ビットコイン(BTC)の価格が米大統領選でのドナルド・トランプ氏の再選に伴う「トランプ相場」で高騰するなか、暗号資産界隈が注目する「申告分離課税」の行方についてお話したいと思います。<President’s Report vol.27>
株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広
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今回は、ビットコイン(BTC)の価格が米大統領選でのドナルド・トランプ氏の再選に伴う「トランプ相場」で高騰するなか、暗号資産界隈が注目する「申告分離課税」の行方についてお話したいと思います。
まずトランプ相場の状況についてお伝えしたいと思います。
BTCの円建て相場は11月21日午後、国内の大手暗号資産交換業者で、初めて1単位当たり1,500万円台を付けました。価格相場の急騰は、暗号資産の規制緩和と推進を重要な公約として掲げるトランプ氏が大統領選で勝利したことで、関連ビジネスが活性化するとの期待の高まりにより生じたとみられています。
BTCの価格がこれだけ高騰すれば、含み益が生じている状態の時に売却することで利益を確定させる「利益確定売り(利確売り)」をした人もいるでしょう。
しかし、利確売りで生じたキャピタルゲイン(売買差益)は雑所得に分類され、総合課税となります。総合課税では、所得が大きくなればなるほど、税率も高くなる累進課税制が適用されています。所得税の税率は最高で45%、住民税・復興特別所得税を合わせると最高で55%の税率となります。
つまり、暗号資産取引で獲得した利益には、高い税負担が課されるのです。
また、暗号資産の売却では消費税がかからないものの、暗号資産のキャピタルゲインはほかの所得と損益通算できず、翌年以降に損失を繰り越せません。そのため、現行制度では、暗号資産のキャピタルゲインは税制上不利な取り扱いがなされていると捉えることもできるでしょう。
こうしたなか、令和7年度税制改正では、キャピタルゲインを「申告分離課税」の対象とする改正が実現するか、暗号資産界隈で注目が集まりました。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)や日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が、2024年7月30日に政府に申告分離課税や繰越控除の適用を要望したところ、導入を検討する動きが見られたためです。
申告分離課税とは、ある種類の所得に対して個別に税率を適用する方法です。税率が固定されているため、所得税がどんなに上昇しても「20.315%」から上がることはありません。
申告分離課税をめぐっては、JVCEAやJCBAといった業界団体が数年前から、熱心に税制改正を要望してきました。自民党のデジタル社会推進本部も2024年5月に申告分離課税の導入を岸田文雄首相に提案したことがあります。
自民党の石破茂内閣総理大臣は、暗号資産の申告分離課税のルールを適用することに慎重な姿勢を示している中で、12月20日に決定された与党税制改正大綱では、暗号資産の分離課税については「見直しを検討」と明記されました。税制改正に向けた議論は関係省庁の働きかけにより始まるプロセスを踏まえると、申告分離課税の適用が令和7年度税制改正で認められる可能性はゼロではありません。政策動向に注視する価値は十分にあるといえるでしょう。
今後も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。