ドナルド・トランプ新政権について<President’s Report vol.29>
株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広
いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回は、ドナルド・トランプ新政権についてお話したいと思います。
昨年(2024年)12月、弊社会報誌の取材で経営コンサルタントの小宮一慶さんとお会いしました。
小宮さんとは、主催する経営セミナーに私が参加させて頂いて以来の長いお付き合いです。専門の経営分野だけではなく国際情勢などについても幅広い知見をお持ちで、お話する度に刺激を頂いています。
小宮さんから翌年の国内外の政治や経済の展望を伺うのが、私にとっては年の瀬の恒例行事になっています。
取材の中で大きな話題になったのが、アメリカの大統領に返り咲くトランプ氏についてでした。就任式も経て、いよいよトランプ政権が本格始動します。これまでのところ、過激な言動は相変わらずのようです。トランプ氏率いるアメリカは、さらに世界は、これからどう動いていくのか。小宮さんの見解を振り返りながら考えてみたいと思います。
先般の大統領選挙でも、トランプ氏は従来通り「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」の立場を貫きました。国内経済や移民の問題などで、この考え方に基づいた様々な公約が並びました。その中で、とりわけ国際社会の在り方に影響を及ぼしかねないと私が感じたのが、保護主義的な貿易政策です。
トランプ氏は、▼全輸入品に一律10%の関税を課す、▼特に中国製品の税率は60%とする、などの極端な貿易政策を公約に掲げました。自国産業を守るためだけの保護貿易は、世界の分断を招くだけです。行き過ぎた保護主義は、一歩間違えば戦争に発展する恐れすらあるのです。現に第二次世界大戦は、各国の過剰な保護貿易が引き起こした結果だと考えられています。
トランプ氏は、本当にそのような貿易政策に打って出るのか。小宮さんの答えは、基本的には「No」でした。少なくとも、「全輸入品に一律関税を課す」ようなことはしないだろうと。理由は単純で、そんなことをすれば「インフレ」になるからです。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2023年のアメリカの輸入総額は3兆ドルを超え、世界最大の輸入大国となっています。7位の日本が8千億ドル弱、2位の中国でも2.5兆ドルほどですから、その差は歴然としています。
関税が輸入物価を引き上げるのは言うまでもないですが、アメリカにおいてはその影響が桁違いなのです。「アメリカ・ファースト」のトランプ氏が、自国民が苦しむインフレを助長する政策を採るはずがない、というのが小宮さんの見立てでした。
一方、中国に対しては厳しい態度で臨むだろうとも仰っていました。トランプ氏の中国嫌いは筋金入りなので中国とは徹底して対決するだろうと。不動産バブルの崩壊が囁かれている中国経済は、ただでさえ見通しが不透明です。トランプ氏の再登場で、さらに追い込まれる可能性がある。その先に何が待っているのか。中国とロシアの関係強化だ、と小宮さんは指摘します。ウクライナの問題を抱えるロシアにとって、アメリカをけん制するために中国と連携を深めるのは悪くない話、という訳です。
しかし、アメリカVS中露の構図が鮮明になれば、世界中で両陣営の対立が激しくなる恐れがあります。日本にとっても他人事では済まなくなるでしょう。「中露の接近で、国際社会がより分断しやすい状況になりかねない」と小宮さんも懸念されていましたが、私も同じ感想をもちました。
取材では、トップリーダーを選ぶアメリカの仕組みについても話が及びました。
破天荒な感じもあるトランプ氏ですが、過酷な大統領選挙を戦い、勝ち抜いてきたのも事実です。トランプ氏が、今回の大統領選挙への立候補を表明したのは2022年11月。つまり約2年かけて、大統領になるべく戦ってきた訳です。当然、メディアからの厳しい質問にも対応しなければなりません。小宮さんは、「こうした過程によって、候補者や政策が洗練されていく」と強調されていました。
一国のリーダーをどう選ぶべきなのか。政治体制は異なるものの、日本でも見習う点があるのではないかと強く考えさせられました。
色々な意見はあるにしても、アメリカ国民が、今後4年間の国の舵取りをトランプ氏に託したのは事実です。その政権が日本に、世界にどう影響を与えるのか、注意深く見ていきたいと思います。
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