相続時精算課税で取得した財産に災害による被害があったときの再計算の特例<気になる税務トピックVol.12>

白井税理士事務所 所長・税理士
白井 一馬 先生

2023/5/26
『税理士のための相続税Q&A 小規模宅地等の特例』など多数の著書を持ち、研修講師としても活躍する白井一馬先生が、税理士業界注目のニュースや気になる話題をピックアップ。独自の視点も交えながら、コンパクトに紹介します。

相続時精算課税で取得した財産に災害による被害があったときの再計算の特例
令和5年度税制改正により、相続時精算課税で取得した土地建物について、贈与者に係る相続税の申告期限までに災害によって被害を受けたときは、税務署長への承認申請を経たうえで相続税の持ち戻し計算において再評価が認められるようになった(措法70の3の3、措令40の5の3)。

災害がなかったと仮定した評価額の10%以上の被害があることが要件だ(措令40の5の3③)。ただし保険金がおりた場合は保険金でカバーされた部分は被害とはみない。

災害で土地の評価が下がることはまれだし、建物も保険がおりると特例が認められないことが多いとなると、ほとんど使える事例はないと思う。

免除予定の債務を相続した時の課税関係は?
免除が予定される債務につき相続税の債務控除が認められず、相続後の債務免除に対し一時所得課税された事例がある(東京地裁令和5年3月14日判決)。

父親が債務16億円について銀行と訴訟、6億3千万円を支払えば9億7千万円を免除するとの和解が成立したが父親は返済することなく死亡した。配偶者は6億3千万円のうち100万円を残して死亡、息子が残り100万円を返済し9億7千万円の免除を受けた。税務署は9億7千万円について債務控除を認めず、さらに相続後に債務免除を受けた息子に一時所得課税を認定した。東京地裁は、二重課税に当たるとの納税者の主張を認めなかった。

たしかに父親が生前のうちに債務免除を受けたら一時所得課税があるし、債務をそもそも承継することはないのだから、税務署の処分と同じ税負担になる。とはいえ納税者としては、理屈はともかく常識感覚として受け入れがたいだろう。

一括売買した土地建物の按分
一括購入した賃貸用の土地と建物の契約書に記載された金額が著しく不合理であり建物の取得価額が高すぎるため、不動産所得について減価償却費が過大だと認定された事例がある(令和4年9月9日裁決)。

売買契約書では建物が固定資産税評価額を大きく上回り、土地はそれを下回っていた。裁決は「固定資産税評価額は一般的に適切な時価を反映している」と判断し、「売買代金総額を固定資産税評価額の比によりそれぞれあん分すべき」とした。

減価償却や仕入税額控除のために建物の金額を大きくした契約金額を買手が要望し、売り手には特に不利益はないということでそれに応えることはあるだろう。そう考えたら契約書の金額を無視して固定資産税評価による按分を行うべきなのかもしれない。そうはいっても契約書に記載されている金額を採用せずに別途按分計算をするのも勇気が必要だ。自分ならどうするか考えさせられる事例だ。

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