少額訴訟の活用【後編】<企業経営者へのアプローチに役立つ法律講座 第8回>
鳥飼総合法律事務所 弁護士
佐藤香織
2021/11/17
第8回 少額訴訟の活用【後編】
1 少額訴訟を自分で提起する方法
今回は、自分で少額訴訟を起こすときにはどうするか、をご説明します。
①どの裁判所に訴えを起こすのか?
これには、「管轄裁判所」という考え方があります。
裁判は、どこの裁判所にでも起こせるのではなく、こういう事件ではこの裁判所に裁判を起こすということが法律で決められているのです。
少額訴訟は、原則として、裁判の相手方の住所地を管轄する簡易裁判所が、管轄裁判所となります。相手方が会社であればその会社の本店所在地、相手方が個人であればその個人の住所地を管轄する簡易裁判所です。
裁判所のウェブサイトには、裁判所の管轄区域が掲載されているので、どこに裁判所があるかを確認することができます。
②何を用意すればよいか?
裁判を起こすときに必要なものとしては、以下があります。
これらを一式そろえて、管轄の簡易裁判所に郵送するか持参して提出します。
✔ 訴状
✔ 申立手数料
✔ 郵便切手
✔ 添付書類
まず、「訴状」とは、裁判を起こすときに必ず必要になる、基本の書面です。
自分でイチから作るのは大変かもしれませんが、各地の簡易裁判所には、訴状の定型用紙が備え付けてありますので、裁判所に行けばもらってくることができます。また、裁判所のウェブサイトからダウンロードすることもできます。
訴状は、同じ内容で「正本」と「副本」とを用意します。正本は裁判所用であり、副本は相手方(被告)用です。
そして、金銭請求の根拠となる書類を、訴状と一緒に「証拠」として提出することもできます。例えば、売買契約書、金銭消費貸借契約書、請求書などの書類や、メールやLINEでの金銭についてのやりとりの記録など、自分の請求の裏付けとなる資料を、「証拠」として書面で提出します。
次に、「申立手数料」とは、裁判所に納める手数料のことで、収入印紙で納めます。申立手数料の額は、訴状に記載する請求額に応じて変わりますので、管轄の簡易裁判所に問い合わせるのが確実です。少額訴訟が提起できる上限の金額(60万円)を請求する場合の申立手数料は、6000円です。
「郵便切手」は、裁判所が相手方(被告)に書類を送るために使うもので、裁判所に決められた額の郵便切手を提出します。郵便切手は、被告が何名かによっても異なりますので、これも、管轄の簡易裁判所に問い合わせるといいでしょう。
最後に「添付書類」については、当事者が法人であれば、会社の登記事項証明書など必要になります。
2 判決をもらった後に大事なこと
少額訴訟を提起して、簡易裁判所が判決を出し、原告の主張が認められた場合でも、相手方が判決に従ってすんなり支払いをしてくれるとは限りません。
そういうときは、少額訴訟の判決の内容を実現するために、強制執行という別の裁判手続きの申立てが必要となる場合もあります。
裁判は、弁護士に依頼しなくても、本人である会社や個人が対応することは制度上は可能ですが、訴訟が終わった後のことなども含めて裁判に関することは、なかなか理解が難しいことも多く、また、自分だけでは思ったような効果が上がらないこともあります。
まず法律の専門家に話を聞いてみることもお勧めします。