税理士の義務と禁止事項(新米税理士のための自己啓発ガイド Vol.2)
税理士法人SBL
八木 正宣
2021/7/16
税理士には、国の租税システムの一端を担う重要な役割が与えられています。税理士業務は、たとえ無償であったとしても、他人の税務申告書の作成や税務相談を受けることはできません。このような独占的排他的な権利が認められている代わりに、禁止行為や義務が規定されています。以下で代表的なものを見ていきましょう。なお、税理士法が順守されているかどうかについて、所属税理士会や税務当局の調査が実施されていますので、普段から気を付けておきたいところです。
1.禁止事項
・脱税相談等の禁止(法36)、信用失墜行為の禁止(法37)
税理士の肩書は、それをもって納税者に信頼を与えるものです。脱税に関与したり、自己脱税や業務懈怠など信頼を失うよ うな行為はしてはいけません。
・非税理士に対する名義貸しの禁止(法37の2)
税理士でない者(例えば記帳代行業者)が実質的に税務申告書まで作成し、税理士が署名のみ行うことは禁止されています 。
・2か所事務所設置の禁止(法40③)
税理士は税理士業務を行うことができる事務所を一つのみ持つことになります。無制限に事務所を設けると、税理士でない 者が税理士業務を営むことを防止するための規制です。
2.税理士の義務
・税務代理の権限の明示(法30)、税理士証票の提示(法32)
税理士が税理士業務に定める税務代理をする場合に、その権限を有することを証する書面(税務代理権限証書)を税務官公 署に提出し、また税務調査など税務官公署の職員と面接するときは、税理士証票を提示しなければなりません。
・署名押印の義務(法33)
税理士が税務代理をし、または税務書類の作成をした場合にその責任を明らかにするため、税理士が作成した書類には署名 押印(電子申告の場合には、電子署名)をしなければなりません。
・秘密を守る義務(法38)
納税者との信頼関係を築くため、事前の承諾など正当な理由がない場合には、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏ら し、または窃用してはならないこととして、守秘義務を課しています。
・研修の受講努力義務(法39の2)
税理士の資質を維持するための研修について、会則で年間36時間の受講義務が課せられています。
・使用人等に対する監督義務(法41の2)
税理士が雇用する使用人等の行為によって納税義務者の信頼を損なうことがあってはならず、使用者である税理士の監督責 任が課せられています。
・助言義務(法41の3)
納税者の依頼に応じて税理士業務を行う際に、その内容が租税に関する法律等に適さないことを知った場合には、納税者に 直ちに是正を助言しなければなりません。なお、税理士が助言したにもかかわらず従わなかった場合は、助言義務違反にはなりません。