通常改定に該当しないとして定期同額給与が認められなかった事例(週刊税のしるべ 令和7年9月8日 第3665号)<今月の気になる税務トピック Vol.40-2>

『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.144(2025.10)に掲載されたものです。
白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生
歯科医業を営む医療法人社団が、設立後最初の事業年度における理事長への役員給与についての改定は、開業の日から3月以内にされた定期給与の通常改定であり、開業の日が最初の会計期間開始の日と解されるから支給した役員給与は定期同額給与に該当すると主張した(令和6年8月1日付、非公開裁決)。
つまりこの法人は、開業日から3月以内に改定を行ったが、それだと事業年度開始日からは3月を経過した後に改定したことになる。
審判所は、開業の日が最初の会計期間開始の日であると解することはできないとして、各支給時期における支給額は定期同額給与に該当しないとした。会社が行った改定は、通常改定には該当しないと判断したわけだ。
設立後最初の役員給与の設定は売上や資金繰りの見通しができず、支給額の判断が難しいことがあるが、改定はあくまで会計期間開始の日から3月以内に行う必要がある。

白井 一馬
しらい・かずま/石川公認会計士事務所、 税理士法人ゆびすいを経て独立。『顧問税理士のための相続・事業承継スキーム発想のアイデア60』 『一般社団法人一般財団法人信託の活用と課税関係』『一般社団法人・信託活用ハンドブック』ほか 著書多数。