会計事務所にとっての特化型戦略<深読み 最新税制レビューVol.12>

佐藤信祐事務所 所長 公認会計士・税理士 博士(法学)
佐藤 信祐 先生

2023/12/22
業界屈指の専門家である佐藤信祐先生が、さまざまな税制や組織再編等に関する新しい論点・最新情報、少しマニアックな税務トピック、判例裁決事例など、独自の視点で解説します。

私が独立してから約20年が経過したが、その頃に比べると、会計士業界、税理士業界は大きく変わったように思われる。20年前であれば、マーケティングやブランディングの重要性が強調されていたが、10年くらい前から業務特化、業種特化が強調されるようになった。

さらに、最近では、会計事務所の巨大化が進んでいるように思われる。平成18年頃に、ある老舗の会計事務所の所長と話す機会があり、「正社員を雇うと効率が悪くなるから、絶対に正社員は雇わない」といったところ、「それは正解だ」という返事をもらった。どうやら、正社員が100人を超える会計事務所の所長達には、100人を超えて初めて効率的に仕事ができるようになったという認識があるようである。さらに、ここ20年でITが進化したこともあり、1人事務所の効率性が高まっていることから、規模の経済が生じるタイミングは、300人、500人と引き上げられている可能性がある。

このように、今後の会計事務所は、巨大事務所と零細事務所の二極化が進んでいくと考えられる。巨大事務所からすれば、小さな仕事だけを集めて効率的に仕事ができるようにするか、あらゆる業務に対応できるように隙のない体制を整えておくのかのいずれかを選択することになるだろう。

零細事務所からすれば、業種を特化することで仕事を獲得しやすくするか、業務を特化することで強みを作っていくかのいずれかを選ぶことになるだろう。業種の特化としては、医療法人、建設業、飲食業などが挙げられ、業務の特化としては、組織再編、M&A、相続、事業承継、国際税務などが挙げられる。

このうち、業種の特化については、私よりも詳しい人が多いであろうから、業務の特化についてコメントをしたい。意外に思われるかもしれないが、私の事務所は「組織再編」に特化したという典型的な失敗事例であると感じている。自分でもどうしてこうなったのかは分からないが、売上を上げることよりも、良い本を作ることを優先してしまったのが原因ではないかと感じている。

本来であれば、独立する前にFAS業務を2~3年経験することで、組織再編税制を理解しているFASの専門家を目指すべきであった。組織再編は、M&Aや事業承継の道具にはなり得るが、それ自体が目的にはなり得ないからである。このように、所得の最大化を目標にするのであれば、業務の特化はビジネスに合致する形で行う必要がある。

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