標準文字商標、図形商標について<経営戦略のための知財Vol.19>

特許業務法人 浅村特許事務所
会長・弁理士 金井 建

2021/11/12

M&A、経営戦略、融資判断などで知的財産の占める割合が高まる中、その経済的価値を把握することは企業にとって必須です。そこで、業務に最適な知的財産価値評価サービスを提供している浅村特許事務所の金井建先生が、経営に役立つ知財の活用法について解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.96(2021.10)に掲載されたものです。

知財におけるマーケティング戦略④


標準文字商標
迅速な審査を希望し、文字のフォントや装飾、図形との組み合わせ等が決まっていない場合であって、とりあえずネーミングでの権利を確保したい場合があります。この場合、特許庁が指定する文字書体で商標表示する「標準文字」で出願し、権利を取得することができます。文字フォント等を付した商標はそれが決まってから、必要に応じて別に出願することも、特にハウスマークや主力商品の名称の権利化の観点から有効な手段となります。

前回紹介したトヨタレクサスのプラグインハイブリット車「NX450h+」は、標準文字として商標登録されています。

図形商標
写実的なものの図案化や、幾何学的模様等から構成される商標です。図形商標の例として、ヤマト運輸などを保有するヤマトホールディングスの商標をご紹介します。

下の左図は、1962年にヤマトホールディングスがクロネコマークで初めて登録した商標です。親猫が子猫をくわえている図形商標ですね。この当時は、商標出願に役務(サービス)の指定ができない時代でした。そのため、彫刻や印刷物等を指定商品として登録がされています。

下の右図が、良く知られているクロネコマークになります。楕円内をヤマトホールディングスのイメージカラーで着色してありますので、クロネコの親子がより認識できる商標となり、ヤマト運輸の宅急便であることが一目で分かるブランドマークです。




横道にそれますが、「宅急便」の文字をデザインしたマークは、宅配便サービスを開始した1976年に出願し、1979年に登録されています。斜体を用いていることや、「急」の文字の「心」部分を“走る足”にしているのは、自宅に急いで届けることを表すためでしょう。



普通名称化
ジブリ映画の「魔女の宅急便」が「魔女の宅配便」でないのは、この児童文学の原作者が宅急便を一般的な名称と勘違いして題名を付けたためであることは有名です。上映にあたりヤマトホールディングス側への配慮から、(株)スタジオジブリは、初上映された年と同じ1989年に「魔女の宅急便」を商標登録出願し、1992年に登録がされています。

「宅急便」は、ヤマトホールディングスが創作した名称であって、貨物車による配送等の一般的な名称は、宅配便です。しかし、宅配便サービスの意味で「宅急便」を使用する者も多く、そのため宅急便は一般的な名称になりつつありました。商標名が商品やサービス自体を表す一般的な名称と認識されてしまう現象を、普通名称化といいます。

しかし、会社側も普通名称化を避けるための対応を行っています。普通名称化すると、ヤマトホールディングスのサービスかどうかが分からなくなり、識別力を消失し、ブランド的価値も消失してしまうからです。

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