公認会計士事務所におけるAIのユースケースと活用時の注意点について<President’s Report vol.22>

株式会社ビズアップ総研 代表取締役
吉岡 高広

いつも弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
今回は、公認会計士事務所におけるAIのユースケースと活用時の注意点についてお話したいと思います。

公認会計士事務所におけるAIのユースケースには、生成AIを活用した文章ドラフト生成や経営分析の支援などがあります。たとえば、金商法に基づく有価証券報告書や決算説明会資料の作成にあたっては、ストーリーや構成のアイデアを提案してくれる生成AIを活用することで、作業効率が向上します。また、生成AIがプロンプト(生成AIに対する命令や質問)に基づいて文書の型を作成することで、文章作成の自動化範囲を広げられるでしょう。

一方、経営分析の支援では、生成AIを活用すれば、定量的な売上分析結果にクライアントの定性情報を結びつけ、要因や背景を加味した分析結果を出すことができます。分析結果は金商法や会社法に準ずる法定監査だけでなく、経営戦略サポートや事業再生コンサルティングといった事務所独自の事業を展開するうえでも役にたつでしょう。

公認会計士事務所におけるAIのユースケースはこれだけではありません。大手監査法人のなかには、独自開発したAI監査ツールを活用する事例もみられます。
実際、EY新日本有限責任監査法人は、東京大学大学院と連携し、AIを活用した財務分析ツール「WebDolphin/TBAD」や会計仕訳データから異常を検知する「General Ledger Anomaly Detector(GLAD)」などを開発し、実用化しています。
また、有限責任あずさ監査法人は生成AIを活用した監査向けソリューション「AZSA Isaac(あずさアイザック)」を開発。2023年8月から法人内での使用を開始しました。

このように、公認会計士事務所では、生成AIを含めAIの幅広いユースケースが想定され、AI監査ツールの実用化も進んでいます。ただし、AIを効果的に活用するのは容易ではありません。AIを公認会計士の主幹業務である監査業務に導入するにあたっては、さまざまな課題があります。

たとえば、AIによる監査を導入しても、データ分析結果だけに基づいてクライアントに指摘や改善提案するのは難しいのが実情です。そのため、データ分析で抽出した取引や事業行為の適否については、クライアントへのインタビューや書類の閲覧などによって、判断しなければならないでしょう。

また、AIを監査業務に利用するようになると、データの良否の判断基準が必要です。
それを踏まえ、各データが分析材料としてふさわしいかを監査人が判断したうえで、AIに指示しなければなりません。つまり、適切なデータリテラシーとデータの運用能力が監査人に求められるというわけです。

これらの課題は、一朝一夕では解消できません。
ぜひ組織内でのデジタル人材の確保を進めて解決を図りましょう。

当社では今後も、会計・税務のコンテンツや最新情報を提供して参りますので、
是非、ご活用いただければと思います。

今後も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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