リーダーの学びがチームを変える!会計事務所に必要なリーダーシップとは

リーダーシップは、生まれ持った才能ではなく、磨くことで身につけられるスキルです。会計事務所では、専門知識を持つスタッフ同士が協力しながら業務を進めるため、適切なリーダーシップが欠かせません。
メンバーの強みを引き出し、主体的に動けるチームをつくることが、事務所の成長につながります。本記事では、8万人以上にビジネス研修を提供してきた望月忠親先生に、会計事務所に必要なリーダーシップとその実践方法を伺いました。

望月 忠親
ビジネススキル研修の講師として、2,000回以上の研修を実施し、延べ9万人が受講。官公庁・民間企業を問わない多様な業種、また新人から経営層まで幅広い階層に対して、行動変容につながる研修を提供している。さらに研修の企画・コンテンツ開発・登壇を通じ、人財開発の専門家としても活動。
― はじめに、リーダーシップとは何かを教えてください。
リーダーシップとは、チームを目標へ導く力のことです。特に「ビジョンを示すこと」が重要で、リーダーは明確な方向性を示し、仲間を巻き込んで進んでいきます。
また、コミュニケーション力、意思決定力、共感力、創造的な対話を生み出す力、誠実さなども欠かせない要素です。
― リーダーにとって最も大切な資質は何でしょうか?
リーダーにとって最も大切な資質は、毎日を前向きに迎えられることです。朝、目覚めたときに「よし、みんなでこういうことをやろう」とワクワクし、夜寝る前に「明日はこんなことをやりたい」と思い描ける――そんな姿勢が組織を成長させます。
また、それを周囲に伝えるために、「なぜこの仕事をするのか」という自分の目的を明確にし、言葉にできる必要があります。前向きな姿勢が周囲に伝わっていくような存在であることが、真のリーダーの資質といえます。
― リーダーが成長することで、組織の成長にどのような影響がありますか?
リーダーの成長と組織の成長は密接に関係しています。
組織が成長し続けるためには、リーダー自身が学び続け、柔軟に変化する姿勢が欠かせません。特に会計士・税理士のような専門家は独自の考えにこだわりやすいため、意識的に他者との“コラボレーション”の機会を持ち、新たな視点や発想を取り入れる必要があります。そのための手段の一つがリーダーシップ研修です。
― リーダーシップ研修によってどのような効果が期待できるのでしょうか?
リーダーシップ研修は、学んだことを職場ですぐに実践できるのが大きな魅力です。単に知識を得るだけでなく、実際に行動に移しながら成長を続けていけます。
また、リーダーシップは一人で完結するものではなく、チーム全体に影響を与えます。研修での学びが周囲にも広がり、チーム全体の成長につながるような好循環を生み出すことができるのです。
このように、研修によって受講者が自ら成長しながら、その変化が職場にも自然と広がっていくことが期待できます。
― これからの会計事務所や企業におけるリーダーの役割とは何でしょうか?
労働人口の減るこれからの時代、組織の成長には多様な人材との協働が不可欠です。そのためリーダーには、あらゆる人から「この人と働きたい」と思われるような存在が求められます。緊張感や威圧感を与えず、思い浮かべると笑顔になれるような存在ですね。
しかし、現在の日本ではそうしたリーダーが少なく、イノベーションが生まれにくい状況です。変革の種を見つけても、「言っても無駄だ」と諦めてしまう人が多いのではないでしょうか。
リーダーの役割は、こうした声を引き出し、組織を前向きな変革へと導くこと。共に働く人が「このリーダーになら話せる」と思える存在であることが重要です。
― 会計業界においてリーダーシップが求められるシーンを教えてください。
リーダーシップが特に必要とされるのは、何かを変える、または変わる直前のタイミングです。組織の成長や業績向上を目指す変革期、リスクが顕在化する局面などが挙げられます。
たとえば、会計業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が叫ばれています。本来DXとは、デジタル化を通じて「顧客の価値体験を変えること」や「従業員の働き方に大きな変化をもたらすこと」を指しますが、単なる効率化にとどまってしまっているものが多いのが現状です。
本来の意味でのDXの発想を生むには、組織にリーダーシップの働きが不可欠です。「新しいことに挑戦したい」と思える環境をつくり、対話を通じて感受性を育むことで、チーム内に自由な発想が生まれ、変革につながります。
― 会計事務所などの専門家が集まる組織では、チームの一体感とは真逆の「個人プレー」が生じがちです。これを防ぐために、リーダーは何を意識するべきでしょうか?
リーダーに求められるのは、意見を言いやすい環境づくりです。
専門性の高い集団では、個々が一人で業務を進めるほうが効率的だと考え、「自分のやり方が正しい」と思い込みがちです。しかし、そのままでは新しい発想が生まれにくくなり、組織の成長も停滞してしまいます。
この課題を解決するには、異なる視点を持つ人との対話を増やすことが効果的です。たとえば、「本当にお客様の求める仕事になっているか?」と問われることが、視野を広げるきっかけになります。
リーダーが率先して多様な意見を受け入れ、対話を大切にすることで、チームの一体感を高めることができるでしょう。