既存事業を拡張する<中小・中堅企業のためのSDGs入門 Vol.6>

金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授
平本 督太郎

2021/11/19

このコラムでは、SDGsビジネスの第一人者である平本督太郎先生が、国際社会の共通目標である「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」について中小・中堅企業の【実践編】として戦略策定の考え方や事例をわかりやすくご説明します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.97(2021.11)に掲載されたものです。

「社会変化で機会を掴む」ための企業戦略で既存事業を拡張する②


今回は「②既存事業の拡張」アプローチの社会インパクトのアップデートについてお伝えします。前回の事業目的のアップデートにおいて、自分でも気づいていなかった既存事業の持つ可能性を表すフックを作るということをお伝えしました。しかしながら、自社の事業が様々な地球規模課題の解決に寄与する可能性があるということを主張するだけでは意味がありません。最悪の場合、SDGsウォッシュとして批判をされ、レピュテーションを損ねる可能性があります。SDGsウォッシュとは、実際にはSDGsに大きな貢献をしていないにも関わらず、あたかもそう見えるように誇張表現をする事を言い、最近ではSDGsをプロモーションの一部としてしか見ていない企業に対する風当たりは非常に強くなっています。もともとSDGsウォッシュはホワイトウォッシュという粉飾決算を表す用語から来ており、同じようにSDGsについて不正をしている企業だと判断されているのです。そのため、SDGsに貢献しようとしているのに、逆に批判されるようになってしまわないように気をつけないといけません。

それでは、どうすれば良いのか? それが社会インパクトのアップデートです。具体的には、小さな規模でも良いので、科学的に自社の事業が有する新たな課題解決の可能性を実証することが必要です。それは中小・中堅企業にとって自社単独ではなかなか対応ができないと対応を後回しにしがちな取り組みでもあります。そこで重要になってくるのがパートナーシップです。自治体・大学でもSDGsの取り組みは大きく広がってきています。例えば、自治体の中でも自らの信用力や調達力、ルール構築能力を活用し、SDGsに関する民間の動きをサポートする自治体が増えてきています。大学でもSDGsに関連する研究を行う研究者が増えてきています。こうした組織とパートナーシップを組むことで、自社の事業の可能性をしっかりと示せるかどうかが、SDGsの先進企業となるのか、SDGsウォッシュ企業になるのかの境目となります。「貴社はSDGsの達成に必要な変容を起こし続けていますか?」という質問にYESと答えられる企業こそが社会から高く評価される時代になったのです。

例えば、前回ご紹介した廃棄瓦をリサイクルし道路舗装材事業を展開しているエコシステムにおいては、平成30年度小松市産学官共同研究促進事業の活用により、金沢工業大学工学部環境土木工学科と、小松製瓦株式会社との三者で研究グループを組成し、廃棄瓦を有効利用した緑化コンクリートの実証実験を実施しました。そして、ヒートアイランド現象の抑制効果、緑化駐車場での実用化検証を行い、その有効性を示したのです。その結果として、国内だけではなく、海外展開を加速させることができるようになりました。客観的で科学的な根拠を有する取り組みは政府や自治体、国連等の国際機関が安心して応援できる取り組みでもあります。そして、こうした信用力を有する機関が後押ししてくれることで、様々な良質な引き合いが集まってきて、結果としてビジネスチャンスの増大につながるのです。次回は、チャネルのアップデートについて解説します。

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