2023年の日本経済はデフレに逆戻りか(小宮一慶先生 経営コラムVol.61)
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶 先生
2022/12/22
本コラムでは『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
2022年は、ロシアのウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策など、世界を驚かせるような事件が相次ぎましたが、インフレの進行も大きな問題でした。
私は2023年にはインフレはかなり収まる、とくに日本ではデフレに逆戻りする懸念もあると考えています。
米国の場合、消費者物価の上昇率は8%程度となっていますが、企業の仕入れを表す卸売物価も8%程度の上昇です。企業は仕入れの上昇分のほとんどすべてを最終消費財に転嫁できています。
米国では堅調な雇用による需要増加と資源価格上昇の2つの要因によるインフレが起こっているのです。
一方、日本のインフレ率は10月で3.6%ですが、企業の仕入れを表す企業物価は、9%以上の上昇が続いています。米国と違い、日本国内では、仕入れ価格の上昇を十分に最終消費財に転嫁できていない状況が続いているのです。それは、企業が損をしていることを表しています。
過去最高の利益を出している企業もありますが、海外で稼いでいる企業がほとんどです。国内だけで事業を行っている企業、とくに中小企業では、仕入れ価格の上昇に苦しんでいます。
こういう状況ですから、グローバル企業の一部をのぞき、十分な賃上げはなかなか難しい状況です。事実、インフレより低い賃金上昇しか現状はできておらず、
7か月連続で実質賃金はマイナス、11月はなんと前年比2.6%のマイナスとなっています。こういう状況では、GDPの55%程度を支える家計の支出が伸びるということは難しいです。
原油価格上昇など、資源価格上昇によるインフレ要因は、現状の原油価格が続けば、2023年初から徐々に消えていくことになります。ただし、日本の場合には、円安要因のインフレがあります。ドル・円レートを振り返ると、現状の135円程度になったのは、2022年の6月以降です。逆に言えば、ドル・円レートが大きく変わらなければ、2023年の6月頃から円安による物価上昇要因は消えていきます。そして、その頃から私は、日本経済はデフレに逆戻りするのではないかと心配しています。
政府や連合は、賃上げを強く要求しており、それがディマンドプル型のインフレを生めばいいのですが、十分な力があるかどうかは疑わしいところです。
インバウンドによる消費押上げの可能性もありますが、このままではデフレということにもなりかねません。
2023年は、経済は少し落ち着きを取り戻すと思いますが、そのことが日本の経済力の弱さを露呈しないことを願うばかりです。