4月1日より解禁された訪問介護への技能実習生の受入―<小濱道博先生の介護特化塾 vol.05>

本コラムでは、介護経営コンサルタントとして、日本トップクラスの小濱道博先生が、介護業界の「知って得する」トピックスを取り上げて解説します。会計事務所の皆様に、介護マーケットの魅力・重要性のほか、介護特化を進めるためのヒントや戦略などを毎回お届けします。
※本記事は、会報誌『BIZUP Accounting Office Management Report』vol.140(2025.6)に掲載予定となっております。


小濱介護経営事務所 代表
C-SR(一社)介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
小濱 道博 先生

 現在の日本の訪問介護の現場は、急速な少子高齢化と構造的な人口動態の変化に直面しており、深刻な人手不足が慢性化している状況である。この人手不足は、特に訪問介護サービスにおいて顕著であり、サービス提供体制の維持が困難になりつつある地域も少なくない。これまで、訪問系サービスは、利用者と介護者が1対1で業務を行う特性上、適切な指導体制の確保、権利擁護、在留管理の観点から、外国人介護人材の従事は原則認められていなかった。しかし、介護分野における人手不足が深刻化する中で、一定の要件を満たすことで、急遽、直轄で外国人介護人材の訪問系サービスへの従事が認められるようになった。


 2024年4月1日より、技能実習及び特定技能の在留資格を持つ外国人が、一定の要件の下で訪問系サービスに従事することが認められている。受け入れ対象となる訪問系サービスは、介護保険法に規定する訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、介護予防・日常生活支援総合事業(第一号訪問事業に限る)である。外国人介護人材の受け入れにあたっては、研修体制の整備、OJT計画の作成、キャリアアップ計画の策定、ハラスメント対策、ICT環境の整備など、多岐にわたる体制整備が求められる。これらの体制整備は、大規模な訪問介護事業所にとっては比較的容易である一方、小規模な事業所にとっては大きな負担となり、十分な人員や資金、ノウハウがない場合、要件を満たすことが難しいという課題がある。


 現行制度の構造的な問題点を見ていくと、第一に、前述の通り大規模事業所優位の構造であり、研修体制の整備やICT環境の整備など、受け入れに必要な体制整備は、資金力や人材が豊富な大規模事業所にとっては比較的容易である一方、小規模事業所にとっては大きな負担となる。また、訪問介護サービスの特性への配慮が不足しており、訪問介護サービスは、利用者の居宅で1対1でサービスを提供するという特性を持つため、緊急時対応や多職種連携、ハラスメント対策など、特有の課題が存在する。そして、実務経験要件の厳格すぎる点も課題である。介護事業所等での1年以上の実務経験を技能実習生の受入れ要件とする点は、小規模事業所にとって大きなハードルとなっている。


 小規模な訪問介護事業所が外国人介護人材を受け入れやすくするためには、小規模事業所の実情に合わせた支援策の導入が不可欠である。共同受入体制の構築も重要である。複数の小規模事業所が連携し、指導者や研修のノウハウを共有することで、コストや負担を分担することが考えられる。また、緊急時対応や多職種連携についても、共同で体制を構築することで、より質の高いサービス提供が可能となる。ICT導入支援の拡充も重要である。小規模事業所向けの安価なICTツールを開発したり、導入に関する相談支援を行うことで、業務効率化や情報共有の促進につながる。さらに、実務経験要件の見直しも検討されるべきである。訪問介護の特性を踏まえ、柔軟な経験要件を設定することで、より多くの外国人材が活躍できる可能性が広がる。これらの対策を組み合わせることで、小規模事業所においても外国人介護人材の受入れが進み、地域における訪問介護サービスの安定的な提供に繋がるものと期待される。

小濱 道博

こはま・みちひろ/介護経営コンサルタントとして、全国各地で介護事業全般の経営支援、コンプライアンス支援に 特化した活動を行う。2009年にC-MAS 介護事業経営研究会の立ち上げに関与。 税理士、社労士など200を超す専門士業事務所との全国ネットワーク網を構築し、 国内全域の介護事業経営者へのリアルタイムな情報提供と介護事業経営の支援活動を行う。 介護経営セミナーの講演実績は、全国で年間300件以上。 書籍の大部分はAmazonの介護書籍で第一位を獲得。

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