【最終回】第2会社方式<深読み 最新税制レビューVol.16>

業界屈指の専門家である佐藤信祐先生が、さまざまな税制や組織再編等に関する新しい論点・最新情報、少しマニアックな税務トピック、判例裁決事例など、独自の視点で解説します。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.127(2024.5)に掲載されたものです。


佐藤信祐事務所 所長・公認会計士・税理士・博士(法学)
佐藤 信祐 先生

第2会社方式

債務超過の子会社に対する支援の手法として、第2会社方式が検討されることがある。第2会社方式とは、子会社の資産とそれに相当する負債を受皿会社に対して譲渡し、残った子会社の負債を清算により切り捨てる手法である。

法人税法上、子会社に対する債権放棄又は債務引受に係る損失が寄附金に該当した場合には、損金算入限度額を超える部分の金額は損金の額に算入することができない(法法37①)。そして、東京地判平成29年1月19日TAINSコードZ267–13038では、和解型の特別清算であることを理由として、第2会社方式により生じた貸倒損失に対する法人税基本通達9–6–1(2)の適用を認めずに、同通達9–6–1(4)又は9–4–1で判断すべきものとした。ただし、本判決を参考にするにしても、実務上は、同通達9–6–1(4)を適用するハードルが高いことから、同通達9–4–1により判断せざるを得ない事案が多いはずである。

これに対し、子会社との間に完全支配関係がある場合には、親会社において寄附金になったとしても、子会社において受贈益の益金不算入が適用されることから(法法25の2①)、子会社の繰越欠損金は減少しない。そして、子会社の残余財産の確定により、当該子会社の保有する繰越欠損金が法人株主である親会社に引き継がれるため(法法57②)、寄附金として認定されても不都合がない場面も多いのかもしれない。

しかしながら、第2会社方式の主目的が親会社の税負担を減少させることであり、事業目的が十分に認められない場合には、同族会社等の行為又は計算の否認(法法132)が適用されるかどうかについても検討が必要である。

この点につき、適格合併の事案ではあるが、東京国税不服審判所裁決令和2年11月2日TAINSコードF0–2–1034では、事業単位の移転でないことを理由に包括的租税回避防止規定(法法132の2)が適用されており、大阪国税不服審判所裁決令和4年8月19日判例集未登載(大裁(法・諸)令4第5号)では、他の法人への繰越欠損金の付替えであることを理由に包括的租税回避防止規定が適用されている。このうち、前者の見解に立てば、事業単位の移転があり得ない残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎについては、同族会社等の行為又は計算の否認は適用されるべきではないということになるが、後者の見解に立てば、繰越欠損金の付替えと認められる残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎであれば、同族会社等の行為又は計算の否認が適用されるべきということになる。

この点については、これらの裁判が確定することにより、明らかになると考えられる。

佐藤 信祐

さとう・しんすけ/平成11年朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入社。 同13年/公認会計士登録、公認会計士・税理士勝島敏明事務所(現デロイトトーマツ税理士法人)入所。 同17年/税理士登録、公認会計士・税理士佐藤信祐事務所開業。同29年/慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了(博士〈法学〉)。 組織再編における会計・税務に係るコンサルティング業務に従事。

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