台湾の憂鬱(小宮一慶先生 経営コラムVol.68)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

2023/7/26
本コラムでは『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。

先日、長い間しっかりと働いてくれている社員4名と一緒に、台北に2泊で出かけました。
皆さんもご存知のように、ロシアがウクライナに侵略して以来、中国が台湾に侵攻するのではないかという懸念が高まっています。中国の習近平国家主席が、共産党大会などで台湾統一を強く主張していることがその大きな原因です。彼の任期はひとまずは2027年までなのでそこまでにどんな方法になるかは別にして統一への動きを強めるものと考えられています。

当面の一番の焦点は来年1月予定の台湾の総統選挙です。この選挙で反中国派の現与党の民進党が勝つのか、それとも親中国の国民党から総統が選ばれるのかは、今後の中国の出方に大きな影響を与えると考えられます。中国としては、親中派の総統が誕生し、中国と台湾との融和を進めたいと考えているはずです。現状同様反中国派の総統が続くようなら、習近平政権は強硬な手段に出る可能性も否定できません。

中国は、連日、台湾の防空識別圏ぎりぎりに戦闘機などを出撃させ、台湾にゆさぶりをかけているだけでなく、多方面で圧力をかけています。総統選に向けてはSNSなどでの情報戦も繰り広げるでしょう。

台湾としてももちろん防衛を強化する動きを進めており、現状4か月の徴兵制の兵役を1年に延ばすことを発表しています。私たちが訪問した数か月前に蔡英文総統が、中米を訪問しました。中国が圧力をかけ中米の一部の国に、台湾との国交を断絶するように迫っているからです。その際に、蔡総統は、行きはニューヨーク経由、帰りはロサンゼルス経由で移動しましたが、米国経由時には米国の要人たちと会うことで、米国との関係強化を図っています。もちろん、中国はこの蔡総統の動きに猛反発しています。

私は台湾を訪れる際には故宮博物院を必ず見学に行きますが、コロナの影響がまだ完全には払しょくされていないこともあり、中国本土からの見物客はほとんど見かけませんでした。台湾としては、観光だけでなく製造販売などで中国との経済関係は維持したいと考えていますが、もちろん、中国の言いなりになることも望んでいません。

台湾有事となれば、日本も大きな影響はまぬかれないでしょう。米軍が中国軍と対峙すれば、沖縄などの基地が利用される可能性は高く、軍事的衝突はなくても経済制裁などでも日本は大きな影響を受けざるをえません。

今回の旅行の際にガイドさんが「平和なのが一番ですよ」と言っていたのが強く印象に残りました。

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