京都はオーバーツーリズム(小宮一慶先生 経営コラムVol.73)
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生
2023/12/22
本コラムでは『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
皆さんもお気づきのように、日本各地に多くの外国人観光客が訪れています。10月には、単月で過去最高の約250万人の訪日客を記録しました。もちろん、コロナ明けの最近は多くの日本人も旅行をしています。
そして、このところ問題になっているのがオーバーツーリズムです。各地に観光客が押し寄せ過ぎ、大混雑をもたらすとともに、そこに住む方たちの市民生活に大きな影響が出ているのです。とくに、京都は深刻です。
京都へ行く新幹線の中でも、車掌さんが「『そうだ 京都、行こう』のキャンペーンをやっていて恐縮ですが」に続いて、「道路渋滞緩和のために、できるだけ市営地下鉄をご利用ください」というアナウンスをしていました。それほど大勢の観光客でごった返しているのです。
私は京都に顧問先さんがあるので、京都出張には慣れているつもりでしたが、このところの京都行きでは結構驚くことが少なくありません。まず、京都駅が外国人と日本人観光客であふれかえっています。とくに、大きなスーツケースを引っ張った外国人が目立ちます。券売機で切符を買うのにも一苦労です。
一方、京都駅前のタクシー乗り場は長蛇の列で、実験的だと思われますが、金閣寺行きの乗り合いタクシーをタクシー協会の人が観光客に勧めていました。
もちろん、私はこのところ京都市内の移動には、地下鉄を使いますが、その地下鉄も大きなスーツケースを引っ張る観光客で一杯です。
京都駅前には、臨時と思われる結構大きなスーツケース預り所もできていますが、焼け石に水の状態でした。市バスにはあまり乗りませんが、以前、市民の方から「大きなスーツケースを持った観光客のせいで、市バスに乗るのもひと苦労」という話があり、市民生活にも少なからぬ影響が出ています。
寺社は拝観料が多く入っていいのですが、宗教法人で非課税のために財政面では京都市にはメリットがないという話も聞きました。
私たち仕事で訪れる人間にも影響は小さくなく、普段泊まる京都駅前のホテルは、通常なら1泊2万円前後の宿泊費ですが、最近は7万8千円に高騰しており、私はそのホテルをあきらめ、別のホテルに泊まったこともあります。
もちろん、コロナで苦労した観光業界ですから、いまは十分に潤ってほしいとは思いますが、あまりに「オーバー」となり過ぎると、負の面も大きく出てくることにも注意が必要なことは言うまでもありません。京都などのオーバーツーリズムを感じる地域は、外国人からは観光シーズンにはそれほど安くない観光税を取るのも一案かと思います。