中長期的な日本の課題を考えるべき時(小宮一慶先生 経営コラムVol.99)
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.149(2026.3)に掲載されたものです。
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生
衆議院議員選挙が終わりました。総選挙を踏まえて、短期、中長期的な今後の日本の状況を考えてみます。
まず、与党が圧勝したことで、政局が安定し、予算や法案が通りやすくなります。内容の是非は別にして、良いことでしょう。株も上がりやすくなります。
しかし、もちろん良いことばかりではありません。消費税減税を自民党はじめ各党は主張しました。公約の実現に向けて議論を進めると考えられますが、大きな問題があります。ひとつは財源です。5兆円程度は必要と考えられていますが、対名目GDP比で先進国中最悪の財政状況では、財源の確保策を間違えれば、それでなくとも上がった長期金利がさらに上がる可能性があります。昨年初には1.2%程度だった新発10年国債利回りが、2.2%を超えています。企業の設備投資や借入返済には重荷になりつつあります。もちろん今後固定金利で住宅ローンを借りる人たちにも大きな影響が出ます。
そして、何よりも問題なのは、消費税は、社会保障をカバーする目的で徴収されている税だということです。現状約30%の高齢者比率がますます上昇する中で、それでなくても、医療、介護、年金などの社会保障費が急増する時に、社会保障のための税を減額するという発想がよく分かりません。
今回の総選挙で、ほとんどの党が、消費税減税を叫びながら、社会保障には触れなかったのは偶然ではありません。
一方、インフレが続く中、実質賃金がマイナスの状況が続きますが、こちらも消費税減税だけでは解決が見えません。賃上げが継続的に続く必要がありますが、なかなか容易なことではないことは明らかです。
中長期的には、日本人だけなら毎年90万人ほどの人口減少が起こり、それにともない地方の衰退が加速しています。さらには、先に述べた社会保障のこととも関係しますが「世代間扶助」の美名のもと、急激に減少している若い人たちに過度の負担をかけている社会保障の自転車操業の問題も全く解決策が見えません。何度も述べますが、そんな中、消費税を下げるというのです。
この国の衰退は明らかで、失われた30年とも言われていますが、その間、国の経済規模を表すドル建てでの名目GDPも2位から、中国、ドイツに抜かれ、今年はインドにも抜かれようとしています。そして、このままでは人口減少、高齢化の中ますます衰退が予想されます。 総選挙は終わりましたが、日本の現状や将来を、人気取りではなく真剣に考えることが大切なことは言うまでもありません。
小宮 一慶
こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現:セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を展開する一方で、年100回以上講演を行っている。経営・会計・経済・ビジネススキル等をテーマにした著書160 冊以上、累計発行部数は410 万部を超える。

