世界で消費者物価が急激に上昇!(小宮一慶先生 経営コラム Vol.27)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO 
小宮 一慶

2022/3/14

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol101.(2022.3)に掲載されたものです。

4月以降のインフレに注意


世界で消費者物価が急激に上昇しています。米国では前年比で7%、欧州では5%程度、日本をのぞくアジア各国でも1.5から4%程度の物価上昇を記録しています。一方、日本はいまだに0.5%程度ですが、これには理由があります。ワクチンの接種の遅れなど、コロナ対策が後手後手に回り、経済の力が弱いこともありますが、最大の原因は、菅内閣時に実施された携帯料金の値下げが大きく影響していることです。もし、携帯料金の値下げがなかったら、現状でも2%程度の物価上昇が起こっているという試算もあります。

そして、この携帯料金値下げの影響は、4月以降にはなくなります。値下げから1年以上経ち、前年比の物価上昇率に影響を及ぼさなくなるのです。

今回のインフレは、多くのマスコミが報じているように、「悪いインフレ」です。輸入物価が前年比で40%以上上がり、その影響で企業の仕入れである企業物価が9%程度上昇しているため、そのコストアップを消費者物価にも反映せざるを得なくなった「コストプッシュ型」のインフレだからです。値上がり分の大半は、海外に資金流出します。しかも、企業は仕入れの値上がり分をすべて最終消費財に転嫁できているわけではないので、企業収益をも圧迫しているのが現状です。

給与の状況を、厚労省が発表している「現金給与総額」の統計で見ると、全産業では、コロナが蔓延した2020年には下がりましたが、2021年ではその下がり分を十分にはカバーしきれていないのが現状です。飲食店のパート従業員さんなどの不足の話をよく聞きますが、有効求人倍率も現金給与総額も全体で見た場合には、頭打ちか弱い状態が続いています。

岸田政権は定昇込みで3%の賃上げを産業界に望んでいますが、その水準達成はなかなか難しいのではないでしょうか。そうした中、インフレがやってくる可能性が高いのです。下手をすれば、景気停滞下のインフレである「スタグフレーション」の可能性もあります。

こうした中、日銀にはもう打てる手はほとんどありませんし、そのわずかな手を打ったところで景気に大きな影響を及ぼすこともまずないでしょう。私が心配しているのは、インフレに伴って長期金利が上昇することです。今は、なんとか長期金利をコントロールしていますが、上昇を余儀なくされた場合には、日銀が保有する500兆円以上の国債に含み損が出ることが懸念されます。

いずれにしても、給与が上がらない中で4月以降のインフレで景気がさらに悪化することが懸念されます。

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