個人情報保護法はどういう法律か<企業経営者へのアプローチに役立つ法律講座 第1回>

鳥飼総合法律事務所 弁護士
佐藤香織

2021/7/17

第1回 個人情報保護法のエッセンス【前編】

1 はじめに~この講座はどんな講座?

今回から、士業の皆さんが、企業経営について社長や幹部と話をするときに役に立つ基本の法律を取り上げ、その法律のエッセンスをお伝えする講座をスタートしま す。
皆さんの法律へのイメージは、どういうものでしょうか?
まずあがるのは、「難しい」「わからない」ということではないでしょうか?
そうはいっても、企業経営をしていく上で、避けては通れないのが法律です。近頃は、「コンプライアンス」があちこちで言われるようになっています。大企業だけ ではなく、中小企業でもそうなのです。そういう時代が来ています。
そこで、企業経営に関わる法律はたくさんありますが、毎回、ある法律に焦点をあてて、できるだけわかりやすく解説いたします。
士業に限らず、企業経営者や法務・総務担当の方々でも興味を持っていただける講座となるといいなと思っています。
第1回目のテーマは、「個人情報保護法」です。

2 個人情報保護法はどういう法律か

「個人情報」、「個人情報保護法」などは、皆さんもご存じの言葉ではないでしょうか。
でも、その内容をきちんと知っている、という方は少ないかもしれません。

⑴個人情報保護法が適用されるのは誰?
個人情報保護法が適用されるのは、個人情報を取り扱うすべての事業者です。
「事業者」には、株式会社、有限会社などの会社はもちろん含まれます。
また、会社ではなく、個人事業主といわれる個人も、事業をしていますので、「事業者」に含まれます。
一方で、事業をしていない個人は、個人情報保護法は適用されません。

⑵取り扱う個人情報の量が少なければ、個人情報保護法の適用は除外される?
取り扱う個人情報が数名分だけ、というように、個人情報の量が少なくても、個人情報を取り扱っている事業者であれば、個人情報保護法が適用されます。

⑶そもそも「個人情報」とは何を指す?
「個人情報」の定義は、個人情報保護法で定められています。その条文を引用してみましょう。

(定義)
第2条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ 。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することがで きることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの
(以下略)
この条文のポイントだけを簡単に説明すると、「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報であって、下記の(A)か(B)のいずれかに該当するもの」をいいま す。
(A) 氏名、生年月日などにより特定の個人を識別することができるもの
(B) 個人識別符号が含まれるもの

まず、(A)について、氏名や生年月日が個人情報だということはわかりやすいですね。
では、住所や電話番号はどうでしょうか?
これら単体で、特定の個人を識別することができれば、個人情報に当たります。また、単体ではわからなくても、他の情報と容易に照合することで特定の個人を識別 することができる場合は、その情報全体が個人情報に当たります。
企業が持つ個人情報として、まず、顧客情報が頭に浮かびます。顧客情報の中で上記に当たるものは個人情報です。注意しなければならないのは自社の従業員の情報 です。これも、上記の定義に当たれば個人情報です。

次に(B)については、DNAや顔などの、身体の一部の特徴を電子的に変換した符号や、パスポート番号、基礎年金番号、免許証番号、マイナンバーなどのサービス利 用などのために公的に割り振られる符号を指します。

次回は、個人情報保護法のエッセンス【後編】をお送りします。

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