お客さま第一の2つの意義(小宮一慶先生 経営コラム Vol.32)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO 
小宮 一慶

2022/8/15

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.106(2022.8)に掲載されたものです。

お客さま第一の2つの意義


多くの会社で「お客さま第一」ということが言われますが、「その2つの意義は?」と問われると答えるのがなかなか難しいものです。

最初の意義は、「お客さまに良い商品やサービスを適正な価格で提供すること」です。できれば、自社しかできないような商品や価格設定をする、あるいは、それらが他社と同様でも、山の中に一軒しかないお店のように、そこでしかできない価値の提供を行うこともそれに含まれます。

これは、ピーター・ドラッカーが、企業の存在意義の一番目として「特有の使命を果たす」と言っているのと同じです。これに関連して、「お客さま第一」というと、「お客さまのために行動する」という答えが返ってくることがあります。これは間違いではないのですが、十分ではありません。例えば、「お客さまのため」を思って仕事をしても、力量が足りなければお客さまは満足しません。「お客さま第一」はお客さまから見て十分であることが大切なのです。

いずれにしても「お客さま第一」の一番目の意義は、お客さまに貢献する、できればその会社、その営業所にしかできない独自の貢献をし、お客さまから評価されることです。

「お客さま第一」の二番目の意義ですが、研修などをしていてもなかなかこの答えは出てきません。それは、働く人に「働きがい」を与えるということです。お客さまに喜んでいただくことで、働く人が働きがいを感じることが大切なのです。

ドラッカーは、企業の存在意義の二番目として「働く人を活かす」と言っていますが、仕事そのものから働きがいを感じてもらうことが大切なのです。

私は、会社が働く人に与えられる幸せは2つあり、一番目が「働く幸せ」つまり「働きがい」、二番目が「経済的幸せ」というふうによくお話をします。

報酬を過不足なく与えられることも大切ですが、まず、働きがいを感じることが大切で、「お客さま第一」を実践することが働きがいを生む原動力となるのです。

もし「お客さま第一」を標榜しながら、働く人が疲弊しているのなら、それは「お客さま第一」とは名ばかりで、実際は「金儲け第一」や「内部第一」を行っているのではないでしょうか。

私は「良い仕事」として「①お客さまが喜ぶこと、②働く仲間が喜ぶこと、③工夫」を挙げますが、それらを通じて「働きがい」を感じて欲しいからです。

多くの企業が、真の「お客さま第一」を実践し、お客さまが喜び、働く人も働きがいを感じられるようになってほしいものです。そして、それが高収益企業を生むのです。

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