もっと政治に関心を持とう(小宮一慶先生 経営コラムVol.79)

コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.129(2024.7)に掲載されたものです。


株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

日本経済が「失われた30年」と言われていることは皆さんもご存じだと思います。皆さんの会社などが作り出す付加価値の合計である名目国内総生産は、コロナ前には5兆ドル程度だったものが、現状は円安もあり4兆ドルを切る水準です。円ベースで見れば多少は増えていますが、日本は輸入のかなりの部分がエネルギーで、その大半はドル建てで決済されています。ドルでの稼ぎや購買力が大幅に減少しているということです。国力が大きく落ちているのです。

もう少し長い視点で見ると、2010年にドル建てでの名目国内総生産で、日本は中国に抜かれました。この頃は、リーマンショック後にギリシャ危機などがあり、円高もあって日本も中国も6兆ドル弱の名目国内総生産がありました。中国はこのところの元安があるものの、それでも約17兆ドルの名目国内総生産がありますが、日本は、先ほども述べたように、4兆ドルを切る水準です。

しかし、残念ながら、政治は経済にかまっていられないような状況が続いています。

最近では、自民党のパーティー券裏金問題に端を発した政治資金規正法の問題に大きな時間を取られており、経済どころではありません。

政治資金規正法改正のプロセスで見えたのは、自民党は依然として政治資金の流れを国民に知らせたくないということと、野党も、政治資金パーティーを禁止しようと言い出した幹部が、パーティーを開催しようとしてマスコミに叩かれ、取りやめざるを得なくなったというお粗末さです。

このような政治家を選んでいるのは私たちの責任です。もっと政治に関心を持たなければなりません。

この国には大きな課題が山積しています。

経済が成長しないことも大きな問題ですが、急激な人口減少にも対応しなければなりません。女性が一生に産む子供の数の合計特殊出生率はとうとう過去最低の1.20まで低下しました。昨年生まれた子供は約72万人で、団塊の世代の約270万人、その子供たちの団塊ジュニアの209万人と比べるまでもなく、愕然とするほどの減少です。今後さらに日本の人口や生産年齢人口が減ることは確実です。

また、現状29%程度の高齢化率が、将来は40%以上に達すると予想される中で、社会保障負担が格段に増加します。それでなくとも悪い財政事情がさらに悪化することは確実です。

こういう状況の中で、大きな視野や見識を持ち、課題を克服する実行力を有する政治家が必要なことは言うまでもありませんが、そういう人を見極めて選ぶのがわれわれに課された義務です。

小宮 一慶

こみや・かずよし/京都大学法学部卒業。 米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、 日本福祉サービス(現: セントケア)を経て独立。名古屋大学客員教授。 企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」をもとに幅広く経営コンサルティング活動を 展開する一方で、年100回以上講演を行っている。 『稲盛和夫の遺した教訓』(致知出版社)など著書は150冊以上で、経済紙等にも連載を抱える。

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