ジャニーズ問題から企業が学ぶべきこと(小宮一慶先生 経営コラムVol.71)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

2023/10/25
本コラムでは『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。

ジャニーズ事務所(現、SMILE-UP.)が性加害問題の対応で大きく揺れています。私はその大きな原因は、事務所側の感覚と、スポンサー企業や世間の感覚が大きくずれていることにあると思っています。私たちも一連の騒動から学ぶべきことがあります。

まずその経緯を簡単に振り返ってみます。9月7日には、事務所側が記者会見を開き、そこでは、藤島ジュリー景子氏が社長を辞任するとともに、東山紀之新社長の就任を発表、性加害の事実を認めるとともに、今回の事件の被害者への救済を「法を超えて」行うことなどが表明されました。

私は、会見時には大阪で毎日放送の生放送の番組に出ていましたが、ジャニーズ事務所がこのまま生き延びていくのは難しく、「台風が去るのを待っている」とコメントしました。コンプライアンス(法令順守)やガバナンス(企業統治)が常に厳しく問われる一般企業との大きな感覚のずれを感じたからです。

そして、CMの中止や、今後の契約打ち切りを発表する企業が続出しました。一部のタレントも事務所から離れる動きが出ました。

スポンサー企業側の厳しい対応を見て、ジャニーズ事務所は再度会見を10月2日に開きました。

今回は、現事務所は被害者の補償専門の会社とする、「ジャニーズ」という名前を今後一切使わない、ジュリー氏が関与しない別会社でタレントを抱えるエージェント会社を発足することなどを発表しました。

スポンサー企業側から見れば一歩前進ですが、補償が十分に行われることなどを見届けるまでは、スポンサーに戻ることはしないでしょう。また、東山氏が両社の社長に就任することにも疑問があります。

そして「NGリスト」が発覚、会見そのものへの信頼度が大きく揺らぎました。

今回の事件は芸能界での特殊な事例ですが、私たち企業人も学ぶことが多くあります。

ひとつは、自社と世間の感覚のずれです。ジャニーズ事務所ほどでなくとも、多かれ少なかれ自社の常識が世間の常識と違っていることも少なくありません。とくに社歴が長く、内部志向だとその傾向が強まります。

企業が常に外部志向であることはとても重要なことなのです。

さらに、教訓としては、対応が後手後手に回ると、さらに傷口を広げるということです。もし9月7日の記者会見で、10月2日の内容を発表していたら、スポンサー企業側の対応も少しは違っていたと思います。企業側から見て常識を疑うような対応策が発表されれば、不必要に不信感が高まることとなりかねません。

いずれにしても、自社の常識や感覚を疑い、世間の目で自社を見るという気持ちが大切ですね。

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