2023年度税制改正 ~株式交付税制とスピンオフ税制~<深読み 最新税制レビューVol.1>

佐藤信祐事務所 所長 公認会計士・税理士 博士(法学)
佐藤 信祐 先生

2023/1/26
業界屈指の専門家である佐藤信祐先生が、さまざまな税制や組織再編等に関する新しい論点・最新情報、少しマニアックな税務トピック、判例裁決事例など、独自の視点で解説します。

2023年度税制改正では、株式交付税制とスピンオフ税制が改正されることが予定されている。まず、株式交付税制の対象から、株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く。)に該当するものが除外されることになった。これは、M&Aの手法として導入された株式交付制度が、資産管理会社に事業会社の株式を集約する手法として利用されているという批判があったためであると考えられる(「株式交付で『私的節税(2022年9月5日日経新聞)』」)。

そして、スピンオフ税制については、2023年4月1日から2024年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認可を受けた場合には、現物分配の直後に完全子法人の発行済株式総数のうち20%未満を保有していたとしても、スピンオフ税制の対象に含まれることになった。

現行法上、株式交付税制は租税特別措置法に規定されている。一方でスピンオフ税制は法人税法に規定されているものの、前述の特例は租税特別措置法に規定されるであろう。法人税法に規定されないのは、組織再編税制の枠組みに入れることができないと思われるからだ。そのため、以下では、その理由について検討したい。

まず、株式交付に似た制度として株式交換がある。株式交換税制は、①子法人の株主の個別意思とは関係なく株主としての地位を失い、かつ、②株式取得を通じて子法人の事業、資産を実質的に取得することから、株式交換と合併が同様の効果が得られる取引であるという理由で、組織再編税制の枠組みに入れられた(『平成18年度改正税法のすべて』298-299頁)。つまり、株式交付が前述①②のいずれにも該当しないことから、組織再編税制の枠組みに入れることができなかったと考えられる。

スピンオフ税制が認められたのは、グループ最上位の法人の実質的な支配者はその法人そのものであることから、その法人自身の分割型分割や完全子法人株式の現物分配については、移転資産に対する支配が継続していると認められるからである(『平成29年度税制改正の解説』317-318頁)。そうなると、子会社株式の一部を保有し続ける現物分配を導入するための理屈をつけることが難しく、当面の間は租税特別措置法による対応にしたものと考えられる。

ただし、租税特別措置法にこのような特例が長く定着することは、組織再編税制が理論通りに整備されていないということになるため、中長期的には組織再編税制の抜本的な見直しが必要になると考えられる。

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