中堅・中小企業のためのDX化を進めるために(小宮一慶先生 経営コラムVol.66)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生

2023/5/26
本コラムでは『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。

中堅・中小企業でもDX化の取り組みをしているところは多いと思いますが、そのポイントを説明しましょう。まずその目的をしっかりとさせておくことが大切です。DX化の大きな目的は3つあります。

ひとつは、生産性の向上です。具体的には、働く人一人あたりの「付加価値額」を高めることです。それにより、利益が上がるとともに働く人の給与を高めることができます。

DXの2つ目の目的は、生産性の向上で浮いた人員が、より「創造性の高い」仕事に就けることです。ヒューマンタッチが重要となる営業や接客、製品開発など、人がやったほうがお客さまからより好ましい仕事に振り向けることです。

人は本来的に想像的な仕事が好きで、そのほうが結果的に会社全体の生産性も高まります。

3つ目の目的は、学習する組織となることです。DXなど新しいことに取り組むためには新しい学びが必要です。学ぶことが、組織を活性化させるという大きなメリットがあります。

次にDX化のプロセスです。
最初は業務の徹底的な棚卸しです。DX化に限らず、業務の生産性を高めるためには、まず、現在やっている業務の徹底的な棚卸しが必要です。そして、ムダな作業を削減するのです。

次は、他社事例を参考にしてIT化することで生産性の上がる業務の特定を行います。
食品の加工販売を行っているある会社では、従来は在庫や工場稼働の状況が他の部署にはリアルタイムでは分からない状況にありました。多くの種類の製品を作っており、その性格上、納入期日が短く、営業担当者が受注する際には、工場のラインを確保することや在庫が十分にあることの事前確認が必要でした。

それをシステム導入により、営業担当者がタブレット端末で工場の稼働状況や在庫残高をリアルタイムで確認できるようにしました。他社の事例を参考に全社を挙げての「見える化」に取り組んだのです。

そのおかげで、納入期日がすぐに分かる上に納期遅れもなくなり、顧客満足度が上がり、受注増加につながりました。在庫の適正化や工場運営のムダも減りました。

以前は「タブレットなんて不要」と言っていた人たちも、今では「タブレットなしでは業務ができない」と言うまでになりました。

そして、最後は検証です。一度IT化を行ってもそれで終わりではありません。通常の戦略実施などと同じようにPDCAを行い、より精度の高いシステムにしていくのです。

DXに限らず、どんなことを行うにも、ビジネスでは「お客さま第一」が大原則です。お客さまに迷惑や負担をかけるようなシステム変更を行っては、元も子もなくなってしまうこともありえます。

さらには、ピーター・ドラッカーが言うまでもなく、働く人が活かされているかもとても大切です。

いずれにしてもDXは手段にすぎませんが、会社を活性化する大きな手段であることも間違いありません。

登録後送られる認証用メールをクリックすると、登録完了となります。

「税理士.ch」
メルマガ会員募集!!

会計人のための情報メディア「税理士.ch」。
事務所拡大・売上増の秘訣や、
事務所経営に役立つ選りすぐりの最新情報をお届けします。