特定新規設立法人の判定は意外と簡単です<事業承継レポートVol.26>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬

2022/4/22

このコラムでは、『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』など多数の著書を持つ白井一馬先生が、事業承継に関する話題のトピックスなどを取り上げ、皆様にご紹介します。 
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.101(2022.3)に掲載されたものです。

特定新規設立法人の判定は意外と簡単です


同族会社を経営するオーナー株主が資産管理会社を設立する場合や、新たに子会社や孫会社を設立する場合には、特定新規設立法人に該当するかどうかの判定が必要になります。特定新規設立法人に該当すると設立初年度から納税義務が生じることになります。

新設の会社に設立初年度から消費税の納税義務があるケースとしては、まず間違えることがないのは資本金1千万円以上で設立された場合のほか、課税事業者を選択したときでしょう。資本金をいくらにするかは消費税の納税義務を考えて決めているのが実務でしょう。また課税事業者を選択するのは設備投資等があり還付を受けるためです。これらについてミスをすることは少ないでしょう。なお、他に相続や合併の特例が適用される場合がありますが今回は割愛します。

これら以外で、設立初年度から納税義務が生じるケースとしては特定新規設立法人に該当する場合です。つまり設立時の資本金1千万円未満でかつ課税事業者を選択していない場合が前提になります。

特定新規設立法人の条文は難解です。ある株主(法人か個人かを問わない)とその親族、さらにこれらの者が完全支配する法人によって直接・間接的に50%超を支配される新設の会社で、判定対象となった直接の株主の課税売上高が5億円を超える場合はもちろん、これらの株主が完全支配する子会社・孫会社の課税売上高が5億円超である場合も、新設の会社は特定新規設立法人に該当することになります。

一番分かりやすいのは課税売上高5億円超の親会社に50%超を支配される新設の子会社です。

また、5億円超の課税売上がある会社を完全支配する株主が新設した会社も特定新規設立法人に該当することになります。つまり新設の会社とは兄弟関係にある別会社の課税売上が5億円超の場合です。

複雑な例では、たとえば株主Aが、自分が出資するだけでなく、親族や、自分と親族で完全支配している会社に出資させて、直接・間接的に50%超を支配する会社を設立したとします。これらの法人・個人のなかに課税売上高が5億円超の者がいれば新設の会社は特定新規設立法人に該当しますが、それだけではありません。これらの者がさらに別に完全支配するB社(B社は新設の会社の株式は保有していません)に5億円超の課税売上高があると、新設の会社は特定新規設立法人に該当することになります。

具体的に、新設の会社を担当することになった税理士は、どうやって特定新規設立法人に該当するかどうかを判定すればよいでしょうか。判定方法は意外と簡単です。

まず、新設の会社を直接・間接的に50%以上支配するすべての株主に5億円超の課税売上があるかを確認、なければ次にこれらの株主が直接・間接的に完全支配する会社の中に課税売上高が5億円超の会社が存在するかを確認します。つまり「株主様、あなた、あるいはあなたが100%支配する会社のなかに課税売上5億円超の会社はありますか?」この問い合わせで、自社が特定新規設立法人に該当するかが判定できるということになります。これを条文化すると難解になってしまうのが税法の面白いところです。

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