な「受け皿」となり、現在5人かかるところを1人で完結できるようになれば、日本企業全体の生産性は間違いなく大きく向上します。

Leapalさんが躍進すれば、この業界で働く人にとっても、大きな変化になりそうです。

そうなりたいと強く思っています。私たちはフルリモートや柔軟な働き方を推進することで、働く人間のQOL(生活の質)向上も同時に実現していきます。最終的に目指しているのは、先ほどもお話ししたアメリカのADPのような巨大なBPOインフラ企業です。圧倒的な仕組み化によって最高品質のバックオフィスを適正な価格で提供し、社会全体の価値を最大化していく。Leapalがそのインフラとなることで、日本経済そのものをアップデートしていきたいと考えています。

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プロフィール
Leapal会計事務所 代表 公認会計士・税理士 鳥羽 卓朗
慶應義塾大学 商学部卒
PwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan監査法人)の東京事務所、会社買収と事業会社経営を経て株式会社Leapal Technologies/Leapal会計事務所(リーパル会計事務所)を設立。
趣味は会社経営、読書、歴史・サイエンス系Youtube視聴、グルメの開拓。

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