ワクチン接種で秋から景気回復へ(小宮一慶先生 経営コラム Vol.19)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO 
小宮 一慶

2021/7/18

本コラムでは、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』等の著書を持ち、日経セミナーにも登壇する小宮一慶先生が、経営コンサルタントとしての心得やノウハウを惜しみなくお伝えします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.93(2021.7)に掲載されたものです。

ワクチン接種で秋から景気回復へ


今回は経済のお話をしましょう。少し期待のもてるお話です。

1-3月の日本のGDPが発表されました。物価の変動を除いた実質で年率3.9%のマイナスというかなり厳しい数字が出ました。給与の源泉で、生活実感に近い、実額でのGDPである名目値も年額で540兆円程度と、前の四半期に比べて9兆円ほどの減少となりました。

一方、米国の同時期の実質GDPはプラス6.4%、中国にいたってはプラス18.3%と日本と比べて大きな差となりました。1-3月期はロックダウンもあった欧州では、ユーロ圏全体でマイナス2.5%、英国はマイナス5.9%と厳しい状況でした。コロナウイルスの状況やその対応で、経済成長に大きな差が出ているのが1-3月期でした。

一方、欧州では、ワクチン接種が進み、このところ、ロンドンではパブが再開されたなどのニュースが流れています。4-6月期では欧州は7%程度の経済成長を見込むエコノミストもいます。結局ワクチンの接種状況次第で経済の状況が変わるという傾向が鮮明になっています。

このことは物価上昇にも表れており、ユーロ圏や英国では、4月は消費者物価上昇率が、それぞれ、1.6%、1.5%です。米国はなんと4.2%の上昇です。中国や台湾などのアジア諸国も物価上昇率はプラスです。一方、4月の日本の消費者物価上昇率はマイナス0.1%で、主要国の中で、景気回復の遅れや弱さが物価にも表れています。これもワクチン接種の遅れが大きな原因と考えられます。残念ながら日本は現在の4-6月期も緊急事態宣言が出て、さほどの経済回復は見込めないでしょう。

一方、日本では、最近になりワクチン接種が少しスピードを上げつつあります。

接種回数が1千万回を超えましたが、あと100日もすれば、接種回数は累計で6千万回程度にはなると考えられます。高い免疫を得るには2回の接種が必要ですが、とりあえず1回でもワクチンを打った人の回数が増えれば、感染者数は減少し、緊急事態宣などの発出はなくなり、経済活動への制約は大きく減ると考えられます。

もちろん私は感染症の専門家ではありませんが、今の接種ペースが落ちなければ、10月か11月ころには感染はかなりの落ち着きを見せるのではないでしょうか。懸念材料は変異株です。ベトナムでも新たな変異株が発見されたというニュースがありました。東京五輪という読めない変数もあります。

いずれにしても、諸外国の経済統計を見ている限り、秋以降の日本の経済回復に期待を持ってもいいと考えます。厳しい業界の方は、それまでは資金繰りを十分確保してもうしばらく辛抱してください。

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