ロシアのウクライナ侵攻とリーダーの権限(小宮一慶先生 経営コラム Vol.28)
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶
2022/4/18
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.102(2022.4)に掲載されたものです。
ロシアのウクライナ侵攻とリーダーの権限
先日首都高速道路3号線で運転していたら、メルセデスベンツのAMG63に乗った運転手が、少し混んだ道を高速で縫うように走り、私から見たら結構危ない運転をしていました。AMG63はメルセデスベンツの中でも最高級のエンジンを積んだ車で、とても値段も高く、高性能の車です。私はもちろんあんな運転はしませんが、したくても私の車ではあのように運転することはできません。
ロシアのプーチン大統領の命令によるロシア軍のウクライナ侵攻は、もちろん許されることではありませんが、私はプーチンの行動を見ていると、先ほどのメルセデスの運転手と同じ心境だろうと想像しています。もちろん、やっていることのレベルは格段に違いますが、高い性能の車を持つ者は、その性能を使いたくなり、権力を持つ者は、その権力を使いたくなるのだと思います。お金を持っている人が、そのお金を使うのと同じです。
その使い方が正しいかどうかは別にして、持っている人はそれを使いたくなるのではないでしょうか。お金もなければ使えないのと同じように、プーチンも権力がなければ使いようがありません。
一方、プーチンの動きは私たちの生き方への反面教師ともなります。権力を持つものは、その権力を濫用することがあるということです。
プーチンほどのレベルではもちろんありませんが、リーダーはその地位により、ある程度の権限や権力を持つものです。リーダーの判断により暴走する会社もあり、また、多くの会社では残念ながらセクハラやパワハラの事例がいまだに多く見られるのは、権限や権力を持った人がそれを使うからです。
それを防ぐためには2つのことが必要です。
ひとつは、仕組みとしてそれができなくなることです。効率は少し落ちるものの、ガバナンスを強化し、一人の人が暴走しない仕組みを作ることです。さらには、セクハラやパワハラというレベルの話では、それを通報するような仕組みも必要です。
もうひとつは、これも以前にお話ししたことですが、リーダーの人間力や倫理観を高めるために、「何千年もの間、多くの人が正しいと言ってきたこと」をリーダーは学び続けるということです。「多くの人が正しい」ということを知らなければ、権限を持てば暴走する危険があります。
ウクライナは日本から離れてはいますが、今回の紛争から学ぶことも多くあります。いずれにしても、ウクライナに平和が早く訪れることを願うばかりです。