AI Overviewsの登場で「自然検索のクリック率6割減」の衝撃
「クリック」を競う時代から、AIに「引用」される時代へ

Google が2024年5月に米国で、同年8月に日本で本格導入した「AI Overviews(AIO)」。これにより、WEB検索は「サイトへの入口」から、それ自体が「答え」へと変貌を遂げました。

米Seer Interactive社が2025年9月に発表した最新レポートによれば、AIOが表示された場合、自然検索・有料広告ともにクリック率はかつてない規模で下落。上位表示が必ずしも流入に繋がらないという、これまでのSEOや広告の定石が通用しない時代がやってきました。

このような大変革が進むなか、AIに「引用・推薦」され、選ばれ続けるために、私たちはどのような生存戦略を打ち出すべきか。SEO対策のスペシャリストで、いちはやくGEO(生成エンジン最適化)の研究にも取り組む株式会社コンテンシャル代表の柏崎剛氏にお話を伺いました。

自然検索のクリック率が61%減少した背景

——AI OverviewsAIO)が導入されてから、WEB集客の現場ではどんな変化が起きているのでしょうか。

一言でいえば、「検索結果に表示されてもサイトがクリックされにくくなった」。これに尽きます。

従来は、ユーザーが何かを検索し、表示された検索結果の中から、自分の目的に合ったサイトを選んで訪問するのが当たり前の流れでした。しかし現在、検索結果の最上部にAIが生成した「回答」が直接表示されます。ユーザーがその要約を読んで満足してしまえば、もはや下の検索結果をクリックし、どこかのサイトを訪れる必要はありません。検索結果はサイトへの「入口」ではなく、それ自体が完結した「答え」になってしまったのです。

この「ゼロクリック検索」の増加を数字で証明したのが、アメリカのWEB広告代理店 Seer Interactive社が2025年9月に発表した最新レポートです。

Seer Interactive社の分析によると、AIOが表示された場合、オーガニック(自然検索)のクリック率(CTR)は劇的な落ち込みを見せています。特に深刻なのが、「◯◯とは?」「◯◯のやり方」といった情報取得型(Informational)のキーワードです。こうした調べもの系の検索において、表示順位1位のサイトのクリック率は、かつての1.76%から0.61%へと下落しました。これは前年比で実に61%以上の減少を意味します。「1位を獲ればアクセスが保証される」という、SEOのこれまでの大前提が崩壊したと言っても過言ではありません。

さらに注目すべきは、この影響がSEOだけでなく、有料広告(リスティング広告)にまで波及している点です。

Seer Interactive社のデータでは、調べもの系の検索における広告のクリック率も、19.7%から6.34%へと急落しています。自然検索も広告も、これまでの3分の1程度まで反応が落ちてしまっている。つまり、特定のサイトが選ばれなくなったのではなく、ユーザーにとって「検索画面上でリンクをクリックする」という行為そのものの優先度が下がってしまったのです。

AIが利便性を提供すればするほど、ウェブサイトへの導線が細くなっていく。これが、いま私たちが直面している最も大きな構造変化の正体です。

情報メディアが「中抜き」され、公式サイトへの「直行」が進む

——自然検索も広告もクリック率が激減しているとなると、WEBサイトの存在意義そのものが問われているように感じます。

WEBサイトの役割を大きく二つに分けて考えてみましょう。一つは「知識や情報を与えるページ」、もう一つは「予約や購入などの行動を完結させるページ」です。AIの台頭で致命傷を負うのは、前者、つまり「間に挟まっていたページ」です。

例えば、あなたが「経費になる支出」を知りたいとします。これまでは、国税庁のサイトや税金系の解説サイトをいくつかクリックして、要点を探していました。しかし、AIOはそれらのサイトを巡回し、一瞬で要約して検索結果のトップに提示します。ユーザーはそれを見れば満足し、元のサイトへ行く必要がなくなります。

一方で、「浦和レッズの試合のチケットを買いたい」という場合はどうでしょうか。AIが対戦カードやスタジアムの情報を教えてくれても、最終的には公式サイトやチケット販売サイトへ行き、座席を選んで決済(行動)しなければなりません。この「行動(CV)」を伴うクリックは、AIOだけでは完結できないため、消えずに残ります。

——つまり、まとめ記事や解説メディアのような「中間層」が飛ばされる、ということですね。

その通りです。Seer Interactive社のデータで、情報取得型のキーワードでクリック率が61%も減ったのは、まさにこの「中抜き」の結果です。情報を「右から左へ整理する」だけで稼いでいたビジネスは、AIという最強の要約屋に仕事を奪われ、ユーザーは、AIの回答から直接、公式サイトや予約導線へと「直行(ダイレクト化)」するようになります。中間にいたページは、単にAIを賢くするための「餌」として利用されるだけで、トラフィックという報酬を得られなくなったのです。

——中抜きの影響は、どの業界でも一律に起きるのでしょうか。

いいえ、ジャンルによって「AIで終わる領域」と「人間が必要な領域」の差は非常に激しいですね。私の感覚では、90%がAIで完結してしまう領域もあれば、60%程度で踏みとどまる領域もあります。

例えば、医療を例に挙げましょう。「この薬の効能は?」という検索なら、AIの要約でほぼ100%事足ります。しかし、「この症状は手術が必要か?」という不安に対しては、AIがどれだけ正確な知識を述べても、ユーザーはそれだけで納得しません。最終的には病院を予約し、医師の診察を受けるという「行動」が必要です。医療だけでなく、士業や不動産業のように、制度上の手続きや有資格者の判断、あるいは物理的な体験が不可欠なジャンルも、クリック構造が強い。AIが「知識」という武器をどれだけ持っても、最後に責任を負う主体(事業者)が必要な領域は中抜きされにくいのです。

逆に言えば、知識だけで商売をしているメディアやアフィリエイトサイトは、今すぐ自分のドメインが「行動」に紐付いているかを見直すべきでしょう。

動画の未来——Google(Gemini)による直接引用の衝撃

——テキストが厳しいなら、YouTubeやTikTokなどの「動画」へ移行すればいいという声も多いですが、柏崎さんはどう見ていますか?

残念ながら、「情報を得るためだけの動画」の未来も、テキストと同じくらい厳しいと考えています。

現在はまだ、YouTubeを傘下に持つGoogleが、他社のAIにYouTubeへのアクセスを制限しているため、「AIに動画を要約させる」というユーザー体験が広まっていません。多くのAIが動画の内容を詳細に検索・解析できないため、動画の優位性が保たれているに過ぎないのです。

しかし、GoogleのGeminiに限れば、動画内の「◯分◯秒で何を話しているか」を正確に把握し、AIOやGeminiのアプリケーション上で、ユーザーが求める情報をピンポイントに提示し始めています。例えば「ポケモンの色違いの捕まえ方」という動画。これまでは10分の動画を視聴して手順を理解していましたが、今後はAIがその動画から「手順1、手順2……」と要点だけを抽出して提示します。そうなると、ユーザーにとって、情報を得るために10分という時間を消費するのは「コスト」でしかありません。

——情報収集としての視聴が、AIによる要約に置き換わってしまう、と。

ええ。さらに一歩進むと、AIは元となる情報源を参考にしながら、より見やすい映像、聞き取りやすい音声、さらにはユーザーの好みに合わせたキャラクター(Vtuber等)を使って、コンテンツを勝手に「作り直す」ことすら可能になります。Googleの「Notebook LM」は、YouTubeの動画をソースにして「音声要約」や「インフォグラフィック」「スライド」などを数分で作成してくれますよね。「情報×演出」は、もはやAIの得意分野なのです。

——では、どのような動画なら生き残れるのでしょうか。

「人(IP)そのもの」に価値があるエンタメです。例えばヒカキンさんの動画。視聴者は「ポケモンの情報」が欲しいのではなく、「ヒカキンさんがポケモンを遊んでいる姿」を見たい。この「その人でなければならない理由」があるコンテンツは、要約不可能です。あるいは、リアル脱出ゲームや現場での体験レポートのように、視聴や要約では代替できない「一次体験」。AI時代に生き残るのは、効率的な情報ではなく、むしろ非効率な「生っぽさ」や、代替不能な「個」の魅力だけになるでしょう。

SEOとSNSの構造変化——「無料で集客する」難易度は大幅に向上

——マーケターの動きは「SEOを続ける派(GEOへの移行)」と「SNSへ予算を振る派」に二分されています。

私の結論はかなり強めですが、「最終的にはどちらの道も、かつてのような黄金時代は来ない」という、極めて悲観的な見立てを持っています。

まずSNS。多くの人が「検索がダメならSNSを検索代わりに使う層を狙え」と言いますが、SNSは本来「情報獲得の場」ではありません。SNSはどんどん趣味、感情、推し活といった「嗜好の場」に寄っていきます。企業がそこで「有益な情報」を流しても、プラットフォームのアルゴリズムはそれを「広告的なノイズ」として弾くようになるでしょう。

一方のSEO。ここで出てくるのがGEO(Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化)、つまり「AIに引用・推薦されるための最適化」です。これはSEOの正当な進化形ですが、問題はその「枠」の狭さです。検索結果の1ページ目に10サイト並んでいた時代から、AIが代表的な数社を推薦する時代になるのですから、椅子取りゲームの難易度は数倍に跳ね上がります。

——SEOもSNSも、集客の主戦場としては以前ほど機能しなくなるということですか?

そうです。かつての「宝くじ的に当たるSEO」や「バズれば無料でお客が来るSNS」というモデルは終わります。情報検索そのものがAIに吸収され、ユーザーと情報の接点が完全に管理される。そこで次に浮上してくるのが、意外にも「広告」への原点回帰です。

——AIが検索を完結させてしまうと、プラットフォーム側も広告収入が減って困るのでは?

まさにそこです。AIで回答が完結するということは、従来の「サイトに送って広告を踏ませる」モデルが機能しなくなることを意味します。プラットフォーム側もマネタイズの再定義を迫られている。そこで確実に来るのが、AIの回答画面そのものへの広告導入(スポンサードアンサー)です。OpenAIは、すでにChatGPT内での広告テストを公表していますし、Googleも同様の動きを見せています。

——AIとの対話の中に広告が入り込んでくる、ということですね。

ええ。ユーザーがAIに「おすすめの靴は?」と聞けば、「あなたの好みに合うのはこのブランドです」と、裏側で広告費を払っている企業の製品を提案する。これが進むとどうなるか。SEOやSNSの「無料枠」を狙って小手先のテクニックを弄するよりも、「広告費を払って枠を買い、それを確実に利益へ変えられる“実体の強いビジネス”」が圧倒的に有利になります。オーガニック流入という不確実な「夢」を追う時代から、資本と実力で枠を勝ち取る「リアリズム」の時代へ戻るのです。

——そうなると、私たちのような事業者はGoogleやOpenAIといった巨大テック企業の掌の上で踊らされるだけなのでしょうか。

残念ながら、構造的にはそうです。特にGoogleは強い。彼らは広告モデルという「出口」を持ち、検索エンジンという「インフラ」を持ち、Geminiという「LLM」を持ち、さらには「クラウド基盤」や、AIを動かすための「チップ(TPU)」まで自社で開発している。インフラからマネタイズまでを垂直統合している彼らに、他社が勝つのは至難の業です。しかし、これは事業者にとって絶望ではありません。ルールが変わるなら、そのルールの中で最も賢く立ち振る舞えばいい。Googleのエコシステムに乗っかって、彼らのAIに「最も信頼できるパートナー(実体)」として認識させること。これが、これからの唯一の勝ち筋です。

——では、AI時代に、人間が信頼できるパートナーとしての一線を守れる領域は何だと思いますか?

前述した医療の話とも繋がりますが、「責任」と「承認」です。税理士の先生方を例に取ってみましょう。AIは「知識」としては税理士より詳しくなれるかもしれません。しかし、AIが作成した税務申告書をそのまま提出して、もし間違っていたとき、AIが責任を取ってくれるでしょうか?顧客が本当にお金を払っているのは、知識そのものではなく、「その判断を専門家が後押しし、責任を持ってくれた」という安心感です。

——SEO/GEOの議論も、結局はそこに行き着くのですね。

はい。Googleが掲げるE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)は、AI時代になり、さらにその重みを増しています。AIは、ネット上の断片的な情報を繋ぎ合わせ、その背後に「責任を負える実体(エンティティ)」があるかどうかを厳しくチェックしています。構造化データを使って、自社の有資格者情報や実績、専門性をAIに「正しく翻訳」して伝えること。AIに「この分野ならこの企業が最も責任ある回答を出せる」と認めさせること。結局、テクニカルな手法(GEO)の先にあるのは、どれだけ誠実に実体のあるビジネスを積み上げてきたか、という極めて人間的な、信頼の勝負なのです。

今後のKPIは「流入数」から「引用・言及」へ

——最後に、この変化の中で組織やプロジェクトをどう動かしていくべきか、アドバイスをお願いします。

自社サイトの大量のデータを分析し、「AIに評価されている強みはどこか」「AIに伝わっていない強みはないか」を明確にしてください。そして、目先の流入数(セッション)に一喜一憂するのをやめるべきです。

——KPI(重要業績評価指標)そのものを変えるべきだ、と。

その通りです。これからは流入数(クリック)ではなく、「AIの回答内で引用されている割合」「指名検索の数」「第三者からの言及(サイテーション)」を追うべきです。量産記事で一時的な数字を稼ぐ時代は、Seer Interactive社のデータが示す通り、終わりを迎えつつあります。高品質で、専門性が高く、そして何より「責任」が伴うコンテンツを積み上げた者だけが、3年後の勝者になると私は予想します。

変化は確かに怖いですが、AIにはできない「実体」と「責任」を持つ私たち人間にとって、これは本質的な価値へ回帰するためのチャンスでもあります。むしろ、今こそが本当の仕込み時なのです。

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【用語解説】
AIO (AI Overviews)
Google検索の最上部に表示されるAIの要約のこと。ユーザーがサイトを訪れず検索結果だけで疑問を解決する「ゼロクリック検索」の主な要因。利便性が高い反面、Webサイトへのアクセス数が減少する一因として注目されている。

CTR (Click Through Rate)
クリック率。検索結果などに表示された回数のうち、実際にクリックされた割合のこと。AIの回答が画面を占有することで、従来の自然検索(オーガニック)や有料広告のクリック率が大幅に低下する影響が、多くのサイトで指摘されている。

GEO (Generative Engine Optimization)
「生成エンジン最適化」のこと。GeminiやChatGPTなどのAIに対し、自社サイトの情報を引用や推薦の対象として選ばせるための施策。SEOに代わる、AI時代における新しい集客・認知拡大のマーケティング手法。

E-E-A-T
Googleの評価基準である「経験・専門性・権威性・信頼性」の略称。AIが情報を生成する際、どの情報を信じて引用するかの判断基準になる。AI時代において、情報の発信者が信頼されるための必須条件となっている。

構造化データ
Webサイトの「意味」をAIに正しく伝えるための専用コード。人間向けの文章とは別に、情報を整理して記述することでAIが内容を理解しやすくなる。AIに自社サイトを正しく認識させるための「翻訳機」として機能している。

柏崎 剛

株式会社コンテンシャル 代表取締役
1979年9月17日生まれ。東京都杉並区出身。WEBプログラマ歴27年の実績を持つ日本のSEOプロフェッショナル、プログラマ、発明家、教育家、研究家。株式会社コンテンシャルの代表取締役を務めるほか、複数の法人で役員やSEO顧問を兼任。

インターネットマーケティングやクリエイティブ関連の業務促進・開発に従事し、美容医療、教育、観光、ITテクノロジー、アフィリエイトメディア分野におけるSEO領域で豊富な経験を有する。

SEOコンサルティング業務を主軸に、マーケティングツールや関連キーワードAPIの提供も行っている。

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