複雑さを増す消費税 税理士の存在価値高める好機に
<今月の気になる税務トピック Vol.45>

『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.149(2026.3)に掲載されたものです。


白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

無限連帯責任の恐怖

豊橋市の税理士法人の法人口座から約2,600万円を横領したとして、業務上横領の疑いで逮捕された代表社員が、名古屋地検豊橋支部に送検された。報道によれば、使途不明金は2018年以降だけでも15億円以上に上るという(「羽振り良かった」外車売却し一部返済も…豊橋の税理士法人「タックスワン中部」代表を送検 2,600万円横領容疑 東愛知新聞Web 2026年1月14日)。

代表社員による使途不明の送金に他の社員が気付き、告訴に至ったのだと推測される。会計上は貸付金として処理されていたようだ。報道内容を見る限り、税理士法人には借入金も存在するようである。このような場合、代表社員個人の問題にとどまらない。税理士法人は社員が無限連帯責任を負う仕組みであるため、他の社員にとっては人生を失う恐怖がある。今回の事案は、税理士法人の無限連帯責任の重さと怖さを改めて認識させられた。

税理士泣かせの消費税

還付スキームとそれを防ぐ度重なる税制改正により、消費税は年々複雑化している。それに加えて最近はインボイスの処理も加わる。税理士の賠償事例でも消費税が最多とされ、「税理士泣かせ」の税目として、新聞記事でも頻繁に取り上げられている。直近でも、日本経済新聞が「消費税制が年々複雑になっていることもミスが多い要因とみられる。23年には適用税率を正確に把握する目的でインボイス(適格請求書)が導入され、併せて中小企業や取引先向けの特例も始まった。26年度税制改正では特例を一部変更したうえで延長する予定だ」としている(消費税は税理士泣かせ ミスで賠償、税目別最多の年300件 食品2年間ゼロなら増加も 2026年2月18日 日本経済新聞)。

この記事では、さらに、与党が衆院選の公約に掲げた「食料品の消費税ゼロ(2年間)」が実現すれば、「ミスをする税理士が増えるのではないか」との声も紹介されている。

しかし、消費税の申告件数は年間約460万件。申告誤りが表面化していないものもあるだろうが、ミスが露見し賠償請求にまで至る事例が年間300件程度であることを考慮すれば、「いかに税理士が正確に処理しているか」ということを物語っている。税制の複雑さは税理士の存在と切り離せない。主税局が複雑な条文を作るのは、税理士と申告ソフト業界が実務を支えることを前提にしている。消費税が「税理士泣かせ」であると同時に、税理士の存在価値を高めている。

2割特例と基準期間の課税売上高

「税務通信3882号 2026年01月05日 ショウ・ウインドウ 消費税」より。

2割特例は、インボイス登録しなければ免税事業者だった納税者の救済措置なので、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることが要件だ。

インボイス制度は令和5年10月開始なので、令和5年分の消費税の申告書には10月から12月の3か月分しか記載がない。つまり令和7年分の適用可否の判定にあたっては、1月から9月末までの課税売上を含めて判定することが必要だ。つい失念することがないよう意識しておく必要がある。

白井 一馬

しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。

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