SDGs視点によるサプライチェーンの改善<中小・中堅企業のためのSDGs入門 Vol.9>

金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授
平本 督太郎

2022/2/18

このコラムでは、SDGsビジネスの第一人者である平本督太郎先生が、国際社会の共通目標である「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」について中小・中堅企業の【実践編】として戦略策定の考え方や事例をわかりやすくご説明します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.100(2022.2)に掲載されたものです。

「社会変化によって追い込まれない」ために
企業戦略でサプライチェーンを改善する①


さて、今回から、「社会変化によって追い込まれない」ための企業戦略として、SDGs視点によるサプライチェーンの改善というアプローチに注目します。社会ニーズが変化することで、企業は思いも寄らない脅威にさらされることになります。

それでは企業は今後どのような脅威にさらされていくのか? そのリスクの多くをSDGsは網羅しています。SDGsの17個のゴール、169のターゲットを読み込むことで、そうしたリスクを把握することができるでしょう。例えば、SDGs達成のための活動が始まった2016年から今までに表面化した企業経営に影響を与えた主要な要因を挙げると、海洋プラスチック、フードロス、脱炭素、パンデミック、生物多様性、人権、ジェンダーと業種や企業規模によって影響の度合いは異なりますが、多くの社会・環境要因が企業の経営そのものに変化を与え始めていることがわかります。特に、脱炭素やジェンダーといった課題は、今後その影響度合いを益々高めていくことでしょう。経営者にとって難しいのは、必ずしもそれが中小・中堅企業がこれまで管理してきた範囲での影響にとどまらないためです。自社が関わるサプライチェーン全体で変化が起こってきます。だからこそ、経営者はこれまで以上に視野を広げてリスクマネジメントをしていく必要があるのです。

さて、いま言及したリスクマネジメントという概念は、日本の経営者に誤解をされることが多くあります。リスクマネジメントとは、本来リスクを避けるためのものではなく、どこまでのリスクを取ることができるのかを冷静に判断していくことです。その際、リスクの大小自体も自社の行動で変化させ、時には他者のリスクを自社のチャンスに変換していくことが求められます。例えば、主要な取引先である大企業が上記の社会変化によるリスクに直面している場合に、そのリスクを下げる手法を持っている中小・中堅企業は取引を拡大でき、そうではない企業は取引が縮小されていくことになります。

それでは、SDGsの文脈において、戦略的にリスクマネジメントを行うにはどうしたら良いのでしょうか? リスクマネジメントには4つのポイントがあります。それは、①備える、②見極める、③下げる、④チャンスに変換する、の4つです。そして、①備える、②見極める、の2つには「対話」が、③下げる、④チャンスに変換する、の2つには「共進化」が有効です。

次回は、リスクマネジメントとしての「対話」について解説します。

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