会社の役員変更のときに覚えておきたいこと<企業経営者へのアプローチに役立つ法律講座 第5回>

鳥飼総合法律事務所 弁護士
佐藤香織

2021/10/20

第5回 会社の役員変更のときに覚えておきたいこと【前編】

1 会社の役員を変更したときに必要なこと

今回は、会社の役員の「登記」がテーマです。
会社の役員の任期が満了したときは、同じ人が続投したり、別の新しい役員を選任したりします。
あるいは、役員を増員することになったので、新しい役員を選ぶという場合もあります。
いずれにせよ、会社の役員が変更したとき、具体的には、

✓任期満了後に直ちに再任した場合(重任)
✓任期満了により退任した場合
✓辞任した場合
✓新たに選任した場合

には、法人の役員変更の登記申請を行うことが必要です。

登記の話に入る前に、まず、役員の任期について確認しておきましょう。
法人には、株式会社、合同会社、社団法人、財団法人など様々ありますが、ここでは、株式会社について説明します。
株式会社の取締役、監査役などの役員には、任期があります。
取締役の任期は、会社法では、原則として、「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法332条1項本文)と定められています。
また、監査役の任期は、「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法336条1項)が原則です。
「取締役の任期は2年」と覚えている方もおられるかもしれませんが、厳密には任期は単純に丸2年(365日×2年)ではありません。取締役や監査役は株主総会で選ばれるので、その株主総会が終わるまでを前任者の任期とすることになっています。これを法律の文言にすると、上記のような少し面倒な言い回しになってしまうというわけです。

上記で「原則」と言ったのには理由があります。任期には別の定めがあるのです。
皆さんの中にも、「あれ?うちの会社の取締役の任期は10年だったはず?」と思った方もいるでしょう。
この例外は、取締役と監査役の任期について、一定の株式会社(※)では、
定款で、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸ばすことができるのです(会社法332条2項、336条2項)。

※一定の株式会社=株式会社が発行する株式の全部または一部につき、株式の譲渡の際に株式会社の承認を要すると定款で定めている株式会社

2 登記がなぜ必要か
 
 会社法は、取締役の氏名、監査役の氏名などの一定の事項に変更が生じたときは、登記しなければならないと定めています。
 そして、この登記はいつ申請してもよいのではなく、登記すべき期間が法律で定められています。
株式会社の役員変更登記の場合は、登記の事由が発生した時から2週間以内に、本店の所在地において、変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。
 では、登記すべき期間内に登記を怠ったら、どうなるでしょうか?
その期間が経過した後に登記申請をする場合であっても、期間を過ぎたことだけをもって申請が却下されることはありません。
しかし、期限後に登記をしたとしても、当該会社の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があるのです(会社法976条1号)。
実務上は、2週間を過ぎたらすぐに、すべての会社に対して過料が課されるというものではないようですが、法令で過料に処すると定めているのですから、できるだけ期限内に登記申請を行うようにしましょう。

 
次回は、“会社の役員変更のときに覚えておきたいこと”の【後編】です。

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