イノベーションボックス税制(イノベーション拠点税制)について<President’s Report vol.9>
株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広
皆さまこんにちは、
株式会社ビズアップ総研の代表取締役 吉岡高広です。
いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回は、2024年度税制改正大綱により、25年4月に施行される予定のイノベーションボックス税制(イノベーション拠点税制)についてお話したいと思います。
イノベーションボックス税制は、企業が特許や著作権といった知的財産を活用した利益に対して低税率を適用する制度です。国内での民間の無形資産投資を後押しし、新しい製品やサービスの創出を奨励することが期待されています。
経済産業省・厚生労働省・農林水産省の3省による要望を受けて創設が決まりました。
イノベーション投資の促進を目的とした税額控除制度は、
これまでにもなかったわけではありません。
試験研究費(インプット)に着目した「研究開発税制(企業が研究開発を行っている場合に、法人税額から試験研究費の額に税額控除割合(1〜14%)を乗じた金額を控除できる制度)」という税制が1967年から存在していました。
しかし、研究開発税制は、主に製品にかかる研究開発を対象した制度であり、知的財産の開発が主流となった現代では活用しにくいという課題がありました。そうした中、中国や韓国といったアジア諸国が次々とイノベーションボックス税制を導入している背景もあり、海外と遜色ない税制面の環境整備を図るために日本でもイノベーションボックス税制が創設されることになったのです。
所得控除の対象となる知的財産は、24年4月以降に企業が自ら国内で創出した特許権やAI(人工知能)関連のソフトウエアの著作権などです。
また、所得控除の対象となる所得は、知的財産のライセンス所得・譲渡所得、対象知的財産を用いて制作した商品の売却益となっています。海外への知財の譲渡所得と子会社などからのライセンス所得は対象外です。
具体的な所得控除額は次のような計算式で算出されます。
所得控除額=制度対象所得×所得控除率(30%)
制度対象所得=知的財産から生じる所得×(知的財産開発のための適格支出/知的財産開発のための支出総額)
イノベーションボックス税制の創設によって期待されるのは、課税所得額の減額による企業活力の向上です。特許の取得件数や特許による利益額が大きい企業は、特に税制の恩恵を享受できるでしょう。もちろん、年間で取得・開発する特許やソフトウエアの件数が少なくても、所得控除ができますので、イノベーションボックス税制を積極的にご活用ください。
今後も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。