「貸付用不動産」に5年縛りを導入<今月の気になる税務トピック Vol.43>
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.147(2026.1)に掲載されたものです。
白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生
貸付用不動産の評価方法の見直しが明らかになった。現時点では税制改正大綱において言及されるかは不明だが、改正内容としては、相続・贈与前5年以内に取得した「貸付用不動産」を、取得価額を基準で評価するというものだ。令和6年の居住用区分所有マンションの補正率導入は全般的な評価の改正だったが、今回の改正は課税時期前5年以内に限った節税防止が目的だ。事前の報道では、相続直前に21億円の賃貸マンションを購入し、通達評価で4.2億円に圧縮したという典型的な節税に対処する改正を示唆されていたところだ。
この改正はバブル期に存在した旧措置法69条の4の3年縛りの取得価額課税を現代的に再設計したものだ。旧69条の4は昭和63年、過度な節税対策への対抗として導入されたが、バブル崩壊後の地価急落に耐えられず、平成8年に廃止された。取得価額と時価が逆転することによる違憲性が問題になったのだ。
今回の制度はその弱点を補強している。
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1.対象を貸付用不動産だけに限定
2.期間は3年から5年へ
3.地価変動の補正と償却の反映を考慮
4.80%の安全性を設ける
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改正案が掲げる「貸付用不動産」とはどこまでを指すのか。新築後、賃貸前に贈与するときは改正の範疇になるのか。将来貸し付けることが合理的に想定される物件は未賃貸でも対象になるのか。「明らかに貸し付けることが想定されない建物を除く建物」というような通達改正になれば制度の射程は広がる。建物の構造、融資の種類、事業計画書、業者の提案書などから貸付目的を推定され、取得価額課税の対象に組み込まれるのだろうか。
今回の改正は富裕層の節税不動産を想起させるが、地方の土地持ち高齢者向けに量産されてきた大東建託・レオパレス型のアパート建築モデルも対象になり、既存の更地に新築アパートを新築すると建物は取得価額評価になる。
さらに、評基通185での3年縛りとの関係はどうなるだろうか。非上場株式の純資産評価では、課税時期前3年以内取得の不動産は用途を問わず実勢価額(or帳簿価額)で評価される。つまり、法人は不動産の用途不問であり、3年で縛られており、個人取得と法人取得では異なる取扱いになる。また法人取得の場合、土地建物の取得(新築)後、建物を賃貸の用に供した場合のように、取得時と課税時期の利用区分が異なることとなるときは、貸家の評価及び貸家建付地評価が認められている(東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(平成27年7月作成)「資産税審理研修資料」)。この点は大きな違いだ。
まとめると、節税・事業承継的観点から見た不動産の評価制度は次の4本立てになる。また貸付事業用宅地の小規模宅地特例も考慮することになる。
- 通常の路線価評価
- 居住用区分マンションの補正率
- 貸付用不動産の5年縛り(償却あり・取得価額80%)
- 法人取得不動産の3年縛り(時価評価、場合によっては貸家(建付地)評価あり)
- 3年内の新規貸し付けは貸付事業用宅地の50%減不適
相続直前の圧縮スキームが明確に封じられる一方、早期取得を促す誘因として働く側面もあるだろう。
白井 一馬
しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。
