短期的、長期的な目標を立てる(小宮一慶先生 経営コラム Vol.26)
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶
2022/2/14
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol100.(2022.2)に掲載されたものです。
短期的、長期的な目標を立てる
経営という仕事は、1. 企業の方向づけ、2. 資源の最適配分、3. 人を動かす、の3つの要素からなると私は考えています。もちろん、ヒト・モノ・カネを、長所を活かしながら最適に配分する、公私混同に配慮するなどの「資源の最適配分」や、ミッションやビジョンに従い働く人に存分に力を発揮してもらう「人を動かす」という要素も非常に重要ですが、「方向づけ」、つまり何をやるか、やめるかということを決めることが経営者には最も大切だと、経営コンサルタントとして長く多くの会社を見てきた身としては痛感しています。企業の命運の7、8割は方向づけで決まるとも思っています。
とくに経営者は、短期的な方向づけだけでなく、長期的な方向づけもしっかりと行わなければなりません。場合によっては、短期的な方向づけは、ある程度部下でもできるかもしれませんが、長期的な方向づけは、経営者が最終決定する重要な仕事です。
短期的には、多くの企業にとっては、今はとても大変な時期です。コロナ禍が長く続き、今年もその影響を、特に前半はまぬかれないでしょう。それをしっかり乗り切ることももちろん重要です。
こういう時には「できることはすべてやれ、やるなら最善を尽くせ」というケンタッキーフライドチキンの創業者、カーネル・サンダースの言葉はとても参考になります。
よくある計画は「売上高や利益を○○%伸ばす」というようなものですが、私はそのような計画を「総務部長が立てるような計画」と揶揄します。ピーター・ドラッカーが言うまでもなく、目標の第一は「マーケティングの目標」つまり、お客さまが何を欲しているかを見極め、それをどう提供するかの目標です。「お客さま第一」を標榜しているならなおさらです。数字第一ではないはずです。数字は、結果であって、お客さまや社会への貢献を十分に考えることが先決です。その結果が数字です。
そして、長期的な目標も必要です。企業の目的に基づいて、将来どういう姿になりたいかという将来構想(ビジョン)です。例えば「飲食業界で日本一の顧客数を獲得する」、「地域で最もシェアのある病院となる」などです。そして、短期計画はそれに基づいて策定されなければなりません。短期計画の積み重ねの結果が長期のあるべき自社とならないのは明らかです。これには、経営者の志も大きく影響します。
いずれにしても「散歩のついでに富士山に登った人はいない」のです。