中国不動産バブルの崩壊に注意(小宮一慶先生 経営コラム Vol.23)
株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
小宮 一慶
2021/11/15
本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol97.(2021.11)に掲載されたものです。
中国不動産バブルの崩壊に注意
中国の不動産大手恒大集団の債務問題が世界の注目を集めています。恒大がデフォルト(債務不履行)になれば中国の不動産バブルが崩壊するリスクが高まります。どれくらいのインパクトがあるかを考えなければなりませんが、その際に参考になるのは、過去のバブル崩壊の事例です。
まず、日本で起こった金融危機を振り返ってみましょう。
1980年代後半に日本では不動産バブルが起こりました。バブルの過程で株価も上昇し、89年末には、日経平均株価が38,915円をつけました。ゴルフ会員権も高騰し、小金井カントリークラブの会員権が4億円したのもこの頃です。
しかし、バブルはしょせんバブルですからあえなく崩壊。90年には日経平均は2万円台に下落。不動産バブルも崩壊し、銀行は不良債権の山を抱えました。そして、97年11月の金融危機では、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券などが破綻、98年には日本長期信用銀行や中小銀行も相次いで破綻、その後2003年5月にりそな銀行に2兆円の公的資金が注入され、何とか金融システムの安定を保つまで、金融界や日本経済は大揺れとなりました。日経平均も一時7千円台まで下落。そして、その後も長い間バブル後遺症に悩まされました。
世界レベルでもバブルの崩壊があったのは、覚えておられる方も多いでしょう。米国で低所得層向けの不動産ローンである「サブプライムローン」の行き詰まりにより、2008年9月15日にはリーマンブラザーズが破綻しました。いわゆる「リーマンショック」です。「100年に一度」と言われた金融危機が発生したのです。米国のみならず、日欧はじめ世界の実態経済に大きな打撃を与えたことは記憶に新しいでしょう。
そして、今回の恒大の危機です。恒大が破綻してもその負債総額は中国の名目GDPの2%程度ですから、それだけなら何とかなると考えます。しかし、中国全体が不動産バブルの中で、バブルが崩壊すると話は別です。恒大同様、財務内容が悪化した不動産会社が中国には多くあります。中国主要都市で投機対象となったマンション価格が暴落することとなると、これは大打撃を中国経済に与えることとなりかねません。一部の都市では、マンション価格が平均年収の50倍を超えているという異常な状況ですから、その反動は計り知れないのです。その場合、日本の不動産市況や日本経済にも影響が及びかねません。
恒大を直接救済すれば、「共同富裕」の理念に反するものの、もしバブル崩壊ということにつながれば、これは中国経済に大きな打撃を与え、習政権の基盤を大きく揺るがしかねません。いずれにしても、しばらくは恒大と中国政府の動きからは目が離せません。