立体的形状からなる商標2<経営戦略のための知財Vol.24>

特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建

2022/4/8

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.101(2022.3)に掲載されたものです。

知財におけるマーケティング戦略⑨


ブランド戦略 9
【立体的形状からなる商標2】
立体的形状からなる商標につき、最近話題となっている事例をご紹介します。明治製菓の「きのこの山」(下図①)と「たけのこの里」(下図②)の立体商標です。

「きのこの山」が、有名なアポロチョコにスナック要素を加えて新たに発売がされたのが1975年。その当時は立体商標制度もなく、また、前回ご紹介したように立体的形状のみの商標(色彩はついている)は認められにくいこともあり、「きのこの山」は2015年に一度出願されましたが登録は認められず、その後すぐ2017年に再度出願し、2018年には登録がされています。

一方、「たけのこの里」は1979年に発売が開始され、2018年に商標登録出願、2021年には登録がされています。明治製菓主催で3年にわたって「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙」が開催され、2020年からは「きのこの山・たけのこの里 国民大調査」として2つのスナック菓子を競わせたことが話題になりました。

両商標の登録がメディアで報道されたことによって、商標の広告宣伝機能が発揮されました。他社による類似菓子の販売の未然防止にもなり、商標登録が両商品の価値を高めるブランド戦略となっています。

商標の大きさは登録の際に問題になりません。そのため、建築物の外観も立体商標で保護される対象です。下図③の建築物は何かお分かりになりますね。東京お台場にあるフジテレビ本社の建物です。このように、建築物自体でどの会社の建物かが分かるという識別力を有していれば商標登録をすることが可能です。

一般には、建築物自体で商標権を取得するためのハードルは高く、そのため立体的形状に文字を加えて商標出願をすることが多くなります。下図④のガソリンスタンドの屋根部分は、「Mobil」の文字が入った立体商標になります(浅村特許事務所が出願代理事務所です)。この商標の場合、文字が付された商標でないと、どの会社の建築物かを識別することは困難だからです。

これまで説明してきたように、形状のみでは商品やサービスの識別力が発揮できないと判断される場合であっても、商標が商品やサービスと密接に結びついて出所表示機能を持つに至ること、いわゆる使用による特別顕著性を調査などで証拠として提出できれば、登録が認められる可能性があります。登録が認められれば、周知性が高い商標といえます。これは、ブランド価値を有する商標であることを特許庁が認めた、ということになります。

下図⑤の「ルービックキューブ」も使用による特別顕著性を立証した結果、立体商標として登録が認められています。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

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