外形標準課税の改正<気になる税務トピックVol.20>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

2024/1/26
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。

外形標準課税の改正
令和6年度税制改正では、①外形標準課税が適用される大企業が、資本金を1億円以下にして外形標準課税から足抜けすることを制約する改正と、②外形標準課税が適用される大企業の一定の100%子会社を外形標準課税対象とする改正が行われる。
①については改正によって新たに外形標準課税が適用されることはない。つまり資本金1億円以下で、今現在、外形標準課税の対象外となっている法人が、改正によって新たに対象になることはない。

改正の影響が出るのは今現在、外形標準課税の対象になっている法人だ。令和7年4月1日以後開始する事業年度からは、たとえ資本金1億円以下に減資をしても、資本金と資本剰余金の合計は10億円超であるような大企業は外形標準課税から逃げられないことになる。
また、改正が適用される初年度(3月決算であれば令和8年3月期)の前にあらかじめ減資しておこうという駆け込み減資を防止するため、令和6年3月31日以後に減資をしても令和8年3月期は外形標準課税の対象になる。

ということは、3月30日までに減資をすれば資本金と資本剰余金の合計が10億円を超えていても外形標準課税から逃げることができる。
外形標準課税を外すことを考えている大企業はすぐに減資をしないと間に合わないので要注意だ。これを逃すと、その他資本剰余金の配当を実施するなどして資本金と資本剰余金の合計を10億円以下にするしかない。

空室部分について小規模宅地特例が認められなかった事例
共同住宅の貸室のうち、相続開始の時に5部屋が空室だった。そのうち3室は、4年6か月以上にわたって空室で、残る2室は積極的な募集をしていなかった。このような事例について、小規模宅地特例において空室は一時的に賃貸されていなかったものとは認められないと判断されている(令和5年4月12日裁決)。

新たな入居者の募集をしていなかったことが判断要因になったわけだが、貸家建付地評価が数か月の空室でも減額できないこととは区別して考えるべきだと思う。募集業務をしていればある程度の期間空室があっても小規模宅地特例は認められたはずだ。

一般社団法人に非上場株を譲渡するときの適正価格(税のしるべ1月15日より)
同族会社の株式を一般社団法人に譲渡する際の譲渡価格を配当還元方式で算出したことが低額譲渡として更正処分されている(令和4年11月21日非公開裁決)。
納税者は、第三者間での種々の経済性を考慮して決定した価額による取引を認めるべきだと主張したが認められなかった。

譲渡者は中心的な同族株主に該当するから、所得税基本通達59-6による小会社としての原則評価が適正時価になる。買手が一般社団法人だからと言って配当還元方式で算出することはできない。売手の譲渡前の持株で同族株主か否かの区分を判定する。譲渡所得は値上がり益課税なのだから、売手が中心的な同族株主として保有期間の値上りに影響力を持っていた以上、原則評価で算定することになるわけだ。買手の買取り後の持株で判定することはない。

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